怒涛の9カ月連続放送! 今の『転スラ』を見逃すな!②――『転生したらスライムだった件』ラインプロデューサー・坂本大地インタビュー
公開日:2021/3/29
スライムに転生してしまったサラリーマンが始める新しい異世界ライフ! 主人公リムルは彼を慕い集った数多の魔物たちと<ジュラ・テンペスト連邦国>を建国し、「人間と魔物が共に歩ける国」というやさしい理想を形にしつつあった。だが、この世界には、魔物に対して敵意を向ける存在がいた――。
『転生したらスライムだった件』は、著者の伏瀬が小説投稿サイト「小説家になろう」で連載し、人気を集めた作品。川上泰樹によるマンガ版が執筆され、そのマンガ版をベースにアニメ化が行われた。アニメの第1期は2018年10月からスタート。第2期は2021年1月から放送を開始している。また、4月からはスピンオフ作品『転生したらスライムだった件 転スラ日記』のアニメ版を放送開始。その後、第2期の後半戦が放送を予定している。
このシリーズでアニメーション制作を担当しているスタジオが、エイトビットだ。彼らは登山ブームを生み出した『ヤマノススメ』や、人気シリーズ最新作『魔法科高校の劣等生 来訪者編』を手掛けた制作スタジオで、アニメ『転生したらスライムだった件』を第1期から制作し、『転スラ日記』のアニメ化も担当。第2期においてもその力を存分に振るっている。今回は第2期のラインプロデューサーを務める坂本大地氏に、『転スラ』第2期の制作現場の様子を聞いた。
「『転スラ』が好きだからやらせてほしい」と、会社にお願いしました
――原作『転生したらスライムだった件(以下、転スラ)』をお読みになって、坂本さんはどんな感想をお持ちでしたか。
坂本:僕はこの作品が好きで、「小説家になろう」で読んでいたんです。いつかこの作品のアニメに関われたら良いなと思っていたところ、偶然にも今の会社(アニメーション制作会社・エイトビット)に入れたという感じでして……。
――そうなんですね。『転スラ』のどんなところがお好きだったんですか。
坂本:リムルや仲間たちが街と一緒に大きく成長と進化していく部分が特に大好きです。仲間たちも魅力的なキャラクターが多く、新たに仲間が増えていくたびにワクワクしておりました。
――ラインプロデューサー(第1期は制作デスク)になったのは、やはり『転スラ』がお好きだったから?
坂本:そうですね。「『転スラ』が好きだからやらせてほしい」と、会社にお願いしました。
――エイトビットさんは第1期から『転生したらスライムだった件』を制作しています。現場として『転スラ』をどのようなアニメーション、作品にしようとお考えでしたか。
坂本:今回の原作であるコミカライズ版がすごくよくできているですよね。ただ、コミックは静止画なのでアクションを描くところが少なくなります。そこで、映像ならではの差別化として、自由度の高いアクションシーンやエフェクトをふくらませていくことができれば良いなと思い、現場の座組(スタッフィング)を考えていきました。
よりカッコよく、より激しくアクション、エフェクトを描けるスタッフを集めています
――第1期のときは、実力派アニメーターの方々がオープニング、エンディング、本編をひとりで原画を描かれていたり、かなり意欲的なスタッフィングでした(OP・EDは絵コンテ、演出、作画を江畑諒真がひとりで担当、第1話、第7話は米澤優がひとりで原画、作画監督を担当)。『転スラ』の制作現場はどんな現場ですか。
坂本:当時は、アクションを自由自在に描ける方を現場に集めていたところがあったと思います。第2期は『転スラ』を長期作品にしていきたい事も考え若手スタッフを中心に集めようと、新たにいろいろな方々にお声がけをしました。第2期はより大規模な戦闘も増えているので、よりカッコよく、より激しくアクション、エフェクトを描ける人を、なるべく若手の中から集めています。
――第2期は若手スタッフを起用しよう、という意識があるんですね。
坂本:そうなんです。第1期は総作画監督を含めて、ベテランの方が多く、安定感がありました。今回は若手をガンガン起用して、どこまでやれるか挑戦してみようと。実際に制作を進めてみて、手ごたえを感じつつも、ベテランにはやっぱり敵わないなと感じるところもありますね。
――『転スラ』は、菊地康仁(第1期)監督から、第1期で副監督(第1話演出も)を務めていた中山敦史監督に交代されています。中山監督のお仕事ぶりはいかがでしょうか。
坂本:第1期は菊地監督を中心にかなりスピード感のある描き方をしていたんです。第2期は中山監督になり、キャラクターの表情などへの調整も増えて、バランス型の作品になったと思います。特に第2期は、各話ラストの引きが強くなりましたね。「え、そこで今回は終わるの?」と思わせる作りになっていて。そこが第1期と第2期の明確な違いと言えるかもしれません。「次の話を観たい」と思わせるテイストが視聴者にも伝わっているかな、と感じています。
――第1期と第2期では異世界に転生した主人公リムルの立ち位置も変わり、戦いの規模が変わります。第2期ではどのような部分を描いていこうとお考えでしたか。
坂本:第2期はリムルのスライム以外の要素がたくさん観られる展開になっていると思います。第2期第2部では第1期のような楽しいリムルも見せられたら良いなと思っています。
「え? そこまでやるの?」と思った『転スラ日記』
――第2期第1部のあとは、『転スラ日記』のオンエアが始まります。こちらはどんな作品になりそうですか。
坂本:『転スラ日記』はテンペスト(ジュラ・テンペスト連邦国)の日常シーンが中心で、キャラクターや料理などがたっぷりと描かれているんです。僕は『転スラ』本編を担当しているので、『転スラ日記』は別のラインで制作を進めているんですが、「え、そこまでやるの?」と。そこを深堀しなくてもいいんじゃないかな? というところまで『転スラ日記』では描いていて。アニメ制作においての取捨選択として僕ら(『転スラ』本編)があえて触れていなかったところまで、けっこうしっかりと見せています。そこはきっと『転スラ』ファンには見どころじゃないかと楽しみにしています。
――坂本ラインプロデューサーのお仕事で大事にしていることは何でしょうか。
坂本:やっぱり関わっている作品は、面白いと思われたいんですよね。そのためにも、視聴者のみなさんが抱いている意見を積極的に集めて、スタッフに伝えたり、作品に取り入れたりしています。「みんなはこういうふうに観ているよ」とか、「狙い通りの反応になったね」とか、そういうサジェストを積極的にするようにしていますね。
――じゃあ、坂本ラインプロデューサーは、オンエア後の反響はチェックされているんですか?
坂本:そうですね。気になってしまうので、反響はチェックしてしまいます。幸福なことに、『転スラ』は多くの方に楽しんでいただいている作品なので、いろんな反響があるんです。もちろん良い意見だけでなく批判もあるのですが、そういったネガティブなものも含めてチェックしていますね。SNS等の実況や感想を見てみたりして、「ああ、こういうふうに言われるのか」と納得したり、「ああ、ここはウケるんだな」とほっとしたりして、とても勉強になっています。反響が大きい作品であることは、参加してくれているスタッフにも意識してもらいつつ、委縮せずに頑張っていこうと伝えています。
――印象に残っている反響はありましたか?
坂本:僕にとっては第32話の反響が印象に残っています。第32話はシオンの悲劇を描いているので、本来は「悲壮感だけで構成する」というのが普通の作り方だと思うんです。でも、『転スラ』はあまりシリアスな展開を深く掘り下げるタイプの作品ではないと感じていて。視聴者層的にも、そういう作品とは違うファンの方が多いという考えもありました。そこで第32話の中盤から、希望を感じさせる展開になっているんです。それが上手くハマったのかなと思いましたね。
――たしかに、これまでリムルの秘書的な立場だったヒロインのひとりシオンが第32話で悲しい運命をたどるというのは衝撃的でしたね。
坂本:そうですよね。でも、すぐにそこから抜け出す糸口が見つかってしまうので、「ご都合主義じゃないか?」とツッコまれてしまう意見があるんじゃないかと、放送される前はかなり不安でした。でも結果的に、『転スラ』としての良いバランスを見つけられたかな、と感じました。
――第2期第2部は、戦争状態に突入しますね。
坂本:そうですね。ここはベテランと若手の力をうまく融合させることができたらと思っています。イキなキャラクターたちも後半はどんどん出てくるので、そこもしっかりと見せていきたいなと思っています。
――第2期第2部は、いよいよ魔王になったリムルが描かれます。現場から、観てほしいところなどがあればお聞かせください。
坂本:やはり第2期第1部の最後に登場したキャラクターを楽しみにしていただきたいです。そのキャラクターと魔王たち、そしてやっと出てくる妖精女王の魔王ラミリス。新しい章が始まるということで、第1期に出てきたメンバーも勢ぞろいします。そのキャラクターたちと魔王になったリムルがどんなやりとりをしていくか、どう描かれていくのかを楽しみにしていただきたいです。
――登場キャラクターの人数も多くなると、きっと現場も大変でしょうね……。
坂本: 大変ではありますが、キャラクター毎にスタッフ達が熱意を持って作業して頂けてるのも確かなので、苦にはなっておりません。むしろ、熱意が強すぎて暴走気味かもしれませんが……。そういうときはアニメーションプロデューサーに小菅(秀徳)さん(エイトビット)に助けてもらいながら、頑張っています。
――9カ月連続『転スラ』放送となりますが、現場の意気込みをお聞かせください。
坂本:『転スラ日記』も含めてですがちょっとやりすぎでは……と思うくらい、良い意味で現場が暴走しています。まだまだ制作のゴールは見えないのですが、第1部の放送が終わったところで、さらにエンジンのギアをどんどん上げていこうと思っています!
取材・文=志田英邦
坂本大地(さかもと・だいち)
エイトビット所属、プロデューサー。『転生したらスライムだった件』第1期では制作デスクとして制作現場を取りまとめる。OAD『転生したらスライムだった件』からラインプロデューサーに。第2期においては、現場のスタッフ(アニメーター)を編成するなど、深く作品作りに関わっている。