災害対策は過去の歴史に学ぶ! マンガで知る地震・津波に対する教訓と心がまえ

暮らし

公開日:2021/3/29

マンガでわかる 災害の日本史
『マンガでわかる 災害の日本史』(磯田道史:著、河田惠昭:防災監修、備前やすのり:マンガ/池田書店)

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災から、今年で10年が経過した。地震と共に大津波による甚大な被害を受けた東北地方ではいまだ復興が進められているなど、多くの人たちにとって、当時のさまざまな経験は忘れられないものとなっているはずだ。

 災害は、いつ誰の身にふりかかるか分からない。だからこそ、過去の歴史に学び未来に備える必要もある。書籍『マンガでわかる 災害の日本史』(磯田道史:著、河田惠昭:防災監修、備前やすのり:マンガ/池田書店)は、災害史の研究をライフワークとする著者が綴った1冊である。

将来のためにマンガで分かりやすく子どもたちへ

 世界的にも自然災害が多いといわれる日本の災害史をまとめた本書。著者の磯田道史さんは、映画化された『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮社)など、多くのベストセラーを持つ作家・歴史学者だ。

 そして、著書の執筆に注力する一方で、磯田さんのライフワークとなっているのが古くからの災害史の研究である。

 本稿で、取り上げる『マンガでわかる 災害の日本史』はその根底にある思いが詰まった本。磯田さんは出版を記念したトークイベントで「防災に関する情報は、子どもが知っているべきだからです。子どもから知らせるのが、一番、将来にわたって、減災効果が大きいからです」と、マンガで分かりやすく災害について学べる本書の背景を語っていた。

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主人公たちと共にタイムスリップしながら学ぶ

 本書のマンガパートは、ストーリー仕立てで進んでいく。主人公は、歴史が大好きな小学6年生・ミチくんだ。担任の頼母先生と幼なじみの同級生・マリちゃんと訪れた上野公園で、その場に立っていられないほどの大地震に見舞われた彼らは、過去の日本へとタイムスリップすることになる。

マンガでわかる 災害の日本史 p.20

マンガでわかる 災害の日本史 p.21

 歴史をさかのぼってしまった彼らを案内するのは、歴史の偉人・西郷隆盛の愛犬であったツンだ。1855年(安政2)年の江戸・上野へタイムスリップした彼らは、当時の10月2日22時頃に発生したといわれる直下型の「安政江戸地震」に直面する。

マンガでわかる 災害の日本史 p.36

マンガでわかる 災害の日本史 p.37

 地震だけではなく、江戸市街地の「1.5〜2.2平方キロメートル」が焼失したという安政江戸地震では「1万4000戸超」の家屋が倒壊する被害もあった。

マンガでわかる 災害の日本史 p.44

マンガでわかる 災害の日本史 p.45

 主人公・ミチたちは当時の現場で、崩れかけた家屋から母親を救おうとした水戸藩士の儒学者・藤田東湖が亡くなるのを前にして、地震のときに自分たちがどう動くべきか、身をもって知ることになった。

津波避難の鉄則「てんでんこ」を知る

 1896(明治29)年6月15日の東北地方・三陸海岸に、本書の主人公・ミチたちはタイムスリップしていた。

マンガでわかる 災害の日本史 p.84

マンガでわかる 災害の日本史 p.85

 海岸におおぜいの人びとがいる中で、彼らが耳にしたのは海の沖から聴こえる「ゴゴゴゴ…」という音。しかし、担任の頼母先生が「津波よ! みんなにげて!」と叫んでまもなく、陸地へとたどり着いた津波は、あらゆる建物や人びとを飲み込んでいった。

マンガでわかる 災害の日本史 p.86

マンガでわかる 災害の日本史 p.87

 東日本大震災でも多くの被害をもたらした津波は、その大きさが、陸地で体感する震度に比例するとは限らないと学ぶ。そして、彼らはツンから津波避難の鉄則「てんでんこ」という言葉を聞かされる。

マンガでわかる 災害の日本史 p.88

マンガでわかる 災害の日本史 p.89

 てんでんことは、東北の言葉で「それぞれでにげろ」という意味。津波が来ると分かったら、行政の指示も待たずにそれぞれの判断でとにかく高所へ逃げる。とにかく「生きていれば会える」と信じることや、家族や大切な人たちと、津波が起きたときにどうすればよいかを前もって話し合う大切さを、彼らは読者へと伝える。

 過去の人びとが「災害に直面してどのように避難し、命を守ったのか」からは、学ぶべきことがたくさんあると著者は述べる。本書をたよりに、自分自身の防災意識もぜひ見直してみてほしい。

文=カネコシュウヘイ