“今”と“これから先”を幸せにするお金の使い方。幸福度が高まる経験の4条件とは?/99.9%は幸せの素人④
更新日:2021/2/2
この本1冊で今の不安や悩みが解決されるとしたら…? シリーズ20万部突破の『神メンタル』『神トーーク』の星 渉氏と、幸福学研究の第一人者・前野隆司教授の共著。科学的に自分で自分を幸せする「すごい裏ワザ」が満載! 読んだ日から行動にうつせる「即実践! 行動のレシピ」付き。
科学的に幸せになる「お金の使い方」
「自分にとって大切な何かを犠牲にして、今以上にお金を稼いだところで、どうやらそんなに幸福度は上がらなさそうだ」
もしそう思うのなら、科学的に判明している幸福度が上がる「お金の使い方」を実践してみてはいかがでしょうか?
稼ぐ「量」を増やすのではなく、今あるお金の「使い方」を変えるだけで、幸福度を上げる方法があるのです(「自分はお金を稼いだほうが幸せだ」という人は、まずは年収800万円を目指してみましょう。そのうえでこれから紹介するお金の使い方を実践すれば、まさに鬼に金棒です)。
ちなみに、これから紹介する科学的に証明された幸福度が増すお金の使い方は、使った「金額」に関してはまったく重視しません。少額でも「何回そういう使い方をしたか?」という頻度が重要なのです。
つまり、今の収入の範囲内でできるということです。常にこの使い方をしていれば、年収を800万円まで伸ばさなくても、それ以上の幸福度を実感することができるでしょう。
なぜ「ブランド物」より「旅行」のほうが得なのか
まずここで、あなたに書き出してほしいことがあります。
紙を用意するか、なければ遠慮なく本書の空きスペースに書き込んでください。書けない人は頭の中で思い浮かべるだけでも大丈夫です。
【質問】あなたのこれまでの人生を振り返って、うれしかったこと、感動したことは何ですか? それを3つ書き出してください。
さて、どんな内容が書き出されたでしょうか?
私が今、パッと思い浮かんだのは……。
・小学生の時に1カ月朝6時に起きてマラソン大会のコースを毎日走り、その結果1位を獲ったこと。
・少年野球の試合で、大差で負けていてあきらめかけていた時、自分がサヨナラヒットを打って逆転勝ちしたこと。
・大学生の時に進学塾の講師をしていて、生徒の合格発表を志望校の校門まで一緒に見に行き、校門で待っていたら生徒が泣きながら走ってきて「先生のおかげで合格しました!」と言ってくれたこと。
こんな感じでしょうか。うーん、ちょっと3つじゃ足りないですね。
私は、拙著『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』の内容に沿った心理学の講座なども行っているのですが、その講座の受講生にこの質問を投げかけたところ、みんなの答えには共通する特徴がありました。
その特徴とは……。
これまでの人生を振り返って、うれしかったこと、感動したこと……そのほとんどが「経験」「体験」によるものだということです。
「給料がアップした時」「大金を手にした時」あるいは「ブランド物のバッグを買った時」「高級腕時計を買った時」など「お金」「モノ」を手に入れた時については、ほとんど答えとして挙がってこなかったのです。
「人に自分のこれまでの人生のストーリーの概要を書いてもらうと、モノについてよりも、経験的なことや、経験的な買い物(旅行や演劇を観るなど)について書く傾向がある」
米コーネル大学教授の心理学者トーマス・ギロビッチも、そう発表しています。
私たちがうれしかったこと、感動したことで思い出すのは、いつも「経験」や「体験」ばかりです。だから、経験や体験を得られることにお金を使えば、自然と私たちの人生は幸せな思い出にあふれ、そして幸せな出来事にもあふれるというわけです。
2020年の新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言……。自宅で自粛している時も、「旅行に行きたいな」とか「誰かに会いたいな」ということばかり考えていたのではないでしょうか。「高級なバッグを買いたいな」なんてことではなかったはずです。
さらに、経験や体験にお金を使った満足感(幸福感)は、時が経つにつれて増加していく傾向があります。
その一方で、モノにお金を使った場合の幸福感は時が経つにつれて減少することもわかっています。
なぜ、幸福感が減少してしまうのか?
それは、モノにお金を使うと、その後に〝ストレスになる出来事〞が待ち受けている場合が少なくないからです。
たとえばブランド物の高級バッグを買って、その時はうれしかったとしても、街に出ると自分と同じものを持っている人を見てがっかり。汚してしまったり、傷つけてしまってがっかり。時間が経過すると、新作が出て自分のものが旧作となりがっかり……なんてことが起こりえるのです。
もちろん、モノを買わないで生活することはできないので、「モノにお金を使ってはいけない」というわけではありません。
「限られた自分のお金をどのようなバランスで使っていくか?」
それを考える際には、経験、体験を優先すると幸福感がいつまでも続く……そうした科学的裏付けがある、というお話でした。
「でも、実際のところ『経験』にお金を使うってどういうこと? イマイチよくわからないんだけど……」
そんな人のために、経験に対してのお金の使い方をお教えしましょう。
科学的には「どんな種類の経験にお金を使うとより幸福度が高くなるのか」ということもわかっているのです。
最大の喜びを得られる「幸福度が高まる経験の4条件」
【質問】「こんな経験や体験にお金を使いたい」と思うことは何でしょう? 5つ書き出してください。
さあ、あなたが思いつく答えは?
・オーロラを見に行く
・サントリーホールにクラシックを聴きに行く
・リゾート地であるモルディブで1週間ゆったりする
・豪華客船で世界一周旅行に行く
・両親が見に行きたいと言っていたメディアラボに一緒に行く
私の場合はこんな感じでした。
実は、私たちが経験に対して使ったお金によってもっとも大きな喜びを得られるのは、次の4つの条件のどれかを満たしているものだと考えられています(あなたが書き出した答えと見比べてみてくださいね)。
【科学的に証明されている「幸福度が高まる経験の4条件」】
①お金を使うことで、他の人と関わり、新たな知人や友人が増えたり、世の中とのつながりが実感できる経験。
②お金を使うことで、この先何年も楽しい気持ちで「繰り返し語ることができる」思い出となる経験。
③お金を使うことで、自分自身で思っている理想とする自分のイメージ、あるいは「自分がなりたいと思っている自分像」につながる経験。
④お金を使うことで、他のこととは簡単に比較することができない「めったにないチャンス」を得られる経験。
この4つの条件のうちのどれか、もしくは複数を満たしていると、お金を使ったことに対して最大限の喜びを得られると言われています。
①ならば、自分が好きなことのイベントに参加したり、習い事をすることなどが挙げられます。
②は、私の場合、オーロラを見に行くことや、モルディブに行くことですね。最近のことでは、夏にキャンピングカーで妻と北海道を1周した体験なんかは何度も人に話したくなりますね。
③ならば、自分磨きのための自己投資(私の講座に参加してくれている受講生さんは、まさにこのパターンですね)など。
④だったら……「宇宙旅行に行くチケットを購入する」なんてどうでしょう?
さあ、あなたが書き出した答えは、この4つの条件のどれかを満たしていたでしょうか? また、あなたはこれまで、どんなお金の使い方をしていたのでしょうか?
お金を使おうかどうかと迷った時は、この4つの条件のどれかを満たすかどうかを考えてみると、「今、自分は自分を幸せにするお金の使い方をしているのか?」と判断できるようになるわけです。
さらにおもしろいことに、お金を使って得られる経験をしている際の「時間の長さ」は、幸福度にあまり関係ないとされています。
たとえば、私の先ほどの答えである「オーロラを見に行く」。そのために数十万円を使って、オーロラが見えたのがたとえ15秒だけだったとしても、幸福度には影響しないということ。それが1分だろうと10分だろうと幸福度はほぼ同じ、というわけです。
ニュージーランドでの研究では、「バケーションの満足度に関して、日程の長さは旅行に対する全体的な印象に関係しない」という結果が出ています。なぜなら、旅行で得られる幸福感は、旅行中だけではなく、旅行から帰ってきてから「思い出す」ことでも感じられますからね。
「幸福度が高まる経験の4条件」を1つ以上満たす経験にお金を使うことは、私たちを「今」だけではなく、「これから先」も幸せにしてくれるのです。
即実践! 行動レシピ
先ほど自分で書き出した経験へのお金の使い方を、「幸福度が高まる経験の4条件」に当てはめて書き換えてみましょう。