福島の復興に携わった100人の“生の声”──「東日本大震災」以降の10年をインタビューと共に振り返る

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公開日:2021/3/27

福島 環境再生100人の記憶
『福島 環境再生100人の記憶』(編著:環境省 環境再生・資源循環局)

 「東日本大震災」及び「東京電力福島第一原子力発電所事故」が起きた日から、10年が経過した。福島では今も復興に向けた取り組みが続いており、震災の記憶は決して過去のものとなってはいない。そんな中、福島の現状や復興に向けた取り組みを紹介した『福島 環境再生100人の記憶』が、2021年3月11日(木)に発行された。

 環境省では「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』」をテーマに掲げ、10年間の環境再生事業を振り返るとともに、未来志向の環境施策への理解を促す取り組みを行ってきた。同書はその一環として発行されたもので、全国の公立図書館及び福島県内のすべての小学校・中学校・高等学校・大学に寄贈される予定。さらに3月9日(火)より環境省のウェブサイトにて、全ページが無料公開されている。

『福島 環境再生100人の記憶』無料公開ページ

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 書籍内では、さまざまな分野に携わる人々に取材を行い、震災の苦難や復興に向けた新たな挑戦、未来に対する思いなどを紹介。また復興が進む福島の姿や、今なお残る避難指示区域の存在や風評被害の現状といった課題についても伝えてくれる。

 書籍の構成は大まかに2つのパートに分かれており、「記憶編」では福島の復興に携わった老若男女100人(組)の声を掲載。除染や特定廃棄物の処分などの環境再生分野に加え、農業・漁業・林業・飲食店・旅館・食品メーカー・まちづくり・教育・震災孤児・遺児支援・子育て支援といった幅広い分野の人々にインタビューを行っている。当事者たちの声に触れることで、苦難や努力、そこから導き出した教訓などを学べるはずだ。

 また「資料編」は、資料やデータから福島の環境再生の“これまで”と“これから”を辿っていく内容に。東日本大震災の発生から現在に至るまでの環境再生事業の歩みが、資料やデータ、事業担当者のコラムとともに紹介されている。その他にも除染や中間貯蔵、特定廃棄物の処理といった環境再生に向けた取り組みや、環境の観点から地域の強みを創造、再発見する「福島再生・未来志向プロジェクト」なども伝えていく。

 環境省では平成24年1月から土壌等の除染や汚染廃棄物の処理など、福島の環境再生に取り組んでおり、平成30年3月には帰還困難区域を除く地域で除染が完了した。福島県内では道路・鉄道などのインフラ復旧も進み、避難指示も順次解除されている状態で、原子力災害からの復興がスタートしている。また帰還困難区域においても、新たなまちづくりを目指した特定復興再生拠点の整備が進められている状況だ。その一方、住民の帰還が道半ばであることや、除染廃棄物などの県外最終処分など、復興に向けた課題も数多く残っている。

 震災の被害から完全な復興を遂げることは、簡単ではない。だからこそ多くの人が関心をもち、身近な問題として取り組んでいくことが重要となる。同書を読んで、あらためてこの“難問”と向き合ってみてほしい。