「繊細な新人社員」をつぶす上司と伸ばす上司の違いって?
公開日:2021/1/27
「最近の若者は繊細になった」といわれる。管理職や経営者は、次のような特徴をもつ「繊細な新人」に嘆いている。
□自分の意見をハッキリ伝えられない
□ちょっと注意すると、すぐに心が折れる
□言いにくいことをメールやLINEで伝えてくる
□「報連相」ができない
□定時に、いつの間にか退社している
しかし、嘆いているだけでは問題は解決しない。新人からすれば、あなたは「残念な上司」なのだ。新人がなぜこのような特徴をもつようになったのか、そして、どのように対応すべきかを知っていれば、双方にとって幸せな関係になれそうだ。
『あなたの職場の繊細くんと残念な上司(青春新書インテリジェンス)』(渡部 卓/青春出版社)によると、繊細な若者や新人はNOが言えず、リスクに弱い。だから、「内定辞退セット」や「退職代行サービス」が人気を得ている。リスクを恐れて自分の意見としてNOが言えない、だからメールやLINEで伝える、「報連相」のタイミングを逃す、定時に帰ると言えば怒られそうで黙って退社する。管理職や経営者は、なぜ新人がこんなにもリスクに弱く、NOが言えないのか、不思議に思うかもしれない。本書は、その理由を3つ挙げている。
(1)不安心理…物心がついたときに「阪神・淡路大震災」に始まるさまざまな大災害や事件を目の当たりにしてきたため、社会や会社の先行きに対する「不安心理」を常に抱えて生きている。つまり、社会や会社をそこまで信頼していない。
(2)同調圧力…もともと同調圧力が強いとされる日本だが、インターネットやSNSの発達によって個人の行動すべてが白日のもとにさらされるようになり、本当の自分を解放しづらくなった。常に同調圧力にさらされている感覚をもっている。
(3)doingからbeingへ…価値観がdoingからbeingに変わった。つまり、ハワイに行く、高級車を買うなど目に見える・数で測れる価値観「=doing:何をするか」が旧来の価値観だったが、今は、ある程度何でもできるスマホがあって友達と過ごせれば十分という目に見えない・存在そのものを重要視する「=being:どうあるか」に若者の価値観が置き換わっている。
本書によれば、優秀な人ほど旧来の価値観に則って出世した。仕事をたくさんして、お金をたくさん稼ぎ、たくさん消費した。飲み会は出世に欠かせないから、必ず出席した。そして報われて成功した管理職や経営者ほど、新人の実体を理解できず、「残念な上司」に陥りがちだという。意見をハッキリと言え、愛社精神をもて、飲み会に出席しろ、と良かれと“強要”してしまうのだ。
繊細な新人を理解したければ、まず自分と新人の価値観が違うことを認識する必要がある。その上で、新人に言いにくいことを伝えるときは、「かりてきたねこ」を意識すると良さそうだ。「かりてきたねこ」は、パワハラ防止対策や、組織のコミュニケーション改善の研修などをする際に著者が伝えている造語で、7つのポイントの頭文字を繋げている。
か…感情的にならない
り…理由をきちんと話す
て…手短に済ませる
き…キャラクター(性格や人格、外見や言動の特徴)には触れない
た…他人と比較しない
ね…根に持たない
こ…個別に伝える
本書は、それぞれのポイントを詳しく説明し、具体的な言葉掛けや行動なども示している。ウィズコロナ、アフターコロナの時代では人同士の接触が限られ、より心の結びつきが重要視される。本書は、これから求められるリーダーシップのあり方を説いた1冊といえそうだ。
文=ルートつつみ
(https://twitter.com/root223)