人が悩む3種類のテーマとは? “功罪表”をうまく活用すれば、より良い答えが導き出せる!/一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-⑤
公開日:2021/3/5
論理競技で6連覇を果たした著者が、仕事や日常生活の悩みなどを「シンプルな考え方で最良な答えを導き出す方法」で分かりやすくご紹介しています。読み進めていくたびに、あなたに合った「一番いい答え」が見つかりますよ。
悩むことは〝この3種類〟のテーマに限定していい
人が抱える問題や悩みのテーマは大きく3種類ある。
1 事実論題
2 価値論題
3 政策論題
ひとつずつ紹介する。
▼1 事実論題──「あり得るのではないか」を考える
事実論題とは、論理的に考えてあり得るのではないか(あり得たのではないか)と推定するものを論題にすることである。
ということは、トゥールミンモデルに当てはめれば、まさにクレイムに当たるのが、この事実論題である。
たとえば、先の例で挙げた「たんじろうは虫歯になる」は事実論題に該当する。それが論理的に考えてあり得るのか否かを、トゥールミンモデルを使って推定するからである。
他の例で言えば、「サッカーの岡田武史元日本代表監督は偉大な監督であった」とか「小学校でのディベートは教育効果がない」というものだ。
ちなみに、3の政策論題がマクロ的テーマであるなら、この事実論題はミクロ的テーマと言える。
政策論題が総論のやり取りをしているのであれば、事実論題は各論のやり取りであると言える。
あなたの言いたいことを明確にしていくうえで、まず初めに取りかかるべき論題である。
▼2 価値論題──「比較」を考える
価値論題とは、ある価値と、他の異なる価値とを対比させ、比較する論題である。
「人は見かけか、内面(心)か?」といった悩みは、人それぞれの判断基準(価値観)をあらわにさせる興味深いテーマだ。
このようなテーマをひもとくのに、トゥールミンモデルは欠かせない。
▼3 政策論題──「するべきか否か」を考える
政策論題とは、現状の政策や制度の変革についてのプランをめぐって、改革推進派(肯定側)と現状維持派(否定側)が議論を戦わせる論題である。
政策論題は、「日本は憲法改正をすべきである」「日本は首相公選制にすべきである」といったようなテーマはもちろんのこと、日常生活における判断にも応用できる。
たとえば、
「わが社は、週3日テレワークにすべきである」
「私たちの部では、会議にディベートの手法を導入すべきである」
「わが家では、週に4回外食とすべきである」
……など。
これは、「2の価値論題」と同様、解決策をトゥールミンモデルでつくることができる。
このように、私たちが仕事や日常生活で抱える問題や悩みのテーマは、「1 事実論題」「2 価値論題」「3 政策論題」の3分類で整理できる。
功罪表で2方向から「答えの弱さ」をなくす
ディベートの優れたところは、肯定・否定、両サイドの立場で事前準備しなければならない、ということだ。
言い換えれば、賛成も反対も、最初に自分の感覚で決めずに、まずは徹底的にリサーチする必要がある。
というのも、ディベートの試合では肯定側・否定側のサイド決定は、本番の試合直前にくじ引きで決めるのが一般的だからだ。どちらか一方でない所がみそである。
両サイドを見るから、両論を見るから、それぞれの意見の長所・短所が俯瞰的に見える。
また、「相手から攻撃されるだろうな」「主張が弱いだろうな」という箇所も浮き彫りになる。
つまり、両論を知れば、あなたの答えはより強くなるのだ。
アメリカ建国の父で、100ドル札にも描かれているベンジャミン・フランクリンは「功罪表」を提唱した。
これは、ある事柄や政策に関して、PRO(賛成・メリット)とCON(反対・デメリット)の2つに分けて、それぞれの理由を見比べていくものだ。
この方法の最大のメリットは、悩みのテーマを必ず両面から見ることである。つまり、あることをやるべきか、否か、と悩んだ場合、両方の立場になって考えてみることに価値がある。
1 日本の学校は、9月入学にすべきか否か?
2 わが社は、本社を東京から地方に移転すべきか否か?
3 私は、マイホームを買うべきか否か?
1のような政策だけでなく、2のようなビジネス上の課題、3のようなプライベートの問題でさえも、「功罪表」の考え方に従って、メリット・デメリットの両面をあぶり出すことができる。
日々直面している悩みを両面から見ることで、考え方が独善的になるのを回避できるのだ。
また、自分とは反対の考えをあらかじめ考えておくことで、考え方や価値観の違う相手や物事を理解できるようにもなる。
私たちが抱える問題は、多くの場合、他者が関わっている。
このように、功罪表の考え方は2方向から見る思考法である。
これをうまく活用すれば、多角的な考え方ができ、より良い答えを導き出すことができるようになるのだ。