見られ方/富田美憂の「私が私を見つけるまで」⑪
公開日:2021/2/21
仕事を始めてから3年目くらいまでは、アイドルのような可愛い衣装を着て、ニコニコしながら歌って踊ることが苦手でした。
私は「芝居」がやりたいのに。
正直そう思っていました。
アイドル的な要素が求められているのもわかっていました。まだまだ新人なのにそんな我儘言える立場じゃないのも、わかっていました。
私はあくまで声帯を担当している役者です。キャラクターではありません。
もちろん見た目も違う。キャラクターとイコールで見られるのが嫌でした。
「キャラクターはこうなのに、富田はこうだよね」と言われるのが怖かったし、
「富田美憂ってレギュラー作品がそんな多くないのに歌って踊ってばっかりだよね」「だから芝居できないんだよ」「声優じゃないじゃん。」
そう言われてしまうのではないだろうか。
とにかく怖かった。
でもこれは、ただの言い訳と弱音でした。
そう思えたきっかけが「Kleissis」(※)です。
当時私はダンスがまったくできなかったのですが、きっと「ダンスが苦手」ということを言い訳に「私にはできない。向いていない。」と思いたかったのです。
当時はキャラクターの為にできることは「演技」しかないと思っていたけど、
歌も踊りも等しく「芝居」。これが、今の私の持論です。
私は私と出会ってくれたキャラクター達が好きです。これについては以前綴りましたが、
パフォーマンスすることでよりキャラクターが輝くなら。よりキャラクターの魅力が皆さんに伝わるのなら。
全力でやらなければ、キャラクターにも皆さんにも失礼だ。
そう思いました。
その考えに至った瞬間、偏見と勝手な恐怖に怯えていた自分がとてつもなく恥ずかしくなりました。
キャラクターに声を当てることだけが声優の仕事。私がやりたいこと。そう思っていたけど、
苦手を克服し、お客さんの前でパフォーマンスをした時に、パフォーマンスを見て笑顔になってくれる人、泣いてくれる人を見た瞬間に、「報われた」と思った。
「自分もやっていいんだ」「もっとキャラクターを好きになってもらえたはず」そう確信できたからです。
だから今は歌って踊ることも、キャラクターの魅力を引き出す手段のひとつだと思っているし、何より、心から楽しいと思っています。
芝居は極めて当たり前、芝居上手くて歌もダンスも極められたら最強じゃん。って。
だからどっちも本気で頑張るよ。
※「Kleissis」(クレイ・シス)……群像劇RPG『アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実』の世界観から誕生した、声優ボーカルユニット。