インプットなくしてアウトプットなし! 情報収集に必要な「ワード検索」と「本の使い方」/一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-⑦

ビジネス

公開日:2021/3/7

論理競技で6連覇を果たした著者が、仕事や日常生活の悩みなどを「シンプルな考え方で最良な答えを導き出す方法」で分かりやすくご紹介しています。読み進めていくたびに、あなたに合った「一番いい答え」が見つかりますよ。

一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-
『一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-』(太田龍樹/ワニブックス)

手順1でやるべき情報収集の内容

 では、手順の説明に入る。

 手順1は情報収集だ。キレのある、明快な主張をしたければ、まずはじっくりと両論について情報収集しなければならない。

 悩みのテーマに関するさまざまな情報を収集することで、答えを見つけるための引き出しが多くなる。その結果、その引き出しの多さによって、物事の見方が多角的になり、あなたの主張を深い意見に昇華させる。

 深い意見・主張は説得力を持つ。あなたの主張に周りは理解を示してくれるし、うまくいけば納得してくれる。

 

 今回のテーマは「東京に住んでいるわが家は、地方に引っ越しすべきか否か?」だから、次のような情報を集めよう。

・仕事をする際のメリット・デメリットを、今いる東京と地方で考える
・住環境の違いを、家賃や物価、近隣環境を尺度に、比較してみる
・子どもがいる場合は、子どもが受けられる教育環境の特徴を列挙してみる

 その際、ディベーターの情報収集法の部分で述べたように、東京と地方の違いが書かれた書籍をアマゾンや図書館の検索で探し出してみる。私たちのようなディベーターは、最低でも10冊。可能なら、20~30冊の本を読む。

 トゥールミンモデルを使う初心者であるあなたは、まずは異なる主張をしている2冊の本を読んでみてほしい。

 また、東京と地方の違いを特集した新聞のバックナンバーを探してみることも有用だ。できる限り記事にあたってほしい。

 私が問題を解決するときには、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞や夕刊フジといった、すべてのデジタル版を使って、過去の記事を収集する。

 東京の将来、地方の未来も念頭に置いておく必要がある。未来予測的な情報を仕入れることはもちろん、日本に住むのであれば、一極集中が今後どのような展開になるのかにも注視しなければならない。

 引っ越しという身近なテーマでさえも、情報収集が必要であることを強く理解できると思う。

 また、書籍や記事はもちろんのこと、自分の周りにいる移住経験者を探してみる。そのような人がいなければ、いろんな場所で移住者のための説明会を実施しているので聞きに行ってみてもいいだろう。

 ライブに勝るものは、なかなかない。自分の足で探した情報はとても貴重だ。

 直接専門家から話を聞くことは難しいかもしれないが、できる限りやってみてほしい。

 

そもそも情報収集とは何なのか?

 情報収集とは、言い換えると、以下のような作業である。

1 独善的な「思い」や「思い込み」ではなく、あるがままの事実だけを真摯に見つめること。
2 一面ではなく多面、さまざまな観点から物事を見つめること。

 私の場合は、テーマを見たら、まず今までの知識・経験を駆使して両方の側の肝である「本質」を考える。

「本質」とは、今回のテーマで言えば、「どうして地方に引っ越しすべきなのか?」、「どうして地方に引っ越しすべきではないのか?」という核となる理由を考えることである。

 これが、トゥールミンモデルをつくる際にも大きな武器となる。

 あなたにある程度、テーマに関する知識があれば、自分の考えに基づいて、賛成側や反対側といった両論のプロット(筋)を練ってみてほしい。

 そのうえで、それが間違っていないかのチェック機能として、また、検証のため、事実の情報収集をしてほしい。

 

 ただ、この本を読んでいる人は、考えがまだ漠然としていることが多いと思う。

 最適解を導く専門知識や背景がない場合、アイデアがわかないのは当然のことである。言葉がなければ、知識がなければ、考えやアイデアを整理することなど到底できない。

 逆に言えば、専門知識や背景などの言葉や知識をわかっていれば、アイデアは生まれてくる。言葉をインプットさえすればいいだけだから「アイデアが生まれないのでは」という心配は無用だ。

 インプットなくして、アウトプットなし。

 考えが漠然としていることに悩むことはない。アイデアが生まれないことに落胆することはない。ただ、情報を仕入れればいいのだ。

 

情報の理解を深める「ワード検索」と「本の使い方」

 話を元に戻す。テーマは「東京に住んでいるわが家は、地方に引っ越しすべきか否か?」だ。

 そこで、「地方 移住」というキーワードの元、それにまつわる書籍を探し出してみる。新聞の記事検索をしてみる。グーグル検索をしてみれば、数多くの実情に触れることができる。

 テーマに関わる入門書なら、時間が許す限り、自分が当たれるだけ本を読むべきだ。読めば、知識が上塗りされ、理解が増してくる。

 たとえば、同じ著者が書いているものであれば、年々アップデートを加えているはずである。ゆえに、そのテーマに関する情報の移り変わりをつかむことができる。

 また、入門書でも違う著者が書いた本を読めば、テーマによって人それぞれの見解の相違を見て取れる。それこそ、両論を考える情報収集にはもってこいである。

 

 ここで私が書いている方法は、極意である。論理競技であるディベートを行なうプロの方法だ。多くの人は知らないし、やらないアプローチである。だからこそ、私は価値のある情報収集法だと考えている。

 多くの人がやらない理由はいくつもある。たとえば、現代日本では、さまざまなテーマの書籍が世の中にあふれすぎて、何に当たったらよいかわからなかったり、探し出せずに途方に暮れてしまっていることが考えられる。忙しい、面倒くさいという理由もあるだろう。

 それ以上に、本離れの世の中で、スマホの使用に時間を注ぐようになり、本そのものを読まない人が昔より断然増えていることも大きな理由であると考えられる。

 確かに、私たちディベーターがやっているように、30冊ほどの本にアプローチしなければならないのは、人々の心理的ハードルを高めるかもしれない。

 とは言っても、同じテーマの本であれば書いていることは似通っている。そのため、数冊の本を読むと、その後、読む本はかなり速く読めるものなのだ。

 読み進めて、内容に違いがあれば、違う文脈・意味・見解をズームアップする。

 そこを浮き彫りにすることで、意見の違いが理解され、そのテーマの本質=「どうして、そう言えるのか?」という点に、一層たどりつけるようになる。

 

 25年前、私が学生の頃はディベートで勝つために大きな書店に行って、関連図書を探した。図書館に行って本を探すのはもちろんのこと、新聞の縮刷版で過去の記事に当たった。

 しかし、私が学生時代に足で取りに行った情報は、今ではほぼすべてネットで収集できる。情報を取りに行くのにとても楽な時代なのだ。やらない手はない。

「急がば回れ」「ローマは1日にして成らず」、これらの格言が示すように、何もしなければあなたの思考力は一向に進化しない。情報を探す労力を惜しんだら、良いアイデア、最適解は生まれるわけがない。

 情報を収集する量はあなた次第だが、量が少ないとしてもこの方法を愚直に淡々と実践することが、トゥールミンモデル上達のための近道なのである。

<第8回に続く>