お守りにしておきたい言葉が詰まった『しいたけ.の小さな開運BOOK』刊行対談――しいたけ.×松井玲奈 カラー心理で明かされた”秘密”の一面
公開日:2021/5/11
さまざまな食の記憶を描いた初エッセイ『ひみつのたべもの』が話題の松井玲奈さん。そして、18のカラーで自分らしい運の開き方を指南する新刊『しいたけ.の小さな開運BOOK』を発売するしいたけ.さんの対談記事、第二弾! 今回はしいたけ.さんが教えてくれるカラー心理学にもとづいて、松井さんの意外な一面が明らかに……!? 「勇気をもらえた」と松井さんの心に残ったしいたけ.語録についてもうかがいました。
(イラスト=100%ORANGE、撮影=川島小鳥)
ルーズリーフ3枚くらいに、しいたけ.さんの言葉をびっちり書きました
松井玲奈さん(以下、松井):私も『しいたけ.の小さな開運BOOK』、楽しく読ませていただきました。去年のイベントでお会いした時にカラー診断を少ししていただいたんですが、今回本に載っているテストを改めて自分でやってみたら、すごくオタクなんだなってことがわかりました。
松井:水色とエメラルドと森の色っていうのが、私に多く当てはまっていて。自分のパーソナルなエリアで生きている人間なんだなと。
しいたけ.:全部パーソナルな色ですね。この3つの色は。
松井:最近は家の中にいるパーソナルな時間が多くて、発散するということがあまりなかったけれど、その気持ちをどう処理していくべきなのか友達と話したりしても、やっぱりみんな同じようにモヤモヤしていることが多かったんですね。で、しいたけ.さんの本の中に書いてある言葉で、あぁ、素敵だなって思った言葉を書き出しながら読んでいたんです。そうしたら、読み終わった時にモヤモヤが消えている気がして……。
しいたけ.:ありがとうございます。
松井:めちゃくちゃ影響されやすい単純なところもあるのかもしれないです(笑)。占いも毎週読ませていただいているんですが、しいたけ.さんの書かれる言葉は人を傷つけることなく、グッと持ち上げてくれて、モチベーションをアップさせてくれるような言葉が多いなと感じていて。「縁のある出会いは何かを壊すためにやってくる」とか。
しいたけ.:あぁ、はいはい。
松井:それが一番最初にズドーンって刺さりました。「確かにそうだ!」と思って。誰かと出会う時ってやっぱり、それで自分の心が揺さぶられて、変化が起きる時だなと感じます。初対面だと緊張しちゃうから、まずは「自分が先に鎧を脱ぐことが大事」とかも。すぐ壁をババババッと作っちゃうんです。本当は人のことは好きなんですけど、コミュニケーションをどうとっていいのかわからなくなると、仕事現場とかで、私本を読み出しちゃうんですね。
しいたけ.:なるほど。
松井:それって壁だなってずっと思っていたんですよ。でも優しい方は、「何読んでるの?」とか「本好きなの?」と声をかけてくださることで会話が広がることもあるんですけど、あぁ、これって完全に自分が壁を作っていたなと反省しました。そういうことを全部書き出しながら、自分自身を振り返りながら、これからの人生をもちゃんと考え直そうって(笑)。
しいたけ.:わはははは!
松井:刺さる言葉がすごいたくさんで。結果、ルーズリーフ3枚くらいにびっちり書きました。その時々で、それぞれの人が陥っている状況って違うじゃないですか。悩みの種類とか。自分がどの状況にいても、この本をパラパラっと読み返した時にふと目に入る言葉というのが、その時の自分の状態をよく表していて、お守りみたいになる言葉がたくさん載っているんだなって。これは1冊ちゃんと自分の本棚に取っておきたい本です。
しいたけ.:あーーー、ありがとうございます。
世の中の強すぎる言葉は、聞かなくていい
松井:最後のほうに書かれていた、「どうしようってなった時が一番チャンスだ」っていう言葉には救われました。ピンチをチャンスに変えるっていう。失敗してうまくいかない時も、それができるようになったら飛躍できたり、のびしろがあるはずと思っていたので。しいたけ.さんが、「新しいことを学んでいけるチャンスだ」って書いてくださっていたことが、背中を押してもらえる勇気になりました。これからも、失敗してもまた頑張っていこう、みたいな気持ちになれました。ありがとうございます。
しいたけ.:この本を書いてよかったです。
松井:外に出て仕事をしていると、「あぁ、こういうことはダメなんだ」と日々学んできたんですが、そうしていくうちに、自分自身がNOとしていることが多くなっていたんですね。みんながこういう風に思ってくれているんだから、その期待に100%以上で応えないといけないって思っていたんです。だけど「3割くらいでいい」って書いてあって、そんなこと言ってもらえるんだって。しいたけ.さんはどうしてこんなに優しい言葉をたくさん投げかけてくれるんですか?
しいたけ.:この世で苦手な言葉が100個くらいあるんですけど、そのうちのベスト10に入るのが、「やる気のない人は帰れ」っていうのがあるんです。そう言われると、本当に「ありがとうございました」って言って帰る人間なんですよ。
松井:すごいですね(笑)。
しいたけ.:世の中に広がっていく言葉って、どうしても強すぎる印象があるけど、だからといってそのままでいいんだよって言うわけにもいかないし、人間ってどの立場の人もなんとか生きていかないといけないじゃないですか。でも一方で、周りの期待に応えるってことを100%やってつぶれちゃった人も見てきました。なんとなく隅っこで生きてきた僕にとって、あの大人の話は聞かなくていいのになって、すごく客観的に見ていたこともあったんです。仮病を使って帰ればいいのにな、とかずるいことを考えてしまう人間だから。そういうのを書いておきたいなって思って。
松井:私にとっては全然ずるいと思わないんですよね。「聞かなくていい」という言葉が書いている後に、ちゃんと「ありがとうと言う」とかアドバイスが書かれているから罪悪感もなくなるんです。モヤモヤする人って、「あの人があんな風に言ってくれたし、気も使ってくれたのに無下にできない」という気持ちがあるんだろうなという中で、相手のことを考えながら、「ありがとうございます。でも、私は私で頑張ります」と心で言うことで、憑き物が取れるというか。あの人はあの人、私は私ってスパッと考えられるから、自分にずるさを残さないというか。だから、ちゃんと前を向けるんです。
しいたけ.:そんな風に思ってもらえて嬉しいです。
松井:友達に「どうしたらいいかな」って聞かれた時も、一緒になってウンウン悩んでしまうタイプなので、これくらいスパッとなれたらいいなと思いました。
その人のどうしようもない部分を出せたら素敵
しいたけ.:松井さんの本を読んだ時に、すごくこだわりがある方なんだなって思ったんですね。こだわりが強い人って、生きづらさがあったりもするじゃないですか。僕も人生の一時期、会食に行く訓練とかしていたときもあって。しゃべることと、人の話を聞くことと、食べることの3つのことをよく多くの人たちは並行してできるなって。それこそウニが目の前に出ようもんなら、話なんて全部飛ぶじゃないですか(笑)。「ちょっと今話しかけないでもらえます?」みたいな。だからこだわりが強すぎる人って、自分で努力して変えることはできるけど、ここまでしか変えられないということもあると思うんです。個性とかその人の面白さって、社会を生きていく上で磨いてきた力よりも、その人のどうしようもない変えられない部分にあると思うんです。仲良くなった人同士で、そこの部分をもっと出せたら素敵になるんじゃないかなと。なんか、自分がどんな思いで本を書いたか伝えるって恥ずかしいですね……。
松井:そうですね(笑)。でもこの本はカラー別で書かれていて、読んでいる人たちは自分で診断をして、どういう面は得意でどういう面が苦手なのかすんなり受け入れられて、改めて自分を振り返る時間になるんじゃないかなって思います。書いてある言葉を受け止めて、自分の中に落としていって、切り替えられるというか。しいたけ.さん自身は、生きづらい時期があったんですか?
しいたけ.:自分のことでいうと、30歳超えてからのほうが、人生がちょっと楽になれた。20代ってやっぱり変わんなきゃ悪い気もするし、苦手だからといってやめちゃいけないというか。僕個人としては、一応チャレンジしないと始まらないという20代に比べると、やっぱり30歳からのほうが楽になりました。
松井:私は今29歳で今年30歳になるんですけど、世の中に出ていろんなことを経験する時間なんだなっていうのは、感じました。これは好きでこれは嫌いで、これは好きでも嫌いでもないけど頑張ればできること、とか。学生時代にはわからなかったことを、もっと広い世界で試せる時間なのかなっていう。その10年で経験したことを糧に、30代でさらに楽しいことに向かって進んでいけるのがいい形なんじゃないかなって思いました。
しいたけ.:す、すばらしい!!
松井:これはこの本を読んで、学んだことです!
松井さんのカラー診断結果は……?
しいたけ.:松井さんが自己診断で出していただいた森の色っていうのが、究極の集中型タイプなんですね。壁を築いて自分の世界に入り込むみたいな。その究極のところに位置するのが森の色と、黒なんです。僕は黒側の人間で、仕事でしか集中できないんですよね。だから、弱っている時こそ一番きつい仕事をぶち込んで自分を立て直すことが向いている。一方、森の色は完全にプライベートで集中できる、非公開の領域というか。気づいたら「やべぇ、寝てねぇ」みたいな人たち。
松井:確かに、仕事が趣味に近いところがあるので両方あるかもしれません。仕事に対してガーッと集中できる環境にいるのはすごく幸せなんですよね。気分が落ちていることも忘れられるので。最近は推しがいる生活を楽しんでいるから、森側の人間になったのかなと思います。
しいたけ.:え、あれですか。プリン作った方ですか?
松井:そうです(笑)。プリン作った人が、私のここ2年くらいの支えです。あと、ちょっと仕事がうまく進まないなと悩んでいた最近は『名探偵コナン』を見ることを楽しみに生きていたんですよ。これをやったら、コナンを2話だけ見ていい、みたいなモチベーションで生きていたので。もちろん仕事も楽しいので集中してやるんですけど、推しがいると生活の彩りが豊かになるなと思っています。
しいたけ.:すごい素敵です。
松井:ちなみに元々は、『コナン』にそこまで興味がなかったんですよ。しいたけ.さんの本の中でも「興味がない」っていう項目があったじゃないですか。「『名探偵コナン』は大丈夫だから」って。それが、2か月くらいで急にハマったんですね。それは、仲のいいお友達がものすごい熱量で『コナン』の話をしてくれたから。「わかんなくていいから聞いて」っていう(笑)。やっぱり強い熱量っていうのは人の心を動かすんだ、侮れないなって思いました。
しいたけ.:そういう熱量を持った人たち、すごいですよね。勝手に入ってきて押し売りして帰っていくっていうのが(笑)。
松井:熱量って、ある意味氷を溶かすというか。ガチガチに固まって冷えているものを、熱でブワーッと溶かしてくれるんだなって思います。私自身もYouTubeをやっていて、オタクの話を早口でしゃべっていたりするんですけど、私はただしゃべりたいからしゃべっているだけなのに、「何もわからなかったけど、楽しかった、ありがとう」って言ってくれると、こんなことでも楽しんでもらえるんだ、よかったなって思える。そういうバカみたいなエネルギーっていうのも、確かに存在するんだなっていうのは感じます。
しいたけ.:そうですよね、面白い!
前回の対談はこちら: 思い出に残る食べ物はなんですか?『ひみつのたべもの』刊行対談−−しいたけ.×松井玲奈が食への異様なこだわりを語り尽くす!
しいたけ.
占い師。作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら占いを学問として勉強する。著書に『しいたけ占い』(マガジンハウス)、『しいたけ.の部屋』(KADOKAWA)などベストセラー多数。 しいたけ. 公式サイト
松井玲奈
役者。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。著書に小説『カモフラージュ』『累々』(ともに集英社)がある。インスタグラム @renamatsui27 YouTubeチャンネル