ごく普通の高校生が異世界ではチート魔術師!? チート級異世界ファンタジー英雄譚『異世界チート魔術師』の魅力とは
公開日:2021/2/23
※「ライトに文芸はじめませんか? 2021年 レビューキャンペーン」対象作品
どこにでもいるごく普通の高校生が異世界に召喚されて、チート能力で無双する。ラノベの異世界ファンタジーものではお約束の展開だが、そのなかでも世界最強のチート能力を獲得してしまうのが、この『異世界チート魔術師(ヒーロー文庫)』(内田健/主婦の友インフォス)だ。
原作小説は『小説家になろう』で公開され人気を博した話題作。すでに一昨年にはアニメ化も果たし、アニメシリーズが終わった現在でも原作小説シリーズは最新刊13巻まで書籍化されており、シリーズ累計発行部数295万部を突破している。
ごく普通の高校生だった西村太一と幼馴染の吾妻凛は、下校中に突如足元に現れた魔法陣に吸い込まれて気づけば異世界に! 最初は異世界に戸惑い、危険な目にあった太一と凛だが、冒険者ギルドで魔力を測定したところ2人は常人をはるかに超える魔力の持ち主だった! しかも凛は火水風土の四属性を操る希少なクアッドマジシャン、さらに太一はどの属性にも含まれない固有の魔法を操るユニークマジシャンという唯一無二の存在だった! 「修行次第では国を滅ぼすことのできる存在になるだろう。金も地位も女も思いのままだ」。2人の魔術の師匠となった女魔術師レミーアにそう煽られた太一だったが、「権力とか面倒くさい」という理由から、凛と共に異世界で気ままな冒険者を目指すことに。
修行を始めてたちまち魔術の才能を発揮し、現代の科学知識を取り入れる発想で多彩な魔術を編みだす凛。そんな彼女に対して太一は史上最強の膨大な魔力を宿しているもののユニークマジシャンの属性が判明するまでは、魔力で身体を強化する術しか使えない。しかし、それでもなお拳ひとつで岩山を破壊するほどの圧倒的なパワーでモンスターを打倒して冒険者としての依頼を達成し、新人冒険者ながらも怒涛のスピードでランクを駆け上がっていく2人の快進撃が爽快だ。
ただ主人公とヒロインが無双するのを楽しむだけの作品ではなく、そのチート級の力を使って2人がこの異世界で何を成し遂げるかがこの作品のポイントだ。何事にも強い力には相応の責任がともなう。冒険者として、都市を襲う悪党やモンスターから人々の生活を守り、その騒動の裏で暗躍する謎の組織からも命を狙われ、国家の内乱や、やがては世界の命運を担う争いに2人が巻き込まれていく。そんな異世界ならではの面倒事や、社会のしがらみ、密かに人々を縛り付ける支配を、現代の高校生らしい感性と視点で見つめ、チート級の魔法でもって不条理の壁を打ち破っていくスト-リーが、この作品の一番の魅力だろう。
もちろん、思春期の高校生らしく凛と太一の気心の知れた幼馴染の恋愛模様の変化も甘酸っぱく、エルフの美少女剣士ミューラや、師匠のレミーア、太一と凛をこの世界に召喚した王女のシャルロットといった美女美少女たちとの出会いやエピソードも見逃せない要素であることも付け加えておこう。
原作小説に加えて、コミック版『異世界チート魔術師』(鈴羅木かりん:漫画、 Nardack:キャラクター原案/KADOKAWA)も第9巻まで発売中。人気も衰え知らずのチート級だ。気になる方は、いまからでもお手に取ってみてはいかがだろうか。
文=愛咲優詩
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