“王子”と呼ばれた少女がヒロインに! “もう1人の王子”な男子との不器用ラブストーリー!

マンガ

公開日:2021/1/8

『うるわしの宵の月』(やまもり三香/講談社)
『うるわしの宵の月』(やまもり三香/講談社)

 新年明けましておめでとうございます。「マンガPOP横丁」は、無事年を越して連載を続けることができました。2021年も楽しい作品をご紹介していきますので、どうぞよろしくお願い致します!

 それではコーナー本編へ…。

 初対面の際に最も重要とされている「第一印象」。その数値は諸説あるが、少なくとも相手への好感の5割以上は“見た目”で決まるのだそうだ。私が子どものころ、周りの人からその容姿だけでキャラ付けが勝手にされることは普通にあった。ちなみに私が過去にされた中で一番印象的だったキャラ付けは、かつて視聴率30%を連発していた人気テレビドラマに出演していた役者にそっくりというところから持ってきた「幸楽の息子」である。最初のころは全く乗り気にはならなかったが、初対面の人へ「よく“幸楽の息子”って言われます」というと、悔しいことに非常にウケが良い! 一瞬にして覚えてくれるので、良い名刺がわりになっていた。現在は、だいぶ容姿が変わってしまったので呼ばれなくなったし、自らいうことも無くなったが、もしこれが無かったら、あまり印象の残らない地味な子ども時代を過ごしていたのかもしれない。

 さて、これからご紹介する作品は、決して私のエピソードと比べてはいけない。幸楽の息子のレベルではない。なぜならその呼ばれた対象は、容姿端麗な男女であるからだ。ということで2021年1発目は、周りが決めた印象に縛られ翻弄された男女による青春と恋の物語、やまもり三香先生の『うるわしの宵の月』(講談社)をご紹介!

 この学園には、女子から絶大なる人気を誇り、“王子”と呼ばれた生徒が2人いた。1人は、まるで少女漫画に出てくるヒーローのようなポジションでイケメン! でも実はれっきとした女子高生。彼女の名は滝口宵。周りの女子からその容姿やふるまいから憧れの的となっていることに複雑な思いを抱く毎日を送っていた。そんなある時、突然チャラっぽい男子が目の前に飛び出してきた。そして2人が顔を合わせた瞬間、その男子は宵に接近し、宵の心をザワつかせるひとことを囁く。しかし彼との初対面はここまで。のちに宵は知ることになる。彼が“もう1人の王子”と呼ばれた1つ上の先輩、市村琥珀(こはく)だということを。そして彼との出会い以降、今まで王子様扱いされてきた宵が、もう1人の王子・市村先輩によって、まさかのヒロイン扱いされる日々が続くとは! 宵の乙女心が目覚め、翻弄されてしまう青春の幕が、ドキドキ高鳴りつつ上がるのであった。

 この作品の見どころは、まずはなんといってもイケメンな宵が見せてこなかった“素の女子”の部分が少しずつ引き出され見えてくるところだ。ただでさえ男子から女子扱いされることが縁遠かったこともあり、そのトキメキのハードルは非常に低い。ちょっとしたことで顔を赤らめたりドキドキしたりと、その姿は非常に可愛らしくてキュンだ。一方、そんな彼女の素の部分を引き出してくれるのが、“もう1人の王子”こと市村先輩である。

 彼は一度興味を持つと一直線なタイプのようで、初対面を果たしてから会うたび積極的に宵へ言い寄ってくるように。チャラそうな部分もあるがそれは見た目だけで、実際は気持ちに素直な青年で、宵に「美しい」「かわいい」と自身が感じた彼女の魅力をストレートに言っちゃうのだ。即反応しちゃう宵も含め実にイイ! 非常にベタでも“キュンとくる言葉”が欲しい方は、きっとこの本が心を満たしてくれるし、はりまも欲していたので悶えまくったぜ。

 クラスメイトが知らない真実の姿も描かれたこの青春物語。1巻のラストで意外な展開が市村先輩に訪れる。最初こそ「ヤバい」と男子と距離を置きたがっていた宵に、諦めずにグイグイ迫る市村先輩の行動、そして彼女の心の行方と成長を、目をハートにしつつ見守りませんか。さぁ、書店または電子でキュンな青春をお求めください。


文・手書きPOP=はりまりょう