ブームの裏には涙と叫びが…動物を家族に迎える前に読みたい「ペット本」
公開日:2021/1/20
コロナ禍により、家で過ごす時間が増えている近ごろは、動物を迎える人が多くなってきている。だが、その裏では身勝手な飼い主に遺棄されたり、ペットビジネスで命を消費されたりといった経緯で、悲しい思いをしている動物も…。
そこで本記事では、ペット業界の裏側が知れ、終生飼育の大切さを噛みしめられる書籍を5冊紹介。小さな命の悲鳴を真剣に聞いてほしい。
フォトジャーナリストが見た「老犬たちの涙」
「人と動物の共生」をテーマに取材活動を続けるフォトジャーナリスト児玉小枝さんが手掛けた『老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法』(KADOKAWA)には、あまりにも悲しい老犬の末路が。
本書には「最期を看取るのが辛いから」「引っ越すから」など、身勝手な理由で動物愛護センターに持ち込まれ、殺処分となった犬たちの涙と叫びが込められている。また、高齢者と老犬による「老々介護の破綻」にも触れているので、本当に終生飼育ができるのかと考えるきっかけにもなるだろう。
なお、本書は児玉さんが動物愛護センターで撮影した老犬たちの写真も掲載している。不安そうで悲しげな犬たちの声なき悲鳴を、ぜひ受け止めてほしい。
人を信じ、人から愛された「河原猫」
野草や野鳥が多く見られる多摩川は、自然豊かな河川。この場所には多くのホームレスと、行き場を失った猫たちが暮らしている。飼い主による遺棄や堤防やマンションの建築などで居場所をなくし、野良となった猫たちは「河原猫」と呼ばれているよう。
『おじさんと河原猫』(太田康介/扶桑社)は、そんな猫たちと人間の交流が知れる一冊。著者の太田康介さんは河原猫を守ろうとした2人のおじさんを取材。自身は河原猫だったシロちゃんを家に迎え、その命を看取った。
猫の幸せを願った3人のおじさんと、様々な事情を抱えながらも再び人間を信じた河原猫――。心に染みる彼らの交流に触れると、動物の命の重さに思いを馳せてしまうことだろう。
動物を「奴隷」にしないためには何ができる?
ペットブームの裏にはいつも、動物の涙がある。長く続いている猫ブームも同様。特定の動物や品種が注目されるたび、人間の都合で命が増産される。
『「奴隷」になった犬、そして猫』(太田匡彦/朝日新聞出版)は、そんなペットビジネスの内情をつまびらかにしたルポルタージュ。本書内には、2019年に成立した改正動物愛護法の「8週齢規制」から日本犬6種が除かれた経緯もしたためられている。
今、この瞬間にも理不尽な扱いを受けている命があるかもしれない――。そう考えることは、人間の奴隷になっている動物を解放する第一歩。命を物のように扱う人がいる現状を変えられるかどうかは、私たちの手にかかっている。
「かわいい」の裏にあるペットビジネスの闇
『それでも命を買いますか? ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ』(ワニブックス)は、公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの理事長である杉本彩さんが手掛けた告白本。かわいさを売りにしたペットショップの「抱っこ商法」や売れ残った動物の末路など、本書には私たちが知らない闇が綴られている。
近年は生体販売をやめたり、保護活動に取り組んだりするペットショップも増えてきており、業界の形も少しずつ変わってきているように思う。けれど、狭いショーケースの中で大切な幼少期を送り、心細い思いをしている子はまだまだ多い。
そうした現状を変えていくためにも、勇気を出して「かわいい」の裏にある悲しみに目を向けてみてほしい。
人と動物の両方を救う「犬猫みなしご救援隊」
こんなにも温かい保護団体があるなんて――。『犬と猫の向こう側』(山田あかね/扶桑社)はそんな感動が芽生え、真の動物愛護とはどんなものなのかと考えたくなる一冊。著者が取材したのは広島市に本部を持つ「犬猫みなしご救援隊」。代表の中谷百里さんは人と動物、両方の命と心を救う。
本書で取り上げているのは、近年ニュースになることが多い「多頭飼育崩壊」。中谷さんは多頭飼育崩壊には飼育者の心の問題も関係していると考え、厳しくも優しい態度で彼らと向き合う。
中谷さんが行っている、人間が抱えている問題を解決して動物を救うという「自己責任論」で片づけない愛護は、これから先、より求められていきそうだ。
多くのメディアでは動物のかわいさにスポットを当てることが多いため、ペットを飼うことのデメリットやペット市場にまつわる悲惨な現状を知ることが難しいように思う。だからこそ、ペットブームの裏には涙を流している動物たちがいることを知り、「最期まで共に生きる」という覚悟を固めてから、家族に迎えてほしい。本稿を通し、「動物と共に生きる」という言葉の重みが伝わることを心から願う。
文=古川諭香