『うる星やつら』を彷彿!? 地球の常識ゼロの皇女と子ども嫌いな独身男性のドタバタSFコメディ!
公開日:2021/5/12
地球侵略にやってきたのは、なんとパン一姿にうさ耳の幼女!? 実は彼女こそがラビー星の皇女・リリン様であり、宇宙人であるからして人間の常識がなく、そんなあられもない格好をしている。奇想天外な出だしで始まる『人類を滅亡させてはいけません』(蒲 夕二:作画、高畑 弓:原作/白泉社)は、SFと日常が交差する展開にぐいぐい引き込まれる。たまたまパン一姿のリリンに遭遇した26歳の会社員・川北理は、不審者と思われるのを避けたい一心で、咄嗟にリリンを家に連れ帰ってしまうのだ。
本来は偵察後に大船隊が攻め込み地球を侵略する手はずだったが、偵察機が工事で壊されてしまい、リリンとお供のコカトリスは地球に取り残されてしまった。救護信号がラビー星に届くのは5年後……。ということは、5年後に人類は滅亡するかもしれない。恐るべきリリン様なわけだが、そこは見た目通り幼い女の子だ。パパにもママにも会えないと知ってリリンが泣きじゃくった瞬間、破壊的超能力が暴走! 当初は半信半疑だった理だったが、メチャクチャになった部屋を見て慄然とする。
かといって、見知らぬ地で一人ぼっちの幼女であることに変わりはない。その姿に理は、一人ぼっちで泣いてばかりいた幼い頃の自分を重ね合わせ、リリンを保護しようとする。そして〈地球を滅ぼすなんて言わない心の優しい子〉に教育しようと心に誓うのだ。こうして宇宙人の侵略者とうだつのあがらない独身男の奇妙な同居生活が始まった。
SFラブコメの名作『うる星やつら』を彷彿とさせる設定だが、本作は宇宙人の幼女と親代わりとなる青年を描くSFホームコメディとなっている。なにしろリリンは地球の常識が皆無で、すべてが初体験。人間の食事が口に合わず、お菓子のうまい棒ばかり食べたがったり、オモチャではなくサランラップを欲しがったりと好みも謎すぎる。一からどころか、ゼロから教育しなければいけないわけだけど、その無垢さがなんともユーモラスで愛らしいのだ。
表向きは姉の子ということにして、理は高校時代に片思いしていた持田さんが保母をしている幼稚園にリリンを通わせることに。リリンを通して恋心を寄せる持田さんとも交流が生まれ、侘しいお一人様ライフが賑やかな生活に一変。ここらへんはコメディとしてリリンのトラブルメーカーぶりに頬を緩ませながら、疑似家族が次第に心を通わせていく展開に涙腺まで緩むのだから気が抜けない。
今のところリリンに翻弄されっぱなしの新米パパの理だけれど、もしかしたら彼こそが地球を救う英雄!……になるかもしれない。理がどんなふうにリリンを育てていくのか目が離せない。なにしろ地球の命運がかかっているのだから。
文=大寺明