強く儚い寿司達/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』⑧
公開日:2021/1/22
昨年と一昨年のM-1グランプリで唯一共通して使わせて頂いたワードがある。そのワードというのは「寿司」である。
2年連続で寿司を使用したことについては、完全に無意識であり、今年も勝負ネタに必ず寿司を入れようなんてもちろん全く考えていない。ネタに寿司を入れるという表現もなんだか気持ちが悪いし、さすがに3年連続で寿司を入れることは、もう鮮度を失っているだろうし。寿司だけに。にぎにぎ。
さてさて、とびきりご機嫌な寿司ジョークも炸裂したところで、本日のメインテーマを紹介したいと思う。
題して。
「寿司のなにが面白いのか」
前述の通り、昨年ネタに寿司を入れたことに関しては、完全に無意識であったとしても、寿司自体に面白さを感じていたかどうかと問われたら、答えはもちろんYESである。
なんというか、世の中にはなんだかよくわからないが、妙に面白味を感じてしまう事柄がいくつか存在している。
例えば寿司以外で言うと、犬だとか野球だとかアメリカだとか。
大分ニュアンスにはなってくるし、こんなもんは本当に人それぞれ感じ方が異なるものなので、人によってはなにをそんなにニヤニヤしているのかと感性丸ごと全否定の方もいるだろうが、少なくとも僕はその中の1つである寿司にとても魅力を感じてしまうのである。
ネタに入れていることからも、当然うちの社長(相方)も寿司は大のお気に入り。
そこで今回は、なにが面白いのかを言葉にして説明することは難しいとしても、恐らくの感じで寿司のここが面白いという考察をしていきたいと思う。無論この寿司の魅力について語るという行為は、雑魚寿司という一部の寿司を吊し上げた自身の発言による義務だと考えている。
まず寿司の恐らくここが面白いんじゃないかと思うポイントその1は、なんと言ってもそのフォルムではないだろうかと推測出来る。
一旦冷静になって考えて欲しい。
寿司に関しての歴史やら技術やらその他うんぬんかんぬんの知識や尊敬の意を、全て取り払って、その見た目、そのフォルムのみを見た時、僕はこんなにアホみたいな食い物他にないと思うのである。念のために言っておくが、これは決して寿司を侮辱したいわけではなく、あくまで寿司を面白いものと仮定した場合の話である為、まじ本当怒るとかクレーム言うとかはえんがちょモードだよこちらもということだけ理解して欲しい。
話を戻すが、寿司のフォルムは、寿司を知らない状態で見たとするならば、なんとも滑稽で、本気で言ってんのか? みたいな感情を駆り立たせるように感じる。
だって米に魚の切り身のっけてるだけなんだもん。
いやわかるわかる、そりゃ握り方とかね、魚の捌き方とかね、そういうのが諸々あってのあの姿ってのはね、おいらもプロ日本人として百も承知の上よ? ただ今一旦そういうの全部忘れてって言ったよね? そういう約束みたいなの? みんなで大事にしてこ? わかってくれたならね、今度キャンデーの1つでもあげるからさ。
単純にフォルムのみの話ならば、やはり寿司は異様なファニーさを醸し出しているように思えてならないのである。
次にポイントその2。寿司に付随する行為。「握る」というコマンド。
最初に〇〇食べたやつすごいとか、最初に〇〇やったやつすごいみたいな類いの話はよくあるが、このシリーズの中でも、最初に寿司握ったやつあたまおかしいと思う。多分周りの反応的には、正式には握ったというより、あいつ握っちゃったよ寄りの感覚ではなかっただろうか。
本来食すことのみのことを考えれば、百歩譲ってあのフォルムに辿り着いたとして、それは魚の切り身のせるところで完結することが通常の考え方であるように思う。しかしながら、そこから更に握るという行為を加えたことは、最初に握ったやつは悪ふざけであったと疑われても不思議ではない。だって握る必要あるかないかなんてその時点でのジャッジは不可能だと思うから。ちょけ始まりでもない限りそう簡単に握るという行為に辿り着かないと思ってしまうのである。あとそもそも握るってなんだよってめっちゃ思っちゃう。
そして、最後のポイントはめちゃくちゃ奥が深いという点。
なぜあんなにもアホみたいなフォルムで、誰にでも作れそうに見えてしまう料理が、ここまでの歴史と比例するような奥の深さを誇っているのか。
なんかこう、えっお前高校時代春高バレー出てたの!? みたいな感覚というか。いやそんなに凄いやつだったんかいの極みというか。そんな可笑しさを寿司には感じてしまうのだ。
以上のように、寿司にはなんとも言えない面白味がたくさん詰まっている。
重ねて申し上げるが僕は寿司や寿司に関係する方々を馬鹿にしているわけでは決してない。
ただ一言。一言だけ言えるとしたら。
雑魚寿司とか言ってすいませんでした。
一旦辞めさせて頂きます。
オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020、2021ファイナリスト。