タワマン、郊外ベッドタウン…不動産を「売る層」が動き、価格暴落が始まるのはこの先!?
公開日:2021/2/16
「コロナ不況」が叫ばれるなか、不穏なニュースと、予想外の活況を示すニュースが混在しているのが不動産市場だ。
電通グループが本社ビルの売却検討を発表するなど、都心のオフィスを売却・縮小する動きは活発化する一方、「億超えタワマン爆売れ」「経済低迷でも好況の不動産市場」なんていうニュースも目にする。現在、不動産の購入・売却を検討している人は、「この先どうなるの?」と不安でいっぱいだろう。
『激震! コロナと不動産 価値が出るエリア、半額になる物件』(榊 淳司/扶桑社)は、そんな不動産市場の今と未来を読み解く1冊。現状分析でも未来予測でも「なるほど!」と納得する内容が非常に多かった。
まず感心したのは、首都圏の中古マンション市場がこの先「バイヤーステージ」から「セラーステージ」へと移行するという見立てだ。
著者いわく、現在タワマンや中古マンションがよく売れているのは、やはりコロナの影響。ステイホーム時間の増加や、リモートワークの環境整備のため、「広さと部屋数」「共用施設」などが充実した物件に、住み替えできる経済力を持った層が動いた……というのがその背景だという。
そして、そうした「バイヤーステージ」が終息したあと訪れるのが「セラーステージ」だ。
というのも、コロナ禍でも収入を落とさなかった層・増やした層は、やはり世の中では少数派。一方で収入減や失職となった多数派層は、今のところ貯金の切り崩しや返済猶予で何とかやりくりしている。本書によると、住宅金融支援機構に寄せられている返済猶予の相談件数は、やはり新型コロナの流行以降は急増しているそうだ。
しかし返済猶予の後、再開の目処が立たない物件は任意売却へ。最後は希望価格を下げてでも売り切るケースが多数出てくる。そうやって生活が困窮した層が物件売却を進め、「買う人」より「売る人」が増加する「セラーステージ」が訪れる……というのが著者の見立てだ。これは、かなりの確率で実際に訪れそうな未来に感じられる。
そうした大局の見立てを踏まえたうえで、著者は本書で湾岸エリアのタワマンや、「寝に帰るだけ」の郊外ベッドタウンの不動産のリスクも指摘。「通勤しやすい」という観点で住む街を選ぶ時代が終焉に向かうなかで、どのような物件により価値が出て、どのような物件の価値が暴落するのかも予測している。
本書のあとがきには、2021年は不動産市場の「暴落開始の年」になるかもしれないとの予言があり、「数年単位で眺めると3~5割程度の下落になっている物件も出てくるだろう」との予測もある。そんな時代だからこそ、不動産の購入・売却を考えている人はより慎重にならねばいけないし、本書のような書籍で知見を高め、不況下でも上手く立ち回る術を身に着ける必要があるだろう。
文=古澤誠一郎