あなたの心配事が実際に起きる確率は? ポジティブ感情の正しい育て方/99.9%は幸せの素人⑥

暮らし

公開日:2021/2/4

この本1冊で今の不安や悩みが解決されるとしたら…? シリーズ20万部突破の『神メンタル』『神トーーク』の星 渉氏と、幸福学研究の第一人者・前野隆司教授の共著。科学的に自分で自分を幸せする「すごい裏ワザ」が満載! 読んだ日から行動にうつせる「即実践! 行動のレシピ」付き。

99.9%は幸せの素人
『99.9%は幸せの素人』(星渉、前野隆司/KADOKAWA)

「ポジティブ思考」という病から抜け出す

ポジティブ教だけではうまくいかない合理的根拠

「もっとポジティブに考えなよ!」
「ポジティブに生活してたら、絶対いいことだって多くなるよ!」

 こんな感じで〝ポジティブであること〞を押し付けてくる人が、あなたの周りにいませんか?

 そんなポジティブ教信者の方々には大変申し訳ないのですが、ポジティブシンキングだけでは、人間の幸福度は高まりません。

 

 ここまで「あなたが正しいと信じていることは本当に正しいと言い切れるのか」……言い換えれば、「あなたが正しいと信じていることは、本当にあなたを今以上に幸せにしてくれるのか?」と問いかけてきました。

「お金」「人間関係」「パートナーシップ」のそれぞれの場面で、科学的に正しい幸福度が高まる選択をお伝えしてきました。

 様々な日常の場面で、モヤモヤがない、毎日充実していて生きがいを感じるといった、私たちが求めている今以上の「幸福度」を構成する要素がわかれば、どんな場面においても、自分のための本当に正しい選択をすることができるようになります

 そう、私たち人間の幸福度は、これからお伝えする「3つの感情」の影響を受けることで、左右されるのです

 この幸福度に影響を与える3つの感情につながる選択が、自分を今以上に幸せにする、充実する、モヤモヤがなくなる、科学的に正しい選択と言えるわけです。

 

 幸福度に影響する「3つの要素」は、ポジティブ感情の研究において数々の賞を受賞した心理学博士バーバラ・フレドリクソンや、米イリノイ大学名誉教授で「幸福学の父」とも呼ばれるエド・ディーナーの研究で明らかにされています。

 ではまず、すごく簡単に伝えますね。

 

 私たちの「幸せだな〜」という感情は、次の3つからの影響を受けています。

・ポジティブ感情
・ネガティブ感情
・人生満足度

「え? それだけ?」と思うかもしれませんが、本題はここからです。

99.9%は幸せの素人

 まず、なぜ「ポジティブ至上主義」だけでは幸せになれないのかを、3人の高校球児を例に説明しますね。あなたは、どの高校球児になりたいか決めてください。

 

【1人目の球児】

 甲子園を目指して「つらい練習も、俺たちならできる!」とポジティブに取り組む人。仮にこれをポジティブパワー「100」とします。

 その一方で実は心配性でもあり、試合のことを考えた時に、「勝てるかな? ミスしたらどうしよう」と思うこともある。これをネガティブパワー「100」とします。

 今の自分には、満足も、不満もないため、人生満足度は「0」とします。

・ポジティブパワー:100
・ネガティブパワー:100
・人生満足度:0

 

【2人目の球児】

 甲子園を目指して「つらい練習も、俺たちならできる!」とポジティブに取り組む人。1人目と同じくポジティブパワー「100」。

 さらに試合のことを考えても「なんとかなるだろう」と思える。したがって、ネガティブパワーは「0」です。

 しかし、今の自分には満足していないため、人生満足度は「マイナス100」です。

・ポジティブパワー:100
・ネガティブパワー:0
・人生満足度:マイナス100

 

【3人目の球児】

 甲子園を目指して「つらい練習も、俺たちならできる!」とポジティブに取り組む。

 試合のことを考えても、「なんとかなるだろう」と思える。

 今の自分が好きだと思え、そんな自分を受け入れています。

・ポジティブパワー:100
・ネガティブパワー:0
・人生満足度:100

 

 さて、この3人のうち誰がもっとも幸せそうでしょうか?

 言うまでもなく、「3人目の球児」だとわかります。

99.9%は幸せの素人

 実際には、ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度は、100や0のように数値で比較できるものではありませんし、相殺されるものでもありません。これは、わかりやすく伝えるために私が独自に作成したたとえです。

 ただ、3つの要素それぞれは独立的に私たちの幸福度に影響すること、1つだけよくても他の2つがダメだと、幸福度は真には高まらないことはおわかりいただけたと思います。これが、まずはポジティブだけではダメだという根拠です。

 

半沢直樹の強さを科学的に分析してみた

 私はドラマ「半沢直樹」が大好きです。あなたも観たことがありますか?

 主人公の半沢直樹は、普通の人なら心が折れるような問題が次々と発生しても、果敢に取り組みます。

 見せかけの「前向きになろう!」などという付け焼き刃のポジティブシンキングだけでは立ち向かえないほど、大問題、大トラブル、大パワハラが頻発します。名探偵コナン君もびっくりするくらいの、行く先々での問題多発。それでも、立ち向かう!

 そんな半沢直樹の強さを、科学的に分析してみました。

 

 無理難題が次から次へと降り注ぐ半沢直樹ですが、問題が起きるたびに、彼はある言葉を口にします。そして、その言葉が科学的にも正しい本当のポジティブ感情を作り出していたのです。

 その言葉が……そう、決めゼリフの「倍返しだ!」です。

 なぜ、この言葉が本当のポジティブ感情を生み出しているのか?

 それは、ポジティブ感情とは「将来への希望」から生まれるからです。

「倍返しだ!」と言っている半沢直樹は、「完全にやり返して、敵を完膚なきまでに成敗している」という自分の将来に希望を持っているわけです。将来への希望を持つことで、ポジティブ感情が生まれます。さらに、半沢直樹は宿敵に「倍返し」を宣言してから、将来の希望を実現すべく、できることを1つずつ、着実に実行します。これまでの敵と手を組んだり、金融庁検査で資料を隠したりと、現実の世界だったら問題だらけですが、やれることは全部やります。「できることを全て実行」します。

 実はこれも、ポジティブ感情を高めることとして科学的に証明されているのです。

 できることを着実に1つずつ実行すると、自分ができていることが増えている感覚を持つようになります。自分ができていることが増えているのを実感するのは、「個人的成長を実感する」と言い換えられます。そして個人的成長を実感すると、将来への希望がさらに強くなり、ポジティブな感情もより強くなることが研究でわかっています。

 どんなピンチでも「やれることは全部やり」「個人的成長を実感し」「〝倍返しする〞という将来への希望をさらに持つ」ことで、ポジティブ感情を生み出している半沢直樹の行動は、科学的に見ても理にかなっているわけです。

99.9%は幸せの素人

 さて、半沢直樹の話はこれくらいにして話を整理すると……。

・本当のポジティブ感情は「将来への希望」から生まれる
・「個人的成長を感じる」と「将来への希望」が強くなる
・その結果、ポジティブ感情もより強くなる

 というわけです。

 それでは、私たちも「科学的に」ポジティブ感情を手に入れましょう。

「『倍返しだ!』と1000回唱えてください!」と言いたいところですが、もっと簡単にできる科学的な方法があるので、こちらを先にやりましょう。物足りなかったら1000回叫んでみてください。

即実践! 行動レシピ

 この1年間で「できたこと」を50個書き出してみましょう。50個も書き出すとなると、「できて当たり前だと思っていること」まで書き出さないといけませんね。たとえば、会社に行くことができた、家賃を払うことができた、お弁当を作ることができた、家族におはようと挨拶することができた、など。でも、それでOK。個人的成長は、些細なことでも「できている」と実感することから感じ取れるのです。これをやると、自分ができたことを実感する=個人的成長を実感することが簡単にでき、本当のポジティブ感情を育てることができます。それでは、紙を用意して、5分間で50個書き出してみてください。よーい、スタート!

 

あなたの心配事が実際に起きる確率が判明しました

 私たちの幸福度に影響を与える感情は3つであると説明しました。

①ポジティブ感情
②ネガティブ感情
③人生満足度

 3つそれぞれが影響するから、ネガティブ感情を感じる機会はできる限り少ないほうがいい。ネガティブパワー「100」よりも、ネガティブパワー「1」のように、小さいほうがいいのは明らかです。

 様々な幸福学の研究で、ネガティブ感情は「心配事や不安」が影響することがわかっています。つまり、心配なことや不安なことが多かったり、大きかったりすると、よりネガティブになりやすいということです。

 

 では、ここで問題です!

 私たちの心配事は、どのくらいの確率で実際に起きてしまうでしょうか?

A 90%以上  B 60%以上  C 40%以上  D 10%以上

 答えは、Dの10%以上。正確に言うと、私たちの心配事が実際に起きるのは13%の確率でしかないのです。「降水確率13%」だったら、あなたは傘を持って出かけますか? そう、「まっ、大丈夫かっ」と傘を持たなくてもいいレベルでしか、私たちの心配事は実際には起きないのです。

 しかも、13%の実際に起きた心配事のうち80%は「自力で解決できるもの」だと、国際認知療法学会会長のロバート・L・リーヒ博士の研究は明らかにしています。つまりは、本当に解決できない心配事が起きる確率はたった3%となるわけです。降水確率3%で傘を持って出かけますか?

 そう考えるだけでも、心配事を気にしなくなりますよね。

<第7回に続く>