最適解を導き出すのに重要な“トゥールミン・リハ“とは? 百戦無敵の人になれる2つの手順!/一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-⑥

ビジネス

公開日:2021/3/6

論理競技で6連覇を果たした著者が、仕事や日常生活の悩みなどを「シンプルな考え方で最良な答えを導き出す方法」で分かりやすくご紹介しています。読み進めていくたびに、あなたに合った「一番いい答え」が見つかりますよ。

一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-
『一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-』(太田龍樹/ワニブックス)

あなたは賛否のどっち?
――頭がよくなるトゥールミン・リハ

 何度も言うが、トゥールミンモデルを機能させるために、最も重要なポイントは事前準備である。

 そのためには、「トゥールミンモデルをつくる事前準備」を意味する「トゥールミン・リハ(リハーサル)」を実践することをすすめたい。

 このリハーサルをやることで、頭が整理される。手順を紹介するので、実践して、やり方と効果を理解してほしい。

 自分の内側にある考えがあいまいな人ほど、このリハーサルの作業をしていなかったり、おろそかにしているものだ。

 独りよがりであったり、ものをよく考えないのでは、自分の意見を明確にすることなどできない。

 そのために、「トゥールミン・リハ」を知り、練習してもらいたい。

「トゥールミン・リハ」は、トゥールミンモデルを形作るための事前準備であり、チェックリストの役割もある。

 

 あなたが日常で考えなければならないテーマは多岐にわたる。

 身近なことで言えば、

・今住んでいる所から、引っ越すべきか?
・進学するのは、公立がいいか、私立がいいか?
・彼(彼女)とつき合う(結婚する)べきか?
・就職(転職)すべきは、A社かB社かC社か?
・持ち家にすべきか、賃貸住宅にすべきか?
・貯蓄をするなら、定期積立か株式投資か?

 

 また、あなたが会社に勤めていたり、会社の社長だったりする場合には、

・わが社は社員を増やす(減らす)べきか?
・わが社の給与を上げるべきか否か?
・わが社が業務提携すべきは、A社かB社か?
・新規開拓の方法は、テレマーケティングか、それ以外か?

 

 そして、国民として考えなければならない、または政治家としてテーマを実際に討議するテーマ、

・日本は憲法改正すべきか否か?
・日本は法人税を大幅に下げるべきか否か?

 

 など、身近なことから仕事、天下国家に及ぶ政治・経済・文化それぞれの分野に至るまで、あなたが考え、最適解を見つけ出さなければならないテーマは山ほどある。

 どんなテーマの解決策を考えても、そこにはメリットとデメリットがある。そのうえでこそ、最適解を見つけることが大切だ。

 どんな人でも必ず立ち止まって考えねばならない、自分の家族、住環境、仕事、キャリアなどのテーマを、トゥールミンモデルを使って解決してもらいたい。

 

百戦無敵の人になるトゥールミン・リハ2つの手順

 トゥールミン・リハでは、2つの手順を踏む。

【手順1】 情報収集する。
【手順2】 仮説(自分の考えるトゥールミンモデル)を立てて、そのトゥールミンモデルを検証する。

 手順2で、〝仮説〟と書いているのは、本番ではない、まだ事前段階だからだ。

 ここでは「東京に住んでいるわが家は、地方に引っ越しすべきか否か?」というテーマを考えながら、この手順を踏んでみる。

 コロナ禍が収まらない現状、リモートワークは大いに推進されている。同じく、働き方と連動して、住まいのあり方について考えている人が多くなっている。

 たとえば、このテーマをもとに、あなたの主張(クレイム)で自分の家族を説得する設定として考えてみよう。

「トゥールミン・リハ」をやる理由は、両方の意見を前もって理解したうえで、自分の意見を打ち出すことである。

 物事に絶対はなく、今回のテーマでも「大いに引っ越すべきだ」という意見もあれば、「絶対に引っ越すべきではない」という意見もある。

 重要なので繰り返すが、どんなにあなたが「引っ越すべきだ」と考えていても、反対の意見である「引っ越すべきではない」という考えがあるのだと強く理解しておいてほしい。

 物事には多面性がある。

 この鉄則を理解することが、手順1の大いなる目的である。

「彼を知り己を知れば、百戦あやうからず」という孫子の言葉を、手順1の意味に置き換えると、「賛成と反対の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはないくらい、あなたの主張は強固になる」のだ。

 自分の意見の反対意見の状況を知らないで、持論のための情報だけに詳しいのでは、弱いフワフワとした主張になってしまう。

 反対意見も、持論もよくわかっていなければ、あなたの主張は通らない。

 兵法の大家である孫子が言うように、両論のわかる人でなければならない理由がここにある。

<第7回に続く>