「正社員」だから安心とは限らない!? 自分の雇用形態をきちんと理解しておこう/武器としての労働法②

ビジネス

公開日:2021/5/7


武器としての労働法』から厳選して全4回連載でお届けします。今回は第2回です。

社員、契約社員、派遣、アルバイト、フリーランス…。雇用形態が多岐にわたるなか、「働くこと」のトラブルもまた多岐にわたる時代になりました。トラブルを乗り切るために大切なのは、あなたの働き方を深く知ることです。「泣き寝入りしない」ために、まずは基本知識を学びましょう。

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武器としての労働法
『会社に人生を振り回されない 武器としての労働法』(佐々木亮/KADOKAWA)

自分の〝働き方〟を知っておこう

 あなたは正社員ですか?

 それとも契約社員、あるいはパートタイマー、アルバイト、派遣社員、フリーランスですか?

 

 このようなさまざまな働き方をひとくくりに「雇用形態」ということがあります。自分の働き方はどの雇用形態に属するのか、それをきちんと理解しておきましょう。雇用形態の違いによって、自分の身に降りかかりやすいトラブルも、その対処の仕方、解決方法も異なるからです。

 第1部では、雇用形態の特徴を解説し、雇用形態別に起こりやすいトラブルとその解決策をあげていきます。

「正社員」は三つの要素を満たした働き方

 皆さんは日常的に「正社員」という言葉を使っていると思います。正社員は正規社員とも呼ばれますが、法律用語に「正社員」「正規社員」という言葉はありません。あくまでも会社が、自社で働いている労働者をそう呼んでいるだけです。

 しかし、「正社員は安定している」、「正社員は法律で守られている」と、耳にすることがあるでしょう。確かに、「非正規」と呼ばれる働き方より、正社員は雇用が安定しているといわれます。ただ、その違いは、「正社員」と呼ばれているかどうかではなく、実際にどのような働き方をしているかで決まります。では、どのよう働き方をしている労働者が、「安定している」あるいは「法律で守られている」といわれる正社員に当たるのでしょうか。

 次の三要素を満たしている働き方が、ここでいう正社員になります。

 

1 雇用契約に期間の定めがない

 雇用契約に期間の定めがない働き方を、無期雇用と呼ぶことがあります。これは、雇用契約に働く期間が決められていないことを意味します。つまり、自分から会社を辞めるまで、定年制度があれば定年まで、解雇されるまで、もしくは亡くなるまで、その会社で働けるのが無期雇用ということです。

 

2 フルタイムで働いている

 自分の所定労働時間が、会社で決められている「1週間当たりの所定労働時間」と同じ労働時間であることを「フルタイム」といいます。「所定労働時間」とは、雇用契約で決まっている始業時刻から終業時刻までの時間をいいます(休憩時間を除く)。自分が働いている1週間の所定労働時間が、その会社で決められている「1週間当たりの所定労働時間」より短い場合を「パートタイム」といいます。たとえば就業規則に「所定労働時間は1日8時間、1週40時間とする」と明記されている場合、「フルタイム」は40時間働いていることが必要です。1週間で20時間、18時間など40時間未満の働き方ならばパートタイムということになります。

 よく、「パートに出る」といいますが、「フルタイム」に対する「パートタイム」という言葉からきた俗語です。

 

3 直接雇用である

 雇用には直接雇用と間接雇用があります。直接雇用は働いている会社と直接雇用契約を結び、直接給与をもらっている働き方です。

 間接雇用は働いている会社と給与をもらう会社が違う働き方で、派遣社員がこれに当たります。現在の日本では、派遣社員以外は直接雇用と考えて差し支えないでしょう。

 

 ほとんどの正社員は、前記の三つの要素を満たしています。

 しかし、まれに会社が正社員と呼びながら、この三要素を満たしていない正社員もいます。つまり、会社で「正社員」と呼ばれていても、有期雇用だったり、フルタイムで労働していなかったりする社員もいるのです。そのような社員は三要素を満たしていないけれども、その会社では正社員と呼ばれています。さすがに派遣社員を「正社員」と呼ぶ会社はないと思いますが、可能性がゼロとは言い切れません。

 たとえ、正社員と呼ばれていても三要素を満たしていない社員は、何かトラブルが起きたとき、適用される法律が三要素を満たしている正社員と異なることがあります。

 ですから、現在、働いている会社で正社員とされていても、三要素がとても大事な点ですので、自分の働き方が無期雇用か、フルタイムか、直接雇用か、きちんと確認しておく必要があります。というのは、自分は正社員として働いているから無期雇用だと思っていたら、実は契約書では有期雇用だったというケースがたまにあるからです。

<第3回に続く>