キュートなルックスに渋いセクシーヴォイス……Twitter界をざわつかせている、あのネズミが待望の書籍化!
更新日:2021/4/28
名もなきねずみはノートの中に住んでいる。その呼び名が表すように、名前はまだない。
チャームポイントは、大きな耳(片方が欠けているのがまたチャーミング)。やや老眼が入りかけた、つぶらな瞳。ぽこんとした幼児体型のまるいお腹。赤いちゃんちゃんこ(チョッキに非ず)もかわいらしい。そして、ふっくらとした口もとからは意外なくらいダンディーなセクシーヴォイスが出てきて、そのギャップがたまらない。
2020年4月からTwitterに登場し、フォロワー数は2021年4月現在12万2000人を突破! キュートな見た目と渋い声、おっとりまったりとしたトークが声優ファンを中心に人気を集め、YouTubeチャンネルでもただいま話題沸騰中の“名もなきねずみ”。マスコットをはじめ多方面でグッズ展開もされているこの人気者が、満を持して『名もなきねずみの本』(名もなきねずみ/主婦の友インフォス)として書籍化された。
Twitterで発表された作品を中心に、書き下ろしイラストとマンガが、全ページフルカラーで掲載。「名もなきねずみの日常」を綴った第1章では、お昼寝が大好きだったり、お片づけが苦手だったり、カップラーメンができるのを目をウルウルさせて待っていたりと、名もなきねずみの生態がつぶさに明かされている。
第2章「名もなきねずみの友達」は、うしさん、とらさん、ロップイヤーラビットさんと、個性的な友達が続々出てくる。十二支の動物たちに加えて、ねこさんにカピバ、さらには名もなきねずみの旧友である“名のあるねずみ”も登場! 同種だけあってそっくりな2人(2匹?)の掛け合いは、なんとも微笑ましい。神さま主催の十二支決定レースや、名もなきねずみに負けないくらいキャラの立った各動物たちの活躍も楽しく、いつまでも読んでいたい気持ちになってくる。
『桃太郎』や『赤ずきん』といった世界の昔話を、名もなきねずみの世界観でアレンジした第3章「名もなきねずみのお話」は、くすっと笑ってしまうおかしさがいっぱいだ。
『花咲かじいさん』の本を読んだ名もなきねずみが、イノッチ(猪)の指導を受けて土を掘ったら、小判ならぬトリュフが出てくる話。マッチ売りの少女に扮した名もなきねずみが、“名のあるねずみ”の名前の力を借りてマッチを完売する話。特に、うしさんが売られていく『ドナドナ』のシュールさはかなり独特で、ほんわかとしたエピソード群の中でふしぎな印象を残している。
特筆したいのは、豪華クリエイター陣による特別寄稿の数々。『グラップラー刃牙』の板垣恵介氏、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ監督の神山健治氏、『忍たま乱太郎』原作の尼子騒兵衛氏、『彼女、お借りします』の宮島礼吏氏ら錚々たる面々が、各自のタッチで描いた名もなきねずみのイラストが掲載されている。さらに巻末にオリジナルシールがついている仕様がまた、心にくい。
買おうかどうしようか、迷っている方はまず、Twitter
(https://twitter.com/akodchu)
の動画を見てみてほしい。そして名もなきねずみの声を、ぜひ聞いてみてほしい。そのイケボを堪能しつつ本書を読んだら、いっそう楽しくなることうけあいだから。
文=皆川ちか