累計50万部突破!『ゆるゆり』スピンオフ『大室家』は3姉妹のゆるい日常と“ガチゆり”を描く物語

マンガ

公開日:2021/2/9

大室家
『大室家』(なもり/一迅社)

『ゆるゆり』のスピンオフ作品といえば“OMRK”こと『大室家』(なもり/一迅社)。累計50万部突破(※)の大ヒットとなった本作は、七森中生徒会の大室櫻子が主人公……のはず??

 物語は櫻子を含む3姉妹、高校生・撫子(なでしこ)、小学生・花子(はなこ)の日常と、友だちとのゆるい交流が、毎回大室姉妹それぞれを中心に描かれる。つまり櫻子がほとんど出てこないエピソードもありつつ、にぎやかに進んでいくのだ。本作は『ゆるゆり』でおなじみのキャラクター達が存在する世界で、櫻子の幼なじみ・古谷向日葵(ふるたにひまわり)も時々登場するし、他のキャラクターもちらほらと顔を出す。

『ゆるゆり』を知らなくても楽しめちゃう本作、果たしてスピンオフと銘打つのが正しいのか………!?

 このキャッチコピーの通り『大室家』単体でもしっかり楽しめる。いきなり本作を読み始めても大丈夫なので、安心してほしい。

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『ゆるゆり』スピンオフ! 撫子、櫻子、花子……3人そろって大室家♪

 累計発行部数400万部(2020年1月時点/電子・関連書籍含む)以上の大ヒット作品『ゆるゆり』。大室櫻子は生徒会の一員として、元は茶道部だった空き部室でだらだらと過ごす「ごらく部」に、何やかんやと絡んでいく。

 なお彼女は生徒会にいるが、いわゆる“ちゃんとした子”ではない。大室家では優秀な撫子、しっかり者の花子に挟まれた、全くもって残念な次女なのだ。では2020年12月に出た4巻までに判明しているエピソードから、3姉妹のキャラクターを末っ子から紹介していく。

・大室花子(8歳)
 末っ子の小学生。語尾に「〜だし」や「〜し」をつける。撫子のことは「おねえちゃん」と呼ぶのに対し、トラブルメーカーな櫻子とは喧嘩も多く、呼び捨てにしている(嫌いというわけではない)。

 勉強もでき、クラスメイトたちからは敬意をもたれているものの、唯一“みさきち”こと高崎みさきには一方的にライバル視されている。そんなみさきと花子が次第に仲良しになっていくようすも必見だ。なお古谷向日葵の妹、楓(かえで)からは「花子お姉ちゃん」と呼ばれ慕われている。

・大室櫻子(13歳)
 七森中生徒会役員……とは思えないお調子者でおっちょこちょいの次女。大室家で唯一、勉強嫌いで成績もイマイチ。姉と妹からはぞんざいな扱いを受けることが多いものの、家庭を明るくするムードメーカー的な存在である。

 本作ではほぼ描かれないが、「ごらく部」の赤座あかり、吉川ちなつと同じクラス(幼なじみの向日葵も)。本作での彼女のエピソードは、姉妹とのものがメインで、かつ向日葵との絡みもある。櫻子と向日葵との関係は腐れ縁、ライバル、犬猿の仲。と言いつつ多くの時間を一緒に過ごす、仲良しとしか表現できない間柄だ。

・大室撫子(18歳)
 高校生で18歳。妹二人と違いクールだが人一倍、家族思い。昔から家族ぐるみで付き合っている向日葵を「ひま子」と呼び、かわいがっている。彼女と櫻子との仲を温かく見守っており、二人がもう忘れている幼い頃に思いをはせることも。

 また同級生でいつもつるんでいるのが、髪をゆるっと一つに結びバイトにいそしむ園川めぐみ、黒髪でおっとりとした印象とは裏腹にツッコミが強めの八重野美穂、真面目な性格でロングヘアーの三輪藍という3人。このうちの1人と、女性同士で付き合っているのがほぼ確定している。ただ全員と怪しい描写もあり、見事に相手が分からないよう描かれていて、ネット上ではファンが考察に余念がない。

『ゆるゆり』は中学生女子の「百合な想い」をギャグにし、あるいはコメディタッチで描いているが、本作では高校生の撫子が周囲に知られないように二人の仲を密やかに育んでおり、頻繁に“誰か”と電話をする描写がある。

4巻のメインはゆるい日常の中の“ガチゆり”? 撫子と付き合っているその相手とは…

 最新4巻で描かれるのは、花子の級友たち・小学生組のにぎやかな話。みさき以外のキャラも立ってきたように感じた。また向日葵がちなつと遊びに行ってしまったと、櫻子がしょげて元気がなくなってしまう話も収録。

 相変わらずの日常だが、撫子の恋愛にピンチが訪れる……。謎の彼女が電話中ちょっとしたことで不機嫌になり「別れる」と言ってくるのだ。翌日登校すると、めぐみ、美穂、藍が全員三者三様に元気がない。撫子と付き合っているのは果たして誰なのか、この4巻でようやく判明する……?

 繰り返すが本作はスピンオフ元の『ゆるゆり』を飛び出し、別個の物語としてしっかり成立している。そのためいきなり手を出しても大丈夫だ。なお本稿で説明した基本的な設定をおさえていれば、エピソードは1話完結だし、どこから読んでもOKである。ゆるさとガチさが共存する、なもり氏ならではの百合世界を堪能してみてもらいたい。

※2020年12月時点(電子書籍版含む)

文=古林恭