「仕事がしんどくてヤバい」と思ったときに考えたい“働く理由”。退職・転職が頭をよぎる人にすすめたい考え方
公開日:2021/5/10
悩めるビジネスパーソンに寄り添うイラストレーター・汐街コナさんの著書『仕事がしんどくてヤバいと思ったら』(中央公論新社)は、疲れた人たちの心にきっと刺さる1冊。
タイトルのごとく、とにかく“目の前の仕事をやらなきゃいけない”と、日々、追い詰められている人たちを励ましてくれる。
忖度を求める職場をどう思うか?
会社や職場環境などに対して“ブラックか否か”という議論が目立つ昨今。本書のタイトルだけを見ると、そこからとにかく“逃げる”選択肢を提示していそうだが、じつは、この本は必ずしもそうではない。
例えば、本書は社会によくある「忖度」にも言及している。以下のようなケースも、働いていたら考えられるだろう。
中途入社した会社で、上司から「毎朝始業前に社長が参加する会議がある」と告げられた社員。結局、「任意なら出ません」「業務命令なら時間外労働として残業代請求します」と言って、朝の会議を拒むシーンが紹介されている。
他の社員もやっているからと、暗黙のルールを強いられる場面はありがちだ。しかし、著者はこのケースを引き合いに出しつつ「従業員側に忖度させ、責任がない形で、会社に都合よく働かせる」ようなやり方は「非常に卑怯だ」と、会社側へ辛らつな意見を浴びせる。
辞めたいときは求人情報を見るのもアリ
辛さを感じる場面もあるが、だからといって「退職や転職」だけが選択肢かといえば、そうではない。
著者が提示するのは、両面の可能性だ。たしかに、過度なハラスメントなどが横行しているならば、すぐさま辞めようとする選択肢もある。しかし、いったん「落ち着いて、ざっくりでいいのでキャリアプランを考えてみる」ことで、その先が見えてくる場合もある。
著者は過去に「入社1カ月で転職を決意したものの、3年はその会社にいよう」と決めた経験もあるという。それは、よく言われるように「3年の実績がないと転職できない」という話があった上で、なおかつ「何のために何を身につけるか」と、スキルを考えたためだ。
しんどいと思ったら「気軽に求人情報を見る」というだけでもよく、そうすれば「今勤める会社だけがすべてではない」と気楽に考えられるようになる。また、シンプルながら「寝るのが本当に効果的」と念を押す。
仕事の意義「『どう』生きるため」か
仕事とは何か。働いていると、どこかのタイミングで誰もが一度は考えるかもしれない。その答えは千差万別であるが、本書もその問いに迫っている。
突き詰めてみると、仕事をする理由は「自分」に行き着く。そして、よく聞く「生きるために働く」というのはもちろん、一歩踏み込んで「『どう』生きるため」かを考えてほしいと問いかける。
この問題が難しく見えるのは、おそらく人生のステージによっても仕事の意義が変わってくるためだ。仕事自体に生きがいを求める場合や、家族を支えなければならないという使命感をもつ場合など、抱えている思いにより、その目的も異なってくるはずだ。
ただ、本書は「自分は何のために、『どういう人生をおくるために』、働いているのか」とこちらへ問いかけてくる。その問いかけは、どの選択肢を取るにしても変わらないはず。せわしない日々を見つめ直すためにも、著者の主張にぜひとも目を向けてもらいたい。
文=カネコシュウヘイ