テレワークを快適に! 疲れにくい机と椅子の高さは? 整形外科医が教える肩こり&腰痛を解消する方法

健康・美容

公開日:2021/3/13

 コロナ禍で増えた在宅勤務。家の中での仕事は、会社での仕事よりもストレスが少ないのかと思いきや、「在宅勤務を始めてから肩こりや腰痛が悪化してしまった」と悩んでいる人も少なくはありません。どうして会社で働くよりも家で働く方が肩や腰に不調をきたしやすいのでしょうか。かわかみ整形外科クリニック川上洋平先生に在宅勤務における肩こり・腰痛の解消法についてお話を伺いました。

――在宅勤務により、肩こりや腰痛に悩まされている人が増えているようです。どうして家で仕事をすると、肩や腰に不調をきたしやすいのでしょうか。

 私のクリニックでも、在宅勤務で肩こりや腰痛を訴えられる患者さまが増えています。オフィスとは異なる環境で長時間慣れない姿勢をとることや出社しないことによる運動不足によるものと考えられます。オンオフの切り替えが難しかったり、生活リズムが不規則になることも原因といえるでしょう。

 オフィスは、長時間仕事しても疲れにくいように環境が整っていますが、自宅は生活をする場ですので、仕事をする環境が整っていません。ワークスペースにできる空間が限られた自宅では、例えば、作業用のデスクがなく、ダイニングテーブルで仕事をしていたり、ソファとローテーブルしかなく、床座りで作業せざるを得なかったり、PCを置けるようなテーブルや椅子もない方は、ベッドの上で仕事をこなしているということもあるでしょう。こういった、仕事を行う場として環境が整っていない自宅での無理な姿勢で長時間座りっぱなしのデスクワークが続くと、肩や腰をより悪化させてしまいます。

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――では、家でも仕事がしやすいように環境を整えるにはどうしたら良いのでしょうか。

 肩こり・腰痛予防のために特に大切なのは、正しい姿勢を保つこと。例えば、猫背や前かがみなどの姿勢で長時間作業する人は、上半身の血行が滞るため、肩こりに悩まされがちです。また、悪い姿勢を続けると、腰にも負担がかかり、背骨のS字カーブを崩してしまいます。このような無理な姿勢をとらないようにするためには、机と椅子の高さや位置関係を見直すことが必要です。机と椅子は高さを調節できるものにするのが望ましいですね。

 まずは椅子の高さ。椅子に深く腰掛け、背筋をまっすぐ伸ばした時、膝の角度が90度になるようにし、足裏全体が床に着くようにしましょう。仕事中も足を組まないようにしましょう。この状態が保てるように椅子の高さを調節してみてください。肩や腕への負担を減らすためには、傾きを調整できる背もたれや肘かけのある椅子がオススメです。続いて、机の高さをみていきましょう。椅子に座った状態でキーボードに手を置き、肘の角度が90度になるのが体に負担のかかりにくいデスクワークの姿勢です。ディスプレイは上端が目より少し下になる高さにし、画面から目を40cm程度離すように、机の高さ・位置も調節してみてください。長く座っても疲れにくい椅子や、腰痛防止のクッションなどを用意する事も大切です。自分に合った高さに椅子と机を調節するだけでも肩こり・腰痛を予防することができます。

参考:厚生労働省|https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01603.html

――環境を整えた上で、さらに肩こり・腰痛を予防するための方法はありますか。

 大切なのは、同じ姿勢を長時間続けないことです。特に、長時間座りっぱなしの姿勢は、腰に負担がかかる状態。30分に1回は、肩や腰を回すなどして、体の緊張を和らげるようにしましょう。さらに、肩こり・腰痛それぞれにオススメしたいストレッチ・トレーニングがありますので、ぜひ実践してみてください。

肩こり解消のためのトレーニング

 筋肉疲労や血行不良による肩こりを解消するには、肩周りの筋肉をほぐす「肩甲骨はがし」が有効です。特に、肩甲骨の動きが悪い人は肩こりを悪化させがちです。肩甲骨を肋骨からはがすようなイメージで動かし、肩甲骨周辺の筋肉をほぐすようにしましょう。

「肩甲骨はがし」
1)まずは、両ひじを曲げて肩より上に上げます。腕が上がらない人は無理のない範囲で行ってください。肘をできるだけ下げずにするのがコツです。
2)手を軽く握って鎖骨に置きましょう。
3)その状態から、5秒かけて息を吸いながら両ひじをゆっくりと後ろに引いていきましょう。この時、肩甲骨をギュッと寄せていくことを意識してみてください。
3)最後に肩甲骨を寄せたままゆっくりとひじを下げ、脱力させましょう。

 肩こり予防には、この「肩甲骨はがし」を朝と夜に5回ずつ行うとよいです。デスクワークの合間にも行うのもオススメです。

腰痛解消のためのトレーニング

 腰痛防止のトレーニングもとても簡単。まずは、うつぶせに寝てみましょう。両肘をついて5〜10cm上半身をゆっくり持ち上げるようにして、5〜10秒キープ、そして休みます。このトレーニングを1回3セット、つらくない程度に続けてみてください。慣れてきたら腕を伸ばして上半身をさらにそらしても効果的です。ゆっくり痛くならない程度に行って下さい。背筋やおしりの筋肉を鍛えることで、腰痛を予防することができます。

――肩こり・腰痛の原因には入浴も有効なのでしょうか。より効果的な入浴の方法があれば教えてください。

 肩こり・腰痛は、入浴時に湯船にしっかり浸かって血行をよくすることで、症状を和らげることが可能です。湯船の適温は38〜40度で、10分以上浸かるようにしてください。お風呂には、水圧による血流促進や、温熱によって自律神経を整える効果があるので、脳や体をリラックスさせてくれます。疲労を感じている時は、寝る90分前に入浴することで、睡眠の質を高めることにもつながるそうです。

 また、交互浴とよばれている方法もおすすめです。40〜42度の湯船に浸かった後、17〜20度の冷たいシャワーを浴びます。これを繰り返すと、血行を改善する効果があります。

 入浴すると血流がよくなり、体の芯から末端まで温まり、凝り固まった筋肉がじんわりとほぐれていきます。忙しいとつい簡単にシャワーで済ませてしまいがちですが、疲労回復のためにも湯船に浸かる習慣をつけてください。

 肩こりや腰痛はかなりやっかいなものですが、ご紹介した解消法や予防法で軽減できます。ただし、ひどい肩こりや腰痛が続く場合は、病気が原因の可能性も。ひどい痛みが続くようでしたら、必ず病院を受診するようにしてください。

取材・文=アサトーミナミ