ロバート馬場「これから挑戦したい料理は…」料理の雑学を知って、いつもの料理を楽しむコツを聞く

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公開日:2021/1/30

ロバート 馬場裕之

 お笑いトリオ・ロバートの一員でありながら、テレビ番組などでプロ顔負けの料理の腕を披露している馬場裕之さん。彼にとって3冊目となる料理本『ロバート馬場ちゃんのキッチンmemo いつもの料理が“パっと”おいしくなる魔法』(馬場裕之/三才ブックス)では、誰でも簡単に実践できて、料理の味や仕上がりを劇的によくする“ひと手間”を、その理由とともに紹介している。料理初心者からベテランまで幅広い層にレシピを支持されている馬場さんが、料理にこだわりはじめたきっかけは? これから挑戦したい料理とは? お話をうかがった。

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おいしくできると、また作りたくなる。料理の広がりを楽しんで

ロバート 馬場裕之

──今回、これまでのレシピ集とは違って、料理の雑学をまとめようと思われたのはなぜでしょう?

馬場裕之さん(以下、馬場) この本を出してくださった三才ブックスさんは、料理のほかにも雑学の本を出していらっしゃいます。僕があまり知らないジャンルだったのですが、そういった雑学の本を見せていただいたとき、情報がすごく頭に入ってきやすいなと思いました。

 レシピの本だと、自分の好きな料理は何度も見るけれど、そうでないものはあんまり見ませんよね。かといって、勉強っぽい本になりすぎても、情報はなかなか入ってこない。実は僕、ずっと本を見ているのは苦手なのですが、「雑学の本だと読みやすいな」と感じた自分自身の経験からも、読みやすい本を作ってみたいと思いました。

──たしかに。この本では、料理をする上でやりがちなことと、それに対するアドバイスとしての「おいしくなる魔法」、なぜおいしくなるのかの理由が見開きで紹介されていますが、とても読みやすくわかりやすいです。収録するネタは、馬場さんがお考えになったのですか?

馬場 今回は、僕が知っている知識はもちろん、プロの方にも知恵をお借りしました。僕は料理をきちんと習ったことがないので、感覚でやっている部分が多いんですよ。その点、プロの方の知識ってやっぱりすごい。たとえば、僕も知っていた「ショウガを保存する時は水に浸して冷蔵庫へ」という技は、ミョウガやモヤシにも応用できるんですよ。一般の家庭では、ミョウガやモヤシってすぐに使いたいから買ってくるものじゃないですか。保存のことまで考えたことはなかったのですが、もしもあまったら、こんなふうにすればいいんだなと思いました。

 でも僕はミョウガが好きなので、あまったとしても千切りにして食べちゃうんですけどね……(笑)。鰹節と叩いた梅をのせて、シンプルな居酒屋メニューみたいにして。たまり醤油なんかを垂らすといいですね。この本のコラムでは、「しょう油の種類と選び方」なども紹介していますが、けっきょくは好みで選ぶのがいいと思います。甘いしょう油が好きな人は、甘口しょう油を使ってみたり、あっさり食べたい気分のときは、薄口しょう油を使ってみたり。試す楽しみもありますよね。

ロバート 馬場裕之

──料理の技に、科学的な裏づけなどのたねあかしや理由が一緒に掲載されているのも、おもしろく読みました。

馬場 料理をし慣れている人には、あまり説明することなく「ではこの素材を水から煮ていきまーす」などと言うことが多いのですが、「こんな理由があってこうするんだ」とわかっていれば、「ということは、今まで作っていたあの料理も、こうしたほうがいいのかも?」と、ほかの料理にも応用できるようになるかなと思ったんですよ。

 料理のコツの理由がわかれば、好みによって料理の仕上がりを変えることもできます。たとえば、「この本を読んで、ニラ玉のニラを鍋に入れるタイミングを最後にしてみたら、ニラがシャキッとしたまま仕上がっておいしかった」とか、反対に「私はくたっとしたニラ玉のニラが好きだから、今までどおり最初に入れよう」とか。「でもレバニラのニラはシャキッとした歯ざわりに仕上がってほしいから、最後に入れてみよう」とかね。

 この本に載せたのは、本当に基礎知識。でも、これをきっかけに、いつもの料理がおいしくなったり、食べた人が「おいしい」と言ってくれたりすると、「今度はこうするとまた変わるかも?」と試してみたくなりますよね。そうすることで料理のレベルは上がっていくだろうし、広がりも大きくなっていく。そんなふうに、どんどん料理を楽しんでもらえたらいいなと思います。

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ロバート 馬場裕之

──そもそも、馬場さんが料理をやってみようと思われたきっかけは?

馬場 料理はもともと、小学生のころからやっていました。火を使えるし、実験が好きだったので、理科の実験的な感覚で料理をしていましたね。これだけこだわるようになったのは、料理でテレビに出ることが決まってからです。テレビで披露するのなら、なにかしら新しいものじゃないといけないだろうし、また呼んでもらえるような料理をしなきゃいけないと、より深く追求するようになったというか。「こうしたほうが簡単だな」「どうしてこうするんだろう」と、ちゃんと考えながら料理をするようになりました。

 料理でテレビに出ることになったのは、今田耕司さんの家で鍋を作っていたことがきっかけだと思います。今田さん、明石家さんまさんと一緒に仕事をするときに、今田さんが「さんまさんに漬物持っていったら」と言ってくださって。そのときは、ぬか漬けか、塩と唐辛子と昆布で漬ける白菜の漬物を持っていったと思うのですが、さんまさんに食べてもらうんだから、なるべく体にいいものをとか、素材の味を生かしたシンプルでやさしい味つけにしようとか、いろいろ考えましたね。その漬物を、さんまさんに「うまい」と言ってもらえて、ゴールデンタイムの『さんまのスーパーからくりTV』に呼んでいただいて……そこから料理の仕事が広がっていった感じです。

──料理の魅力や醍醐味は、どんなところにあるのでしょう。

馬場 「作って食べられる」ということだと思います。「作ってみる」だけだと、僕としてはあまり達成感がないんですよね。たとえば植物も、観葉植物より、食べられるものを育てて、それを調理して食べるほうがおもしろいなと思います。昨日も、自分の家のプランターで育てたバジルやローズマリーをトマトソースに使いましたよ。買ってきたものとは違う香りの強さや新鮮な感じに、すごくテンションが上がります。料理も同じで、そのまま食べても「うーん……」となるものが、調理で劇的においしくできる、それを食べて感動するといった達成感があるなと思っていて。自分で作るだけではなく、作ったものを「おいしい」と食べてくれる人の顔を見るのもうれしいですね。

──2020年は、YouTubeにも活動の幅を広げていらっしゃいますね。チャンネル登録者数は23万人以上、大人気の「バカ旨まぜそば」のレシピ動画は、130万回も再生されているとか。

馬場 そうなんです。YouTubeって、ほぼ毎日くらいの頻度で動画を上げたほうがいいそうなのですが、僕は芸人としての仕事もあるし、週に1回くらいしか上げられていないんですよ。それなのにたくさんの人に見ていただけて、ありがたいですね。

 視聴者の方の「こういうのを作ってほしい」という意見を取り入れながら、簡単にできるレシピを考えているので、「作ってみました」「おいしかった」というコメントをいただくとすごくうれしいです。反響をダイレクトに見られるので、YouTubeはやっていてよかったなと思いますね。

ロバート 馬場裕之

──馬場さんのご本やYouTubeを見て、これから料理に挑戦してみようと考えている人に、料理を楽しむコツを教えてください。

馬場 得意な料理を、ひとつだけ極めてみてはどうでしょう。最初のうちは、味噌汁だけ自分で作って、あとはお惣菜を買ってきて、それを食卓に出せばいいと思うんです。全部自分で作るのは、やっぱり大変ですからね。得意な1品を極めていけば、「これ、すごくおいしいね。買ってきたんじゃないの?」と言われるくらいになるだろうし、そうなったらその1品を応用して、また違うものを作ればいいんです。

 なんでもかんでも自分で作ろうとして嫌になるくらいなら、本当に簡単な冷奴からでいいと思いますよ。ショウガをすりおろして、ネギを切って、かつおぶしをのっけて、しょう油をかければ、これだって立派な料理。できるところからやってみるのもいいんじゃないかなと。

──今おっしゃった冷奴も、この本の中に使える技がいっぱいありましたね! 馬場さんご自身は、これから挑戦してみたい料理などがありますか?

馬場 寿司を握ってみたいですね! 寿司大学みたいなところに通ってみたいです。料理の専門学校だって40代から通っても遅くはないと思いますし、一度プロが学ぶところで学んでみたいという気持ちはありますね。

 それから、今、全国各地でいろんなものを食べさせてもらっていると、まだまだ知らない料理や食材があることに驚かされます。これからは、「知らないものはない」っていうくらいの知識を仕入れて、みなさんに新しい料理やご当地グルメを紹介していきたいと思いますね。今のお気に入りは、沖縄料理。イカの墨袋を使ったイカスミ汁や、ヤギ肉のクセをヨモギの風味でおいしく食べるヤギ汁など、おいしい料理がいっぱいあるんですよ。そういう料理を、全国のみなさんに知っていただきたいですね。

 料理の分野では、「こんな食材があったんだ」「こんな技があったんだ」と思うことがまだまだ多くて、知識的にも、もっともっと成熟していけそうだなと思います。お笑いも、年とともに動けなくなってきてはいますが、年を取っても3人でコントをやっているのは、けっこうおもしろいんじゃないかなと。いまだに中学生のコントとか、終電を逃した大学生のコントとかやってますからね……(笑)。笑いのほうでも、見る人に「まだこんなバカなことやってるんだ」と思ってもらいつつ、どんどんおもしろく成熟していけたらいいなと思います。

ロバート 馬場裕之

──この本は、どんな人に読んでもらいたいですか?

馬場 料理をはじめたての人にはもちろん役に立つと思いますし、バリバリ料理をなさっているという方も、いくつかは「こんな裏技があるんだ」と思っていただけると思います。料理に興味がある人、みんなに読んでいただきたいです。

取材・文=三田ゆき 写真=島本絵梨佳