ダ・ヴィンチニュース編集部 今月の推し本+【5月テーマ:母の日に贈りたい1冊】

文芸・カルチャー

公開日:2021/5/7

ダ・ヴィンチニュース編集部推し本バナー

 ダ・ヴィンチニュース編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。5月のテーマは、「母の日に贈りたい1冊」です。

薩摩揚にお弁当、おやつの時間に沖縄胃袋旅行…ほかほかで懐かしい『海苔と卵と朝めし』(向田邦子/河出書房新社)

『海苔と卵と朝めし』(向田邦子/河出書房新社)
『海苔と卵と朝めし』(向田邦子/河出書房新社)

 向田邦子さんが綴る美しく豊かな文体と食欲をさそう固有名詞を含んだ美味しいネタが、心をぽっと温かくしてくれる。昭和の情景を想像するのも楽しい。仕事に家事にいつだって忙しい“お母さん”には作ることから解放されて、食べる側として存分にグルメエッセイを味わってもらいたい。いくつになっても親にとって子どもは子ども。カバーの中央に描かれた梅干し。昔から大好物な私に母は今も欠かさず差し入れをしてくれる。うん、すっぱい。(中川寛子/ダ・ヴィンチニュース副編集長)


「家族のため」と頑張るお母さんへ。自分軸で考える大草直子さんの生き方『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』(大草直子/講談社)

『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』(大草直子/講談社)
『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』(大草直子/講談社)

 自分が母親になって「家族が最優先」の暮らしが始まり、そんな生活が当たり前だと思っていた。「私はどうしたい?」といつも自分軸で考えているという大草直子さん、そして彼女の家族の考え方に触れてハッとした。彼女の生き方は軽やかでエネルギッシュ。自分軸で選択できたらもっと自由になれる、そう思わされた。自分のことは後回しで、子どものため、家族のためと日々頑張っている、全てのお母さんに贈りたい。(丸川美喜)


上質なリフレッシュタイムを贈ろう『コーヒーは楽しい!』(チュング=レング・トラン、セバスチャン・ラシヌー:著、河清美:訳/パイインターナショナル)

『コーヒーは楽しい!』(チュング=レング・トラン、セバスチャン・ラシヌー:著、河清美:訳/パイインターナショナル)
『コーヒーは楽しい!』(チュング=レング・トラン、セバスチャン・ラシヌー:著、河清美:訳/パイインターナショナル)

 コーヒーに関する知識が詰まった一冊。おいしい淹れ方はもちろん、豆の栽培方法やラテアートの作り方などの専門的な内容も網羅している。とはいえ、どのページもかわいらしい絵を使って分かりやすく解説しているので、コーヒー初心者も図鑑を読むように楽しめる。おうち時間が長くなり、これまでにないストレスを抱えたお母さんは多いはず。コーヒーを飲みながらの休憩時間に本書のページをめくれば、いつものコーヒーでも香りと味わいがグッと深くなり、リフレッシュ感が高まる……かも。(坂西宣輝)


折角の春の陽気の中、花も見に行けないから“本で絶景旅行”をプレゼント! 『世界中に贈りたい花の絶景100』(はなまっぷ/三才ブックス)

『世界中に贈りたい花の絶景100』(はなまっぷ/三才ブックス)
『世界中に贈りたい花の絶景100』(はなまっぷ/三才ブックス)

 母の日といえば花! という家庭も多いだろうが、今年は“花旅行気分”を贈るのはいかがだろうか。自粛自粛で季節を感じることも少なくなり、寂しく思っている方へのプレゼントにオススメなのが、大きめサイズでまばゆい花景色を堪能できるこの1冊。選び抜かれた写真は美しく、見ているだけで自然と気分が上向く。日本全国100か所の四季を愛でながら、実際に行けるようになったらどこへ行こうか、想像を膨らませる時間も癒しになりそうだ。(遠藤摩利江)


読書家の母に私から薦めてハマらせたシリーズ『なんて素敵にジャパネスク』(氷室冴子/集英社)

『なんて素敵にジャパネスク』(氷室冴子/集英社)
『なんて素敵にジャパネスク』(氷室冴子/集英社)

 私の母は常になにがしかの本を読んでいるような読書家なので、今でも面白い本はたいてい母から教わるのだけれど、私が中学生だった時に図書館から借りていたこの作品(小説の人妻編の中盤だった記憶がある)を母が見つけ、気づけば我が家には、コバルト文庫の全巻と山内直実先生とのコミカライズ、さらには『ざ・ちぇんじ!』の小説&コミカライズまですべて揃う事態に。大人の力を感じた瞬間でした。母娘でハマった大切な記憶です。(宗田昌子)


はるかなパリ(ただし華やかではない)に、想いを馳せる。『ねむれ巴里』(金子光晴/中央公論新社)

『ねむれ巴里』(金子光晴/中央公論新社)
『ねむれ巴里』(金子光晴/中央公論新社)

 詩人・金子光晴が、自身の「万国放浪」を晩年に振り返った、三部作の2作目。1928年、いろいろ行き詰まってしまった30代の光晴は、夫人を伴って旅に出る。上海に渡り、窮乏しながらもシンガポール、ヨーロッパへと旅を進めていく、その過程であぶり出される「しぶとい人間の生命」の姿に惹かれる紀行文だ。両親が一定の年齢を迎えると、旅をプレゼントしてみたくなるが、今はその状況ではない。光晴の紀行文は「行った気分」が得られる楽しげで華やかなものではないけれど、どこか精神的な自由さが感じられて、楽しい。(清水大輔/ダ・ヴィンチニュース編集長)