親の期待に応えることが正解? 完璧じゃなくても大丈夫「がっかりさせる勇気」/頑張りすぎずに、気楽に④

暮らし

公開日:2021/2/13

日韓累計145万部のベストセラー『私は私のままで生きることにした』の著者最新刊、待望の日本語版! 人間関係に悩みのない人なんて、いない。しかし、誰しも、一人じゃ生きられない。だから、自分が心地よいと思える他者とのバランスを見つけよう。自分らしく、幸せに生きるためのヒントをお届けします。

頑張りすぎずに、気楽に
『頑張りすぎずに、気楽に – お互いが幸せに生きるためのバランスを探して -』(キム・スヒョン:著、岡崎暢子:訳/ワニブックス)

がっかりさせる勇気

優れた才能の持ち主を紹介する「英才発掘団」というテレビ番組に
小学5年生レベルの問題を難なく解く、6歳の子どもが出ていた。

幼稚園にひとつしかなかったおままごとセットを独占することが
最大の幸せだった、私の6歳のころとは大違いで、
この賢い子は朝から晩までひたすら問題集に取り組んでいた。

ところで、そのままよく見ていると
解けない問題があったりとか、答えを間違えたりすると
子どもはショックを受けてクローゼットに隠れたりしていた。

 

この子どもの気持ちを理解しようと
精神健康医学の専門医であるノ・ギュシク博士が理由を尋ねると
子どもは「もっと頑張ってみんなに認められなくちゃ」と言い、
「本当は問題集なんかやりたくないけれど、
やらないとお母さんががっかりするから」と、
わっと泣き出してしまった。

わずか6歳の子が、これほどの重荷を背負っていたなんて。

 

ここまでの話だけ聞けば、この子どもの母親はきっと
過酷な問題集労働を強いる悪党なのだと思うだろう。

 

しかし、母親は一度も強要したことはなく
子どもが自発的に問題集を解き始めたという。

これを聞いた博士が危ぶむようにこう言った。

「それこそが、悲劇なんですよ」

 

人の言葉に敏感で繊細なこの子どもは、
まわりの言動や言葉から、その心中を読み取っていた。

問題が解けたときには褒められて、承認される喜びを感じたのに、
答えを間違えたときは褒めてもらえない。

つまり親が失望したのだと読み取り、
正解がある問題集を解き続けるという、
自分なりの図式を作り上げた。

このような、子どもに対する親の献身と犠牲が、
その子にとっては
「こんなによい親を失望させてはいけない」という
気持ちを抱かせ、結果的に追い込むことになっていたのだ。

 

ところで、私のこの推測は誤解かもしれないし、
大げさかもしれない。

だが仮に、この子の親が正解だけを期待していたとしても、
子どもが耐えられないほどの過度な期待は、
やはり親側の問題だった。

 

それにもかかわらず、子どもは誰からも求められてもいない、
または求められても応えがたい要求に縛られ、
子どもが享受すべき喜びや好奇心を
失敗したときの恥ずかしさや恐れと置き換えてしまっていた。

これこそが、本当の悲劇じゃないだろうか。

 

幼いころに確立した、こんな思考のまま大人になってしまったら、
悲劇はずっと繰り返される。

「完璧じゃないと愛されない」という、心に染みついた誤解は
相手の気持ちを察するあまり、自分に噓をつかせる。

もちろん、大切な人を喜ばせたいという気持ちには問題はない。

だけど、その気持ちが度を越して
自分を押さえつけてしまっては、元も子もない。

誰もが完全体じゃないのだから、
他人の失望を受け入れる勇気を持たなくては。

ひょっとしたら、あなたに失望する人はいないかもしれないし、
誰かの失望があなたの責任じゃないことだってあり得る。

 

万人に好かれようという気持ちを手放す勇気が必要なのと同じく、
ときには自分にとって大事な人々さえ、
がっかりさせる勇気も必要なのだ。

 

完璧じゃなくても大丈夫。
正解じゃなくても問題ない。

 


何人たりとも、あなたの尽くしたベストに対して
がっかりする資格なんてない。

 

ある日、弟が言った

頑張りすぎずに、気楽に - お互いが幸せに生きるためのバランスを探して -

待って? 君自身が幸せになることがいちばん大事だよ?

<第5回に続く>