道にはそれぞれ歴史がある…。日本の文明と発展を築いた「国道16号線」のロマン

文芸・カルチャー

公開日:2021/2/15

国道16号線「日本」を創った道
『国道16号線「日本」を創った道』(柳瀬博一/新潮社)

 R16――。コンテンツの年齢制限ではなく、国道16号線の話である。神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県をグルっと一周する環状線は、今なお周辺に住む人たちの生活を支えている。そして、国道16号線こそが「日本の文明の前提となった地理的な条件を備えた地域」というのが、書籍『国道16号線「日本」を創った道』(柳瀬博一/新潮社)である。

■16号線エリアは貝塚の発見数が日本で一番

 現在のルートが「国道16号線」と指定されたのは、東京オリンピックが開催された前年の1962年5月1日だった。そこから数えればわずか60年ほどと比較的新しい道路のように思えるが、このルートこそが「古代から現代に至るまで日本の文明と文化、政治と経済のかたちを規定してきた」と本書は主張する。

 例えば、周辺地域を含む「16号線エリア」は、貝塚の発見数が日本で一番多いという。本書によれば、全国で見つかった約2700カ所の貝塚のうち、16号線エリアで発見されたのはその3分の1を超える950カ所。なかでも多いのは千葉県で、同県だけで770カ所、県庁所在地である千葉市内だけで約120カ所の貝塚が見つかっている。

advertisement

 貝塚は、古代の人びとの生活を知るための貴重な史跡だ。16号線エリアでは、教科書に登場する横須賀の「夏島貝塚」も発見されており、今なお古くは縄文時代に生きていた人びとの足跡が多く残っている。この事実について、著者は「16号線エリアがいかに暮らしやすかったかがわかる」と述べている。

■日本最強の郊外道路としてさまざまな顔を持つ

 国道16号線は「郊外の道」の代表としてメディアで取り上げられる機会も多いという。実際、本書でも「日本最強の郊外道路」と呼んでいるが、一方で、「都会」の要素もあると主張している。

 東京都だけを見ると、国道16号線は町田市や八王子市など北西部の6市町を通り抜けている。一方で、神奈川県・埼玉県・千葉県では各地の県庁所在地や政令指定都市を貫いており、主要な都市を繋いでいる。

 また、周辺地域を含む16号線エリアは人口が多い特徴もある。道路が通る4都県27市町の地域は、人口の合計が1185万人以上とされている。東京都の全人口が1383万人以上、西日本の京都市・大阪市・神戸市の総人口が567万人以上と考えても、各地に匹敵する「人口集積地帯」になっているという。

 さらに、国道16号線は「異国」の空気も漂わせる。中華街にほど近い神奈川県横浜市の山下町や元町、米軍施設のある神奈川県横須賀市、東京都福生市、元米軍基地であったジョンソンタウンがある埼玉県入間市など、さまざまな顔を持っているのだ。

 私たちが通る道には、それぞれのロマンと歴史がある。16号線エリアに住む人たちはもちろん、それ以外の地域の人にとっても、自分の生活圏に思いを巡らせるきっかけになる一冊だ。

文=カネコシュウヘイ