コロナ時代の妊活プラン
公開日:2021/1/13
女性特有のからだの不調やトラブルで悩んでいませんか。「お医者さんに行くほどではない…」「デリケートなことなので人には聞きにくい…」そんな体の悩みを、All Aboutガイドであり、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長の清水なほみ先生に聞きました。自分のからだと向き合い、健やかに過ごす手助けとなってくれることでしょう。
2回目の緊急事態宣言が出されるという事態の中で、業種によってはまったく新しい発想ややり方が必要になる局面も多々発生していると思われます。
産婦人科領域も例外ではなく、1回目の緊急事態宣言が出された時期には、一時的に「積極的な不妊治療は控える」という方針が打ち出されたり、実際に不妊治療を一時期中止していた病院もありました。現在は、「コロナを理由に不妊治療を控える必要はない」という見解に移行してきており、体外受精などの不妊治療も再開されています。
そのような環境の中で、「妊娠を希望していたけれど今はやめておこう」という選択をする方が増えているというデータが集まってきているようです。厚生労働省の統計では、令和2年7月の妊娠届出数は6万9341件であり、前年同月の7万7811件と比較すると10.9%減との結果でした。当院の外来でも、「そろそろ妊活のためにピルをやめようかな」とおっしゃっていた方が、「やっぱり妊活は延期するのでコロナが落ち着くまでピルを続けます」と考えを変えられるケースが散見されます。
実際に、コロナが落ち着くまで妊娠を「控えるべき」なのかどうかは、個人の感染リスクとそれに対する考え方によって異なります。医学的には、まだ妊娠中にコロナに感染したという症例の数そのものが非常に少なく、エビデンスと呼べるほどのデータが集まっていません。「現時点で」わかる範囲で分析すると、母体の感染によって胎児に何らかの先天的異常が出るリスクは上がらないということや、母子感染は非常にまれであるということが指摘されています。ただ、妊娠中の方が重症化するリスクはあるという報告や、コロナへの感染により早産のリスクが高くなるというデータも出ています。
万が一分娩時にコロナに感染していることが判明した場合、現時点では周囲への感染拡大を最小限に食い止めるために、分娩方法は帝王切開となり、新生児とも直接接触できないまま数週間隔離されてしまう可能性が高いのが現状です。たとえ、コロナに感染していなくても、里帰り分娩の場合2~3週間の自宅待機期間が過ぎなければ産科に受診ができなかったり、立ち合い分娩はできず産後の面会も断られたり人数制限があったり、といったさまざまな不便さは発生する可能性があります。
コロナを理由に妊娠時期を「先延ばし」するデメリットは、「加齢による妊娠率の低下」に集約されます。そのため、現時点で妊娠を控えた方がいいのかどうかは、母体の年齢的リスクと、妊娠した場合に起こりうる不具合を総合的に考えて、個々に判断するしかないでしょう。
あと何カ月待てばコロナが落ち着く、という予測は非常に困難といえます。時間が経てば、医療機関の体制が整ったり、陰圧換気ができる分娩室が完備されたりといった、現在よりは医療リソースも改善する可能性は考えられます。それらを総合的に判断して、自分にとっての「最適な産み時」をうまく読み取っていけるとよいでしょう。判断に迷ったら、まずは婦人科で相談してみるのもおすすめです。