「いじめ体験をこえるには」「学校へ行きたくない」自分は一人じゃない、と感じられる2冊
公開日:2021/1/29
学校にまつわるリアルな悩みを受け止め、人生を進むきっかけになる2冊、『FACES いじめをこえて』(NHK「FACES」プロジェクト/KADOKAWA)、『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』(茂木健一郎、信田さよ子、山崎聡一郎/KADOKAWA)が刊行。
毎日感染症のニュースが流れる中で、新しいルールが設けられた生活を余儀なくされる子どもたち。その一方、今まで当然とされてきた学校のあり方や、考え方を問い直す動きもあります。
『FACES いじめをこえて』と『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』は、今の学校生活につらさや悩みを抱える親子に、わずかでもこれからの人生のヒントを示してくれる2冊です。それぞれどんな本なのか、ご紹介します。
いじめサバイバーが勇気を出して語る、人生の“きっかけ”
『FACES いじめをこえて』は、NHKと海外の放送機関が連携し、いじめのつらい体験をこえて自分らしく生きていけるようになったきっかけを語る2分の動画を制作、世界で放送や動画配信を行う国際共同制作プロジェクトの書籍化。動画のための録音時のインタビューに、新たなインタビューを加え、文章で再構成したものです。本の中には日本、台湾、クロアチア、ブラジル、ドイツ、ボスニア・ヘルツェゴビナなどさまざまな国籍の20人が体験を語ります。本書の帯には、小説家の吉本ばななさんやお笑い芸人の斉藤慎二さん(ジャングルポケット)、『不登校新聞』の石井志昂さんらの温かい応援メッセージにも注目です。
当事者のリアルな声をもとに、専門家が一緒に考える
『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』は、2020年8月24日に放送された、ニコニコ生放送番組『明日、学校へ行きたくない』が元になっています。脳科学者の茂木健一郎さん、原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子さん、『こども六法』の著者である山崎聡一郎さんの3人が、番組に寄せられた投稿に答えながら、当事者と一緒に考える生放送番組は反響を呼びました。
本書では、番組では取り上げられなかった投稿や、学校や家庭の問題について広く考える対談も新たに実施し収録。また、『不登校新聞』編集長・石井志昂さんと山崎さんが“不登校という生き方”について考える特別対談や、石井編集長からのメッセージも掲載されています。
「あなたは悪くない」
2冊から共通して伝わってくるのは「学校の中でつらいあなたは悪くないよ」というメッセージ。そして「生き方も、自分を取り戻すきっかけも多様だよ」「世界は広いよ」という未来への誘いです。
『FACES いじめをこえて』の中で、学校でたまたま手が触れた相手に“うわ、最悪”と言われて傷ついた女性は、学校の外で仲間に出会い“自分から人と関わるのをやめなくて良かった”と言います。
非常事態が続く中、ストレスが特定の弱い立場の子に向かったり、親も先生も対応に必死なあまり、子どもの表情を見過ごしたりすることがあるかもしれません。「学校がつらい」「孤立しているけれど、誰にも相談できない」という思いを抱える子たちは、大人の想像以上に「そんな自分」を受け止めきれず苦しみます。
大事なのは、その苦しみを周囲が「なかったこと」にしないこと。2冊からは、“一緒に考えよう。君は一人じゃない”という作り手の思いが伝わります。
身近な子を見て「もしかして……」と思ったらこの2冊を手にしてみてはいかがでしょうか。
文=大和田佳世