ウマくて理にかなっているリケジョのお夜食マンガ!『研究棟の真夜中ごはん』/マンガPOP横丁㊾

マンガ

公開日:2021/3/5

『研究棟の真夜中ごはん』(神岡鳥乃:原作、夏河もか:漫画/ホビージャパン)
『研究棟の真夜中ごはん』(神岡鳥乃:原作、夏河もか:漫画/ホビージャパン)

「料理は足し算」という言葉を聞くが、これは主に西洋料理で言われているようで、素材そのままの味を生かす日本料理はむしろ「引き算の料理」と言われているそうだ。知らなかった。料理は和洋中関係なく、味を足していって美味しくしていくものだと思っていた(日本料理にもそういうものはあるのかもしれないが)。

 ということで、料理というのはかなり理系の要素でできている。そしてそれは単純に足し引きだけで成立していないことを、料理に関してほぼ無知な私はりまはこの作品に出会うまで思っていなかった。特に「なぜここでこの材料を加えるのか?」「どうして煮物は調理後少し冷ますのか?」など調理法に実はちゃんと理系的な理由があるということが知れ、なるほどと感心の連続。

 今回は、そんな料理の素朴な調理法の疑問を丁寧に、そして理系の観点で教えてくれる2人の理系女子(リケジョ)による夜食料理マンガ、『研究棟の真夜中ごはん』(神岡鳥乃:原作、夏河もか:漫画/ホビージャパン)をご紹介!

 塔山うららは、ふと疑問に思ったことはトコトン追求してしまう性格の持ち主。それは、結果的に博士課程へ進学しちゃうほど。今は研究で昼夜逆転の生活が当たり前になっている農理学部の女子大学院生だ。そんな夜遅くまで研究に努める彼女に、所属研究室の教授から深夜の研究棟に不審者が現れたという情報を知らされる。その特徴は、長い黒髪の白装束を着た女で、右手には刃物を持っているという。もしかしたら霊という可能性も……。さすがにそれは冗談、とうららは一蹴する。

 教授の帰った深夜、うららは夜食の準備で1人暗い研究棟を歩く。すると突然、包丁を持った長い黒髪の白装束の女の幽霊が目の前に! 気づいた時は、休憩室の畳の上で寝ていた。すると、うららの顔を覗くようにして幽霊が……と思いきや、その正体は白装束ではなく割烹着を着た、同じ研究棟で学ぶ鳥見川氷彗(とみかわひすい)という、入学間もない1年生の女子大学院生だった。そんな氷彗は休憩室のキッチンを使って夜食を作ろうとしていた。実は氷彗は毎日ここで夜食を作っては食べていたという。お互いの自己紹介が終わると、氷彗から夜食に誘われるという嬉しいハプニング。そして氷彗はいよいよ調理へと取り掛かるのであった。

 一緒に食べる夜食の記念すべき初日のメニューはハンバーグ。手際良く調理をする氷彗の横でその様子を見守るうららは、ハンバーグの材料を見て「どうしてパン粉入れるんだろ……」と小声で呟いた瞬間、氷彗の目が光ってキャラが豹変! それぞれの材料の性質と理由を、理系の視点で熱くわかりやすく説明する氷彗がそこにいた。その後もうららがハンバーグの材料に関する疑問を投げれば氷彗が的確に回答し、うららの中でモヤモヤしていた謎が解明されていく。そんなやり取りをしていくうちにハンバーグは完成し、2人の夜食タイムへ。ハンバーグの味は文句なしの美味しさ。うららはあっという間に平らげる。うららはこれからも氷彗と一緒に夜食したいと打ち明け、これを機に楽しい美味しい夜食ライフが始まるのであった。さて、次回のメニューは?

 他のグルメ漫画とは違って、レシピとリケジョならではの“知識の調味料”を知れるのだから一石二鳥のお得なグルメ漫画と言っても過言ではない。たとえ珍料理であっても。それが何かはぜひ本編で確認すべし。そしてさらに、なんといっても夜食を通じて育む、うららと氷彗の友情の物語が微笑ましすぎて読み手の口角が緩む緩む。うららの美味しい夜食が食べられる大学院生活の幸せ、そして氷彗にとってうららという友達ができたことの幸せ。お互いが噛みしめる幸せもしっかり味わっていただきたい。

 我々は氷彗の作った料理を実際に食べることはできないけど、知識と心が満たされる“読むお夜食”、いかがでしょう?

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう