あなたの主張を強めるために重要なのは仮説! 仮説を3つの観点からチェックしよう/一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-⑧

ビジネス

公開日:2021/3/8

論理競技で6連覇を果たした著者が、仕事や日常生活の悩みなどを「シンプルな考え方で最良な答えを導き出す方法」で分かりやすくご紹介しています。読み進めていくたびに、あなたに合った「一番いい答え」が見つかりますよ。

一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-
『一番いい答え-絶対後悔しない最適解の見つけ方-』(太田龍樹/ワニブックス)

手順2でやるべき仮説「作成法」と「検証法」

 情報収集は、いわばエビデンス(証拠)集めである。それら一つひとつのブロック(エビデンス)を取捨選択しながら、建物(自分の主張)を建設しなければならない。

 自分の主張を強めていくためには、仮説を用意する必要がある。

 改めて、仮説とは何か?

 たとえば、自分の主張をAとし、情報収集から出てきたエビデンスをBやCとしよう。Aという主張をするために、BやCがエビデンスになる、とあなたは考え、それらを用意した。

 これは、「Aという結論から逆算して、BやCがエビデンスとなりうるのでは?」と仮説を立てたことになる。つまり、これが仮説である。

 私はとてもこの作業が大事だと考えている。

 それは、Aという主張がどんなに破天荒で、一見実現不可能に思えたとしても、それを支えるデータがありさえすれば、説得力のある主張ができるようになるからだ。

 ひいては、そのアイデアが現実となって、最適解となり、あなたの理想の状態をつくり出す。

「月に行く」「ウイルスは撲滅できる」といった結論から仮説を立てることで、人類はここまで進化してきたのだ。

 

 さて、仮説の重要性がわかったところで、その仮説が主張するに値するかのチェックが必要になる。

 その際、次の3点に照らして、仮説を客観的にチェックしてほしい。

 

より現実的な仮説をつくる3つのチェックリスト

①あなたの言いたい主張は何か?
②主張を支えるデータは何か?
③果たして、そのデータは本当にそう主張できるのか?

 ①と②はわかりやすいが、このチェックリストで説明を要するのは、とりわけ③である。たとえば、

A わが社は東証マザーズに上場すべきである。
B 世の中に、わが社のようなサービスを提供している企業がないから。

 詳しくは書けないが、この話は私の周りで実際にあった事実を基にしている。

 あなたがこの会社の経営者もしくは経営幹部とする。上場することで、社会の公器になる。また、社員のストックオプション制度などの福利厚生の充実により、社員のモチベーション向上にもつながる。だから、上場したいという夢があったとしよう。

 そのために、わが社が上場するための武器・切り札・特徴を、東証マザーズの上場基準に従って考える必要がある。

 東証マザーズが求めている基準は、ズバリ成長性である。豊かな将来を見通せる成長ストーリーを示す必要がある。

 だから、Bのような競争相手がいないという事実(データ)を打ち出した。

 そこで、データ→主張、が成立するか、2つのチェックを実行してみる。

 

▼「データに主張を生み出すだけの能力があるか」をチェック

 これは、そのデータに主張という名の結果を生み出すことが可能であるのかを検証することである。この例に沿って考えてみる。

「世の中にないサービスを提供する企業」だから「東証マザーズに上場すべき」の図式を考えるにあたって、過去に同業他社がいない、独自のサービスで上場した会社をできるだけリストアップできれば、このデータが証拠足りうるかが検証できる。

 また、万が一そのような独自の会社が過去あまりなかったとしよう。その場合、マザーズの基準である〝成長性〟にフォーカスすればいい。

 そこで、説明が必要なのが③である。今までは、主張→データという、いわば逆算の形で、仮説をつくった。

 しかし、それだけでは、その仮説が仮説の域を出ない。より現実的な仮説にするためには、それに耐えうる論理展開を検証する必要がある。

 つまり、データ→主張、これを導けるかどうかが重要になる。

 この点をしっかりと考えてほしい。

 

▼「データは主張に対して必要かつ十分か」をチェック

 このデータが主張に対する必要条件であっても、十分条件でないことがある。詳しく説明しよう。たとえば、

 

 ゴルフの知識がなければ、生徒に教えることはできない。

 では、ゴルフの知識があれば、必ずインストラクターになれるかといったら、そうは問屋が下ろさない。

 インストラクターになるには、生徒を教えるための教則を学んだり、実際に実践経験がないとなれないからだ。

 

「インストラクターである」→「ゴルフの知識がある」

 とは言えるが、

「ゴルフの知識がある」→「インストラクターである」

 とは必ずしも言えないということである。

 

 これは論理用語では、

「インストラクターであるには、ゴルフの知識は必要条件である」

 となる。

 ゴルフの知識・教則を学んでいること・ゴルフの実践経験があること、すべてを合わせて、インストラクターである十分条件という。

 

 では、ここでの上場の例に沿って考えてみる。

「世の中にないサービスを提供する企業」を〝成長性がある企業〟と言い換えるとわかりやすい。

 

「マザーズに上場するには、成長企業であることは必要条件である。

 では、マザーズに上場する十分条件は、と考えると、財務状況がよい、コンプライアンスが徹底している、社員に対する雇用環境が整っているなど、細かいが、しかし重要な条件を満たさねばならない」

 

 ということは、単に成長企業という条件だけでは、上場するための完全な条件ではないことがわかる。

 この「世の中にないサービスを提供する企業」だけで主張はもちろんできるのだが、十分条件にならず、説得力はやや弱いことがわかる。

 これこそ、③果たして、そのデータは本当に主張できるのか? というポイントの難所である。

 

 仮説を3つの観点からチェックをすることで、筋の良い仮説は出来上がる。

 トゥールミンモデルを実践して最適解を見つけ出すには、事前の下準備が必要である。

 それは、仮説をつくるための情報収集であったり、思考法を知ることだ。

 しっかりと下準備を行なうことで、トゥールミンモデルを基とした最適解は見つけられる。ぜひ、この下準備を入念に行なってほしい。

<続きは本書でお楽しみください>