顔を合わすたび、繰り返される親戚の小言。口撃をどうかわす?「さらりと受け流す技術」/頑張りすぎずに、気楽に ③
公開日:2021/2/12
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さらりと受け流す技術
「お盆や正月のたびに親戚から同じ小言を言われることが嫌」
という相談を受けて、じっくり考えてみたことがある。
大人たちはなぜ、同じレパートリーの小言を繰り返すのだろうか。
思うに、単に言うことがないからに尽きるような気がする。
昔は、経験から得た人生の知恵こそが絶対の社会だったため、
親たちの世代は、子どもたちに向けて、
料理の基本から農作業のやり方、どう生きるべきかなど
それぞれの家で定められた知識を受け継ぐという責務を
背負っていた。
しかし今は、農作業をする機会もほとんどないし、
気になったことはインターネットで検索しさえすれば
関連動画だってすぐに見つかる世の中だ。
あまりにも急速な時代の変化に
「ワシらの時代はなあ」で始まる親戚の小言を聞いても
こちらにとっては、まるで古朝鮮時代の話みたいに感じる。
あちらとしても、久しぶりに会った私たちと
何を話したらいいのかさっぱり見当がつかないのだろう。
ひとことで言って、深刻な「ネタ切れ」状態なのだ。
そんな状況下でも、親たちの世代は任務を遂行しようとする。
だから彼らはただ、人生の務めを教えなくちゃと思って
「早く就職しなさい」「早く結婚しなさい」
「早く赤ちゃんを産みなさい」と
判で押したような話を繰り返すしかなくなる。
だったら私たちも「これは軽い挨拶だ」くらいに
受けとめた方がいい。
もちろん、こういった小言に気分を害することも、
つらい思いをすることもある。
「就職してお金を稼ぎなさい」「結婚しないとダメよ」
「子どもはつくるべきよ」「二人目はまだなの?」などなど……。
何よりも、こういった彼らの口撃のいちばんの問題点は
「難しいことを、さも簡単なことのように言う」という点にある。
今日、就職するのがいかに大変かを知らない人はいないだろうし、
ならば、結婚するのも同じはずなのだけれど。
昔は行動範囲も今よりうんと狭かっただろうし、
お見合い結婚も多くて、おせっかいな大人たちが
近所の同世代の男女をくっつけてくれたりもした。
しかし、今は違う。めいめいに都市で暮らす現代の若者にとっては
よほどの努力でもしない限り、誰かと出会うことは至難の業。
出会えても、高い家賃、養育費、生活費までを考慮すると
結婚に至る手前の段階で不安が頭をもたげる。おまけに、
初婚年齢とともに出産年齢も後ろずれして、
母体への負担も大きくなっている。
赤ちゃんを生んだら生んだで、核家族社会では
育児が私たちの人格と忍耐力を破壊することもある。
親たちの世代では、まわりから強制されたからできていたことが
今日では、やりたいと思ったとしても、簡単ではなくなっている。
だから、そんな難易度の変化を鑑みもせずに気軽に催促されると
何だか、こちらが欠陥人間のように感じてしまう。
そんなわけで、私はそういう大人たちからの小言にはいつも
「就職するのは大変なんですよ」
「結婚するのは大変なんですよ」と答えるようにした。
一生懸命にやってもうまくいかないこともあったのは事実。
一生懸命にやっても困難だったことは、素直に難しいと言った。
もちろんそんな難しいことを、
ひょうひょうとやってのける人間も存在するのだが
それができない、ごく普通の人間の私が
何か間違えているという話ではないはず。
それでも、軽く受け流してはいけないという人もいる。
そう考える人は、これまで自分が周囲の期待に応えようとして
つらい思いをしてこなかったか、見つめ直してみてほしい。
今こそ、他人の期待に
ブレーキを掛ける瞬間だ。
ただ、軽く受け流そう。
決定権はあなたにあり、
誰もたやすく評価を下すこともできない。
あなたの人生は、いつでもあなたのものだ。
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質問するから老害になるのではなく、
答えを強要するから老害になるのだ。
核心をついた言葉が、無意味である理由
わかっていても、できないことはありますよ