『ダ・ヴィンチ』凪良ゆう特集、読者アンケート番外編!私の好きな凪良作品のこのフレーズ
公開日:2021/5/1
『ダ・ヴィンチ』5月号の特集「凪良ゆう、カケル」では、凪良作品について読者アンケートを実施。非常に多くの回答が寄せられたため、雑誌に掲載できたのはごく一部…。ここで掲載しきれなかった「私の好きな凪良ゆう作品のフレーズ」を発表します!(それでも全部は載せきれず…ご容赦を!byダ・ヴィンチ特集担当)※順番はフレーズが出てくるとおりではありません。
『初恋姫』
僕の気持ちは僕が持つ。
でも一心が寂しそうだから、せめて僕も一緒に寂しくなりたいと思う。
『積木の恋』
これが『好き』という気持ちだろうか。
──神さま……。
『散る散る、満ちる』
家族がいなくて寂しいけれど、不幸じゃない。
たった一人でいいのだ。好きな人にだけ愛されれば―たかがそれだけのことが、ひどく難しい。
『まばたきを三回 』
いちか あいたい
『天涯行き』
でも、あと一日だけ。一日だけ一緒にいよう
『お菓子の家: 〜un petit nid〜』
「好きな女がいてもいいから、あんたが暇なときに会いたい」
「服の形してるだけで、こいつにしたらなんか別のもんなんだよ」
──ねえ加瀬くん、阿木さんのことしあわせにしてくれる?
だから加瀬の舌が壊れていることに誰も気づかない。自分自身ですら気づかない。
『あいのはなし』
あの約束は甘くて、甘すぎて、自分たちを虫歯だらけの子供にした。
『恋愛前夜』
二人分しか空いてない場所に、三人分の気持ちがギュウギュウに詰まっている。
『雨降りvega』
あの朝は雨が降っていて、貸した傘が外に立てかけてあったのを見たとき、子供のように泣いてしまったのは自分だった。
自分の内側が激しく軋みだして、やってくるものを受け止める覚悟も決まらないうちに、嵐のような感情に殴り飛ばされた。
遠くからぐしゃぐしゃに潰れた泣き声が聞こえる。 自分が、こんな泣き方をするだなんて知らなかった。
誰かを好きになることが、こんなに痛いものだとは知らなかった。
空っぽだとしても、そこには彼の影がある。
どれだけ経験を積んでも、どうしても鍛えられない場所が人間にはあるのですね。
僕の大事なものを君が持っている。それが嬉しかった。
誰かを好きになるとか、嫌いになるという気持ちは、道徳や倫理を超えたもっと奥、人の一番身勝手なところにひそんでいる。
「君の字だ。君の文章だ。間違えるはずないだろう」
正しいことだけを、迷うことなく選んでいければよかった。でもやはりそうはできなかった。心は、正しさだけで作られいない。
『おやすみなさい、また明日』
いつかまた、そう遠くない日、ここではないどこかでつぐみと逢えるまで。
「また、今日も忘れてしまっていたよ。悪かったね」
声に出して語りかけた。
「でも、思い出したから」
──また明日。
それは、一日の終わりに交わすにはこれ以上ない約束のように響いた。
明日も、明後日も、ずっと交わし続けたい。
「俺が俺じゃなくなったときは、なにも考えずに、俺を捨てて行ってほしい」
全部、全部、遠くへ過ぎ去っていく中で、ふっと指先が青色にとろけた。
ああ、つぐみ。
いつもこの瞬間、つぐみが自分の指先を取ったように感じる。
「俺は、全部、忘れるよ」
広げたときに美しいなら、無理に柄を合わせることもないと思える。
俺にとって朔太郎さんとのことは『かわいそう』じゃない
『未完成』
自分の傍らに阿南はいない。
でも生活の全てに阿南がいる。
どんなときでも、静かに、優しい光で瀬名を包んでいる。
「ねえ、瀬名さんて阿南先生の教え子なんでしょ?」
「じゃあ、あとどれくらいかわいくなったら好きになってくれる?」
『夜明けには優しいキスを』
「生まれてから死ぬまでの間、その人がなにをどう選択して生きていくかってのは誰にも、親にだって責任取れない」
『恋をするということ』
「……呂久さんは野菊みたいな人だな」
『美しい彼』
ファインダーの向こうで、西日を受けた清居がかすかに笑った。
「……でも、俺は神さまじゃねえよ」
頭の奥が痺れるほど幸せなのが癪だった。
残酷で輝かしい烙印が自分の額に押されている。そこには、優しいものや正しいものや儚いもの全てを簡単になぎ倒す、春の嵐のように美しく圧倒的な力が宿っている。
「おまえなんか、ずっとださいままでいいんだよ!」
汚れた人工の川を、クルンとした睫で流れていったアヒル隊長のようであれ。
」そんなん俺が聞きてえよ!」
「そいつと、俺と、どっちが好きなんだよ」
「俺は、清居の全部が好きで、好きで、たまらなくて、もう神さまみたいなもので、そんな風に思ってる人に、自分の手が届くなんて思ったこともなかったよ」
甘い息苦しさが込み上げて、絶息しそうになる。
「……平良、恥ずかしがりだから」
「俺は死ぬほど好きだ」
「キスしたい?」
平良は限界まで目を見開いた。
「……し、していいのですか?」
思わず敬語になった。顔が熱い。心臓も爆発しそうにうるさい。
「させるか、ばーか」
『憎らしい彼 美しい彼2』
「おまえに、俺を、全部やる」
自分がどれだけ清居が好きか、清居にはわからないだろう。
それでいい。好きで、好きで、破裂しそうに苦しくて死にそうになる。
この甘さと苦しさは自分だけのものでいい。
どんなに深く眠っていても、自分が呼んだら目を覚ませ。
どんなに深く傷ついていても、自分が呼んだら駆けつけろ。
春の教室で、夏の光が差す渡り廊下で、夕日に染まる放課後の教室で、いつも、いつも、ひっそりと盗み見ていた清居だった。あの美しい横顔に、今までどれだけ救われただろう。
清居を前にすると、あっけなく十七歳のころに引き戻される。
「推し量れよ!」
『悩ましい彼 美しい彼3』
自分はもう清居を失えない。
失ったら自分ではなくなってしまう。
清居奏あれと神が言い清居奏が誕生した。
怖い場所から逃げたいなら走れ。
怖いものが追いつけないくらい、全力で走るしかないんだ。
「清居、ずっと俺のそばにいて」
「エビコロは作るな」
「……神よ」
「いいね。じゃあこれからもぼくのスピードについてきて」
「清居ーっ」
いきなり低い男の声が届いた。
甲高い女声の中で、それは異質だった。
「清居は誰よりも綺麗だーーーーーーっ」
「清居奏は夜空に輝く星だー、誰よりなにより綺麗だー」
静まりかえった会場の中で、なおも不審な男が声を張る。
「清居----、愛してる----」
『ショートケーキの苺にはさわらないで 』
ショートケーキの、苺には、さわらない。
『愛しのいばら姫』
どっかいったとか嘘つきやがって。なんちゅうかわいい意地っ張りさんなんだ。
恋をしたせいで、今年は秋のおとずれが早かった。
『それはおまえが童貞だからです』
「それは、おまえが、童貞、だからです」
『ニアリーイコール』
「感情だって錆びるから、使わないと自分がさびしいのかどうかわからなくなる」
「仁居先生、大丈夫だよ。俺はここにいるから」
「たくさん愛して、愛されて、共明はずっと幸せに生きていって」
『初恋の嵐』
「世間やいじめっ子が忘れても、おまえの家族はおまえのことを忘れない。あのときもっと気をつけてあの子を見ていれば、あの子は死ななかったんじゃないだろうか、あの子を死なせたのは自分ではないだろうかと自分を責め続ける。おまえが一矢報いたい相手がおまえのことを忘れてのうのうと生きている間、おまえを愛した人たちはずっとおまえを忘れずに、ずっと自分を責め続けて、ずっと苦しい思いをして生きていく。それでも死にたいか」
『累る』
「だって俺、四郎が大好きなんや。川藤さんより、ずっとずっと好きなんや」
『愛しのニコール』
ポケットの中ではまた携帯が震えて、榮からのメールを知らせている。
まだ少し迷っているけれど、多分、自分は返事をしない。
人生は薔薇色ではないけれど、それほど捨てたものでもない。
「あんまり長い間好きだったから、ガス欠になった……みたいな?」
『薔薇色じゃない』
右折しますか?
左折しますか?
『求愛前夜 恋愛前夜2』
「山盛り不満があっても、それでも、僕は漫画を描かなくちゃいけないんだ」
『闇を呼ぶ声 -周と西門-』
「なにが幸せで、なにが不幸せやとか決める権利、他人には一ミリもあらへんやろ」
--それもまた人生やん。
『神さまのビオトープ』
「もう助けてくれる人はいないってわかってるからだ」
試練を与えるのが神さまだというのなら、そんな神さまこそ消えればいい。
いつまでも見ていたい。少しでも長く見ていたい。
──秘密のない人なんて、いるわけないでしょう
──あの二人は昔話をしないから。
心は自由で、それを阻むものはない。
通奏低音のように絶えず流れる不安を聴きながら、今夜も、明日も、明後日も、わたしも、みんなも、秘密と決意に満ちた暮らしを守っていけますように。
誰がなんと言おうと。
後ろ指をさされようと。
たとえ世界から切り離されようと。
それが美しかろうが、醜かろうが、夢はひとりで見るものだ。自分の夢は自分の手でしか守れない。世界中から否定されるかもしれないし、誰にも信じてもらえないかもしれない。だから覚悟が必要なのだ。
よどみない動作で日常を遂行しながら、越えてはいけないラインを、気づかずに越えてしまったことを自覚した。
この幸せは理解されにくい形をしている。多くの人たちは異質なものを受け入れないし、幸せすら定型にはめたがる。
本当にそうだ。わたしはわたし。あなたはあなた。適当に楽しくやりましょう。そんな感じだったら、みんなあまり悩まず楽に呼吸ができるのに。だいたい、あなたのためにという言葉は頑固で、真面目で、自らの信念に満ちすぎていて始末に困る。
『2119 9 29』
「俺氏は、俺氏が正しいと思うことをするである」
「高嶺くん、大好きであるよ」「うん、俺もだ」
『落花流水 』
本当に大事なものは、手に入れた瞬間から内側に失う怖さを孕んでしまう。そのくせ、永遠に失われないと知れば安心して軽んじてしまう。価値を思い出すのは、いつでもそれを失った後だ。コツコツ積み上げては崩れていく。その空しい繰り返し。
『真夜中クロニクル』
俺はずっとずっとニーナが好きです。NINA MY ROVE です。
『セキュリティ・ブランケット』
「うん、そうだね。でも続けよう」
『流浪の月』
「ふみいいい、ふみいいい」
「マイペースすぎてやばい人」
集めてもこぼれ落ちていく。
甘いのにひんやりとした氷砂糖のような声が、わたしの上にぬるい雨みたいに優しく降ってきた。
幸せなほど重みを増すそれに、わたしは耐えられるだろうか。 重いからもういらない。 そう言って、ぱっと手放せれば楽なのに。
「偽名なら白鳥とか武者小路とか、もっとすごいのにすればよかったのに」
わたしはひとりになったけれど、それがなにほどのことだ。
誰かと一緒にいても、わたしはずっとひとりだったじゃないか。
神さまはどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。
事実と真実はちがう。
「そういうのとはちがうの。もっと切実に好きなの」
わたしは、あなたたちから自由になりたい。中途半端な理解と優しさで、わたしをがんじがらめにする、あなたたちから自由になりたいのだ。
せっかくの善意をわたしは捨てていく。
だってそんなものでは、わたしは欠片も救われてこなかった。
ハズレのトネリコはぼくであり、彼女でもあった。
「うちにくる?」
更紗は傍若無人なほど自由だった。
それはぼくの知らない、光り輝く世界だった。
それでもまだしばらくは大丈夫だろうと、確証もなくぼんやりと自分を励まして生きている、そんな人たちがあちこちにひそんでいると思う。
[彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわからない]
わたしと文の関係を表す適切な、世間が納得する名前はなにもない。
わたしたちはおかしいのだろうか。
その判定は、どうか、わたしたち以外の人がしてほしい。
わたしたちは、もうそこにはいないので。
どこへ流れていこうと、ぼくはもう、ひとりではないのだから。
『わたしの美しい庭』
自分の陣地が一番広くて、たくさん人もいて、世界の中心だと思っていたり、そこからはみ出す人たちのことを変な人だと決めつける人たち。わかりやすくひどいことをしてくるなら戦うこともできるけれど、中には笑顔で見下したり、心配顔でおもしろがる人もいる――。
ここはわたしの場所なんだと思えた。
--それでいいんだよ。幸せに決まった形なんてないんだから。
形がないって自由でいいねと言うと、形があっても自由にしていいんだよと返される。
孤独死なんて言葉を考えた人は、重い罪に問われるべきである。誰かと一緒に生きていくのはもちろん素敵だけれど、だからといって、ひとりで生きている人をそんな恐ろしい言葉で脅さなくてもいいじゃないか。人生の選択は、もっと明るく自由なものであってほしい。
けれど歳月だけではないでしょう
たった一日っきりの
稲妻のような真実を
抱きしめて生き抜いている人もいますもの
ああ、気持ちいい。
ずっと鍵をしてきた気持ちを開け放してすっきりしている。だけど不安や怖い気持ちが消えたわけじゃない。隣に誰もいないこと。ずっとひとりで生きていくかもしれないこと。不幸な人だと指さされること、かわいそうな人という目で見られることが怖かった。それは今でも変わらず不安なままで、けれどそういうわたしを、わたしだけは受け入れてあげようと思う。
わたしは不幸かもしれない。
わたしはかわいそうかもしれない。
けれどわたしの中には、たった一度の雷鳴が今も響いている。
たった一度の恋が、永遠になってもいいじゃない。
誰かに証す必要なんてなく、わたしはわたしを生きていけばいい。
わたしも、いつか新しい雷鳴を誰かと聞くかもしれない。それは誰にもわからなくて、わからないことは不安であり、救いでもあるのだと思う。
「どんな正義の矢も、千本射れば殺戮に変わる」
理解できないならできないでしかたない。だったら黙って通り過ぎればいいんだ。良心の呵責はおまえらの荷物だよ。人を傷つけるなら、それくらいは自分で持て。
色目も質感も違うふたつが混ざり合い、途中からおまえも飛び入り参加し、もう誰が見てもフリーダムなことになっている。それが楽しいと――。
「あ、そうなんだ。だったらしかたないよ。わたしも病気のときは学校休むもん」
「間違ってない。百音の感情は百音だけのものだ。誰かにこう思いなさいと言われたら、まずはその人を疑ったほうがいい。どんなに素晴らしい主義主張も人の心を縛る権利はない」
失うことや持ってないことで得られるものもあるんだ
『ぼくたちは同じだから仲良くしよう』より『ぼくたちは違うけど認め合おう』のほうを勧めたい。
事実というものは存在しません。存在するのは解釈だけです。
手を取り合ってはいけない人なんていないし、誰とでも助け合えばいい。それは世界を豊かにするひとつの手段だと、少なくともぼくは思っています。
『へんな思いやり』
そういう誰かの『かいしゃく』とは関係なく、わたしは楽しく暮らしている。
『滅びの前のシャングリラ』
「友樹、よく聞け。おまえははっきり言って激弱だ。襲撃されたら迷わず逃げろ。やばくなっても素手でやり合うな。凶器を出せ。殺されるくらいなら、殺してでも生き延びろ」
惚れた女は命がけで守れ。そんで絶対あたしんとこに戻ってこい。
妄想の中の獣じゃない、弱い羊のままのぼくで荒野を駆ける。
子供はこれから建てられる新築一軒家みたいなもので、家を支える一本一本にあたしや信士は暴力という名の傷をたくさんつけられた。家が完成したときにはそれだけを抜き出すことはできなくなっていて、どれだけ築年数がいっても傷ついた柱はそこに立ち続ける。
「お父さん、がんばれ!」
幸せも不幸もただの記憶で。
「じゃあ、俺らが代わりに持ってやるか」
愛情にも適正な距離というものがある。近づくほどに深まるものもあれば、離れているほうがうまくいくものもあり、憎んでしまうくらいなら手放したほうがいいこともある。
「おまえ、あたしたちが幸せな家族に見えるのか」
なのに、それでも、今あたしはとてつもない幸せを感じている。
明日死ねたら楽なのにと夢見ていた。
その明日がついにやってきた。
なのに今になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている。
後悔じゃない、もっとやわらかい眩しい気持ちだ。
これを希望と呼ぶのはおかしいだろうか。
『表面張力』
わたしはたまに自分を花瓶のように感じる。みんな、わたしの中に自分という名の花を生けたがる。わたしは沈黙の器になる。わたしはなにも考えない。
『すみれ荘ファミリア』
そう扱われることで、人はそうなっていくの。