流行と私/巴奎依の社会不適号⑭

アニメ

公開日:2021/1/8

巴奎依
撮影=山口宏之

物心がついて自我が確立されてから、なんとなく、自分は流行りものに対して苦手意識があることに気が付きました。

食べ物も、作品も、流行語も、すべてにおいて、なんとなく。

どこからどこまでが流行っていると判断されるのか、定義は曖昧ですが、いわゆる”国民的”があまり好きじゃなかったのかな、と思います。

決して、「個性派でいたい」とか、そういう理由があるわけではなかったのですが、
趣味嗜好が国民的なものになってしまうと、なんかこう、屈してしまうような感じがして、それがちょっとだけ不服だったんです。

その”何となく不服”が明確に確立した瞬間があって、その時の感覚は今でも良く覚えています。

アニメオタクだったこともあり、あるアニメにめちゃくちゃ熱が入った時期がありました。

そのアニメの展開もキャラクターもたまらなく好きで、夢中になって観ていたのですが、
やはり面白いものというのは、あれよあれよと話題になっていくわけで。

ストーリーが進めば進むほど、続編が制作されればされるほど、私が好きだと感じた”制作陣が作りたいものを作っているんだ感”から”視聴者のために視聴者の好きなものを作るぞ感”に変わっていったように思えてしまいました。

一度そう思ってしまうと、もうすべての展開が私たち視聴者にとって気持ちの良い展開になっているように感じてしまって、それが私には気持ち悪かったんです。

意外と良く見受けられるこの現象を、私はいつも「作品が視聴者に殺されてしまった」と言っています。

決してそんな意図で作られているわけではないと分かってはいるのですが、私は、作品が視聴者に殺されてしまうことがすごく嫌いです。
だから、手垢のついていない作品ばかりを求めてしまいます。

アニメを観ることがちょっとだけ仕事となっていた時期は、その思考へと尖りまくっていましたが、
最近は作品に触れることが趣味へと変わったので、まだまだその考え方ではあるけれど、そこからちょっとだけ、丸くなったような気がしています。

最近、いよいよついに、『鬼滅の刃』を初めて観ました。

ただ乗り遅れているだけのように思えるかもしれないですが、私のことを良く知る人には本当に驚かれるような、衝撃的なことだったりします。

今さらながら『鬼滅の刃』を観て感じたのは、
「やっぱり、流行るもの・国民的になるものって、それだけの理由がちゃんとあるから、ちゃんと面白い」という事実です(笑)。

今までの私は、流行っているから観ない・国民的だから触れないという生き方をしていましたが、
これからは少しだけ丸く、流行にもちょっとだけ触れてみよう、と思いました。

ともえ・けい
2012年よりA応P(アニメ“勝手に”応援プロジェクト)のメンバーとして活動をスタート。2020年8月2日に、A応Pを卒業。現在、インターFMにて毎週土曜28:30〜「DJサブカルクソ女の音楽解体新書」にてDJ番組を担当、2021年1月13日(水)にDJCD「A応P BEST DJCD PRODUCED by DJサブカルクソ女」をリリースするなど、「DJサブカルクソ女」としても活動中。社会不適合者(自称)。

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