子どもたちの不幸の原因は?「教育虐待」の実態を明かす『やりすぎ教育 商品化する子どもたち』に大きな反響
公開日:2021/5/21
日本は先進国の1つに数えられるが、“生きにくさ”を抱えている子どもたちは多い。2020年にユニセフが行った調査では、日本における子どもの「精神的幸福度」は調査対象38カ国中37位と、ワースト2位の結果となったそうだ。2021年5月14日(金)に発売された新書『やりすぎ教育:商品化する子どもたち』(武田信子/ポプラ社)では、そんな子どもたちの幸福について教育の面からアプローチが行われている。
親がよかれと思って子どもに施す教育は、必ずしも本人のためになるとは限らない。過度な期待を押し付けられた子どもは自由を奪われ、心と体には目に見えないダメージが蓄積されていく。最悪の場合、子どもの人権を侵してしまうケースにまで発展する可能性もある。それこそが近年囁かれている「教育虐待」の問題だ。
同書では、学校だけでなく家庭内でも起こっている「不適切な教育(エデュケーショナル・マルトリートメント)」の実態を紹介。また「やりすぎ教育」がもたらす危険性や、子どもの幼児期における発達プロセスから見た適切な教育について分かりやすく解説されている。「学び」だけでない「遊び」の重要性、「やりすぎ教育」の予防策なども掲載されているため、自分の子どもに対する教育に活かすこともできるだろう。
本当に子どもを思った教育とは何なのか、「教育熱心」と「教育虐待」のボーダーラインはどこにあるのか…。現代社会における教育問題に深く切り込んだ内容に、多くの読者が危機感を抱いたようで、ネット上では「本が届いて昨夜から今朝にかけて一気に読んだ! この傾向への問題意識があがる一方で、ますます加速しそうな予感が拭えないのが怖い」「まだ『はじめに』しか読んでないけど、大事なことが書かれていそうだと思った。批判されていることに近いことをやるにしても自覚と危惧が必要だよと思う」といった反響が上がっている。
著者の武田信子は、臨床心理学や教師教育学を専門とする元「武蔵大学」人文学部教授。『社会で子どもを育てる』や『保育者のための子育て支援ガイドブック:専門性を活かした保護者へのサポート』といった著書があり、長年にわたって子どもの養育環境の改善に取り組んできた。家庭や学校の現状を詳しく知る武田ならではの教育論は、子どもと関わるあらゆる人にヒントを与えてくれるはずだ。
一生続いていく“真の成長”を考えさせる教育・子育て改革論。教育者や子どもを持つ親はもちろん、教育に関心のある人はぜひ一度読んでみてほしい。