ぼっちを好きになった理由/前島亜美の「まごころコトバ」③
公開日:2021/5/7
アイドル活動を経て、声優や舞台を中心に活躍中の前島亜美さん。常にまっすぐ生きる彼女が、何を思い、感じ、触れてきたのか。心にあるコトバを真心(まごころ)こめて紡ぎます。
この記事を書いている頃に連載をすることが発表され、第1回の配信がスタートしました。
何かを話す時など言葉づかいを褒めていただく機会があり、この連載開始も反響をいただけてとても嬉しいです。
前回までは私のパーソナルなことについて書きましたが、そもそもどうしてこの連載が始まったかというと、お話のきっかけは雑誌『おひとりさま専用Walker2021』(2020年12月発売)の取材を受けたことからでした。
“どうして1人が好きになったのか”
私の考え方や生き方についてお話をしたところ編集担当さんと意気投合しまして「必ずまた何かやりましょう!」、そうお話しさせていただき、今回の連載が実現いたしました。
こうしてまたご縁が繋がるということは本当に嬉しいことです。この出会いと連載は私にとってかけがえのない大切な居場所になるだろうと感じています。これからがとても楽しみです。
話は戻りますが、世の中には“ぼっち○○”という言葉がありますね。皆さんは1人の時間はお好きですか?
私はきっと生まれつき1人の時間が好きで大切だったと思うのですが、自分がそうだと気づき始めたのは小学生の頃だったと記憶しています。
幼稚園では活発な女の子でした。第1回でも触れたように男勝りというか、男の子と戦隊ごっこをしては走り回り、1人で大人しく遊ぶのとは真逆のおてんば娘。
小学1年生になるタイミングで引っ越しをしました。埼玉県から埼玉県への移動で距離的にはそんなに離れていなかったけれど、6歳の子どもにはとても大きな出来事で、誰ひとり知らない小学校に入学するのはとても不安がありました。
入学式を終えて、まずお友達になろうと思ったのは、名前の順に並んだ私の席の後ろに座っていた女の子でした。
勇気を出してクルッと後ろに振り返り「ねえ、なんてお名前?」と聞いて、「やった! 話しかけられた!」と嬉しかったのを覚えています。
偶然その子とは家も近く、一緒にいる時間も多くなりました。でも、その子にはもともと仲の良い子もいて、ずっと私と一緒にいるというわけではありませんでした。
その子といない時はどうしよう……。ゼロから人とコミュニケーションをとるのはなかなか難しい、ということを知りました。
どうしてみんな同じ子とずっと一緒にいるんだろう。私は誰と話していればいいんだろう。
誰と話しても誰と遊んでも、なんだか落ち着かず自分がその場に溶け込めていないような、居場所が定まらないような不思議な感覚でした。
幼稚園まではきっと考えもしなかったことを急に考えるようになり、この頃から性格にも変化が表れてきました。
“親友”という感覚があまりわからず、“私は人への興味がそこまでないということなのかな?”と思うようになりました。
そのタイミングで、芸能活動をスタートさせました。グループの一員として全国ツアーで地方を回ったり、撮影で海外に行ったり、毎日のようにライブや握手会をしたり、家族以上にメンバーとスタッフさんといることが多くなりました。
ここでまた不思議に思うことが出てました。
「同じ体験をして、同じ言葉を聞いても、人それぞれ全く違う受け取り方になる」。学校や習い事、職場でも共通することかと思いますが、私は中学生の時に強烈に実感するようになりました。
「私はこう感じたからこうしなくちゃいけないと思ったけど、みんながみんなそう思うわけじゃないんだ」
この頃に人に対して感じることや考えることよりも、“どうして私はそう感じるのか。どうして人の輪に馴染めないのか”と、自己分析の方に意識が向いていきました。
他者との時間に何かを求めるより、まず自分がどうしてそう思うのかを知りたかったんですね。
自然と1人で過ごす時間も増えていき、新たな出会いに積極的になることも減っていきました。
私は人が嫌いなのか、寛容さがないのか、と悩みながら人と距離を縮めることを半ば諦めていたころ、舞台の世界に出会いました。
これについてはまた詳しく書きたい大切な出来事だったのですが、ここで“同じ感覚を持つ人”に出会えたんです。
自分が今まで言葉にできなかったモヤモヤを明確に言葉にする“共通言語”というものを教えてもらい、作品作りなどで共に過ごす時間がすごく楽しくて「私は人を嫌いなわけじゃないんだ」とわかったことがとても嬉しく、救われるような思いでした。
誰かといることが嫌いなんじゃなくて、私には自分を整えることと、心を保つための時間が必要で、それが他者との時間よりも優先順位が少し高いから1人が好きで、落ち着くんだ。という答えが出ました。
お友達や先輩とお話しする時間も、乾杯する時間も好きだけれど、結局自分で自分を整えることが、1人でいる時間が、私には一番合っていると感じます。
だからって扉を閉ざすのではなく、人に少し近づいては休憩して、それを繰り返しながら、自分が好きだと思う人と1人ずつ少しずつコミュニケーションをとって、人と生きるあたたかさも知っていきたいです。
これを読んでくれている方に、あぁ少しわかるかもしれないなとか、全然わからないけど、なんだかおもしろいなとか、思ってもらえたら嬉しいですし、それも出会いだなと思います。
自分を整える“ぼっち時間”を大切にしながら、出会いも楽しんで、未来を生きたいです。
冒頭の写真に写っているのは、この連載バナー写真の撮影日、「これからよろしくお願いします、前島さんの好物のたまご料理です」と編集担当さんにいただいた目玉焼きのピンバッジです。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。また、俳優座劇場で行われる朗読劇『青空』に出演が決定。6月21日(月)、6月27日(日)の回に出演する。
Twitter:@_maeshima_ami
オフィシャルファンクラブ:https://maeshima-ami.jp/