努力に対する見方を変えられる! 恩師が語るガンバール国とガンバラン王国の物語とは?/がんばらない戦略③
公開日:2021/4/17
『がんばらない戦略』から冒頭部分を全7回連載でお届けします。今回は第3回です。
がむしゃらに働く人生から脱却し本当に必要な努力に注力できる自分に変われる新時代の人生戦略の指南書が登場! これからの時代に大切なのは「がんばらない努力」を身につけること。子供の頃からやる気だけは人一倍だったのに、何をやっても結果が出なかった著者。しかし、ある日を境に人生が大きく変わった――。
プロローグ ガンバってるのに苦行レベルにうまくいかないガンバール国
あるところにガンバール国という国がありました。
名前からダダもれな通り、ここはガンバり屋さんたちの暮らす国です。
朝6時。ほら、街のあちらこちらから、鳥たちのさえずりが聞こえてきましたよ。
時間きっかりに、いっせいに鳥が鳴き出すなんて!
あなたがはじめてこの国を訪れたとしたら、びっくりしたことでしょう。
そのままもう少しだけ耳を貸して。
はい、鳥たちはぴったり鳴きやんでしまいました。なぜって?
それはね、その鳴き声の正体が本物の鳥、ではなく、この国の民たちのケータイ電話に設定された、アラームの音だから。
本物の鳥たちはとっくの昔に、一羽残らずこの国から飛び去ってしまいました。
だって美しい声で鳴いても、この国の民はみんな忙しくて誰も耳を傾けてはくれないし。
それは大人だけでなく子どもたちもね。
それに鳥たちにとってこの国は、なんだかとっても住みにくかったのです。
「ミサキ、6時よ、ガンバって起きなさい」
とある窓を覗いてみましょう。
お母さんが、寝ている我が子の布団をひっぺがしています。
「うーん」
布団を引き寄せて、ぬくぬくとした夢の世界へ戻ろうとしているのが、ミサキ。
覚えておいてください、この本の主人公です。
「おい、お父さんだって、昨日、遅くまで飲んでたけど、ガンバって起きたぞ」
と、赤く充血した目をカッと見開いて、ミサキを睨みつけているのはお父さん。
そんなお父さんの声を布団の中で聞きながらミサキはこう思っていました。
「ガンバってなんになるの? お父さんが半年間、休みもろくにとらず、家族と遊びにも行けず、“会社人生、最後の賭け”だってガンバってきたプロジェクト。“人事異動”のひと言で別の人に横どりされたじゃない。応援してたのに」
お父さん、昨夜はやけ酒だったのでしょうか。
ミサキは布団をかぶったまま考えています。
「お母さんだって、ダイエットガンバる、ダイエットガンバるって言うばっかりで、二、三日ご飯抜きにしておかずばっかり食べてたかと思ったら、もうご飯大盛り?」
たしかに食卓には朝から大盛りのご飯が湯気をたてています。
ガンバってうまくいっていないのは、ミサキの両親ばかりではありません。
飲み会にも旅行にも参加せず貯金をガンバっているのに銀行の残高がゼロの人。
ガンバって会議の資料をつくって出したのに「全然、方向が違う」と怒られている人。
アルバイトをガンバってプレゼントを用意したのに、告白する前に避けられている人。
家事もおしゃれもガンバっているのに夫の心が離れてしまったと悩んでいる人。
ガンバって仕事を探してるけど、やりたいことが見つからない人。
ガンバって片付けはじめるわりに、家が全然片付かない人。
ガンバって仕事を終わらせようとすればするほど仕事がたまる人。
そうこうするうちに、窓の外をガンバール高校の陸上部が歌いながら通り過ぎていきます。
♪ガンバール、走る、練習するー。努力は噓をつきません。
ガンバーレ、走れ、練習しろー。やればやるだけ、やればやるだけ、やればやるだけタイムは縮むんだ~! GOファイッ!♪
「うるさーい」
ミサキは布団の中で耳をふさぎます。
「やればやるだけタイムが縮むなら、ガンバール国はゴリンピックで毎年、優勝してるはずなのに実際、結果は散々。毎年、予選落ちで決勝に出たこともない。それに比べて、どうよ。毎年、金メダルをごっそり持っていくガンバラン王国は。“ガンバらない”が国のルールなのに、スポーツではメダル続出だし、お金持ちだし、幸福度は一位だっていうじゃない」
そのとき、お母さんが布団を無理やりはがして言いました。
「ミサキ! 起きなさいってば。そんなガンバれない子に育てた覚えはありませんよ」
ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ……。
ミサキの頭にガンバレコールが鳴り響きます。
でも、家で、学校で、塾で、友だちの間で、ガンバった先になにがあるっていうんでしょう。
誰がどんな結果を見せてくれたでしょう。
「もう、いやだーーーーー!」
ミサキは飛び起き、家を飛び出します。
いろいろ考えたあげく、ガンバって。