心理的な距離が一気に縮まる「シュムージング」って?/超影響力④
公開日:2021/5/9
『超影響力』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第4回です。
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「信用」を得るための3つのステップ
影響力のある人は、次の3つのステップを踏むことで効率的に聞き手の信用を得ていきます。
①「シュムージング」で打ち解け
②「ストレングス」で相手に自信を持たせ
③「類似と共通点」で仲間意識を深める
それぞれについて、これから1つずつ説明していきましょう。
ステップ1 シュムージング
シュムージングに効果的な5つの話題
1つ目のステップは「シュムージング」です。
聞き慣れない単語ですが、難しいテクニックではありません。簡単に言うと、「本題を切り出す前に自分のことをネタにした雑談を挟む」だけです。
本題の前に雑談を……と聞くと、ありふれたやり方に思えるかもしれませんが、重要なのは「自分のことをネタ」にすること。天気の話や最近のニュース、トレンド、業界の噂話などはシュムージングになりません。あなた自身に関係すること、それもかなりコアな部分に触れる話題のほうが効果的です。
そこで、社会心理学者ゲイリー・ウッドが提案する「自己開示に適した10のテーマ」から、シュムージングに効果的な5つの話題を紹介します。
お互いに話のきっかけにしやすく、それでいて「私はこういう人間です」「あなたはどうですか?」というやりとりが進みやすいテーマです。
効果的な話題1 お金や健康に関する心配事
お金や健康にまつわる話は、誰しも何らかの心配事を抱えているので一気に親密度が増す話題です。
「一時期体調を崩したことがあって、眠りについて研究したら寝つきがよくなったんですよ。〇〇さんは、普段よく眠れていますか?」
「実家に帰省するだけでも結構かかっちゃって……。出費はなかなか減らないし、お金の心配って本当に尽きないですよね」
ポイントは、聞き手に「プライベートな話を打ち明けられた」と感じてもらうこと。すると、「返報性の原理」が働き、「自分も心配事を話してみよう」と思ってくれます。
そして、聞き手は自分も打ち明け話をしたという実感を得て、それが相手への親しみへと変わっていくのです。
効果的な話題2 人生で幸福を感じること、自分の楽しいこと
自分の好きなこと、最近ハマっていること、幸せを感じる瞬間など、人生においてポジティブな出来事を話しましょう。
「最近、ちょっと凝った料理にハマってて、作っている間、集中できるし、おいしく食べられるし、家族も喜ぶし、本当にいい楽しみを見つけましたよ」
「猫を飼っているんですけど、ペットと過ごす時間ってどうしてあんなに気持ちが落ち着くんでしょうね。〇〇さんは、何か飼っていらっしゃいますか?」
笑顔とともに語られるエピソードは聞き手も楽しく聞くことができ、自分の幸せについても話してくれるはずです。
効果的な話題3 自分の弱点やマイナス面
あなたが長年悩んでいること、改善したいと思っていること、苦手だから助けてほしいこと、そういった弱点やマイナス面を打ち明けましょう。
「大勢の人と付き合うのが苦手で、どうしたら自分に合った人間関係を作れるか、ずいぶん悩んだ時期がありました」
「最近やっと、『もっとうまくできるはず!』と完璧を求めてしまうのが、独りよがりだったと気づいたんです」
悩みや弱さを打ち明けられるということは、客観的に自分のことを把握できているから。打ち明け話を聞いた相手は「この人はしっかりしている」「人の悩みや弱さを理解してくれる人だ」と好意的にと受け止めてくれます。
効果的な話題4 自分の趣味や興味
あなたが長く続けている趣味、これから興味を持って取り組んでいきたいと思っていることをテーマにしましょう。
ただし、語り方にコツがあります。「私の趣味は◯◯です」では、相手が興味のないジャンルだった場合、「そうですか」で終わってしまいます。
そこで、興味を持ったきっかけや趣味を通して学んだことなど、あなたなりのエピソードを交えること。すると、相手も会話に加わりやすくなります。
「心理学の本が昔から好きで、時間があると読み続けているんですけど、そもそも心理学に興味を持ったきっかけは片思いからなんですよ」
「最近、筋トレを始めたんです。体型の変化はもちろんうれしいんですけど、なにより集中力が高まる感じがするんですよね」
効果的な話題5 恥ずかしかった体験や罪悪感を覚えた体験
自分の失敗談、罪悪感が今も残っている体験を語りましょう。
失敗から学んだことを合わせて語ることで、相手は「この人は失敗を乗り越えて成長したんだな」「人の痛みがわかる人だな」といった印象を抱きます。
つまり、あなたという人物の人間性を聞き手に伝えることができるのです。
また、会話の相手が年下の場合は、失敗談を語ることで「年上ですごい人」というレッテルを破ることができて、親密度が高まりやすくなります。
「引きこもりで親に迷惑かけてどん底の時期があったんだけど、あるとき〇〇さんの話を動画で見て、自分もこんなふうになりたいし、変われるって思ったんだよね」
「大丈夫。私も最初は何度も?られて、営業成績もビリだったけど、コツをつかんだらできるようになったし、社長も君に期待してるからこそ、あんなふうに言うんだよ」
相手との心理的な距離を一気に縮めてしまうシュムージング
このようにシュムージングがうまくいくと相手との心理的な距離が大きく縮まっていきます。その効果は2002年にスタンフォード大学の研究チームが行なった実験でも確かめられています。
この実験では、およそ100人の学生に対して「慈善事業に対する寄付を募ること」を指示。その際に参加する学生を次の3つのグループに分け、どのグループが最も効果的に寄付を募ることができたかを比較しました。
①いきなり寄付をお願いするメールを送ったグループ
②メールの最初に、生まれ故郷に関する話や熱を上げて応援しているスポーツチームの話など、自分についての雑談を書いたうえで、寄付をお願いするメールを送ったグループ
③相手に電話で自分の趣味などをテーマにした雑談をしたあと、寄付をお願いするメールを送ったグループ
結果は明らかでした。寄付のお願いの前に自分をネタにした雑談(シュムージング)を行なった②と③のグループは、寄付をもらえた確率が20%もアップしたのです。
さらに、メールだけでシュムージングをするよりも、事前に電話をかけて話をした③のグループのほうが成功率は高い結果になりました。
また、同研究チームはプラスαの条件での実験も実施。メールや電話ではなく事前に顔を合わせてシュムージングを行なってから、本題をメールで送った場合の変化も観察しました。
すると、直接会ったグループは寄付をもらえる確率が高まるだけでなく、寄付金額が多くなる傾向も出たのです。
これはシュムージングによって自己開示が進み、相手との間につながりが生じたからだと指摘されています。趣味や出身地、大切にしていること、好きなマンガなど、他愛もない話だとしても、それがあなた自身に関するネタであれば、聞き手は自分との共通点を見出し、親近感を覚えてくれるのです。
このスタンフォード大学の研究からわかるのは、メールや電話のシュムージングであっても20%も相手を協力的に変える効果があるということ。
いきなり商品の紹介を始める営業担当が嫌われるように、いきなり本題を切り出しても相手は耳を傾けてくれません。距離を縮める準備があるからこそ、そのあとに続く大事な話にも興味を持ってくれるようになるのです。
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