いいアイデアだけがアイデアではない。優れたアイデアを出せる人には共通点がある!/100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる②
公開日:2021/5/21
『100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第2回です。
才能、センス、道具なんていらない。どんな場合でも、いいアイデアを考えてくる人には共通点があります。それは「とにかくたくさん数を出すこと」。1案しか持ってこない人のアイデアが優れていたことは、ただの一度もありません。ここでは“考え方”のヒントを教えます。
優れたアイデアに共通すること
僕はコピーライターとして働くかたわら、コピーライター養成講座の講師をつとめています。コピーの書き方をひととおり説明したあとは、受講者にコピーの課題をやってもらいます。
「世の中から不倫をなくすためのコピー」
「人種差別反対を訴えるコピー」
など、課題の内容はさまざまです。コピーだけではなく、「新しいビジネスのアイデアを考えよう」といった課題を出すこともあります。
しかし、どんな課題であっても、いいアイデアを出す人には共通点があります。それは、とにかくたくさん数を出すことです。性別や年齢、人柄や雰囲気などはバラバラなのですが、「たくさん出す人」という点は1回の例外もなく共通しています。逆に、1案しか提出してこない人のアイデアが優れていたことは、ただの一度もありません。
それでも、ほとんどの受講者は1案、多くて3〜4案しか書いてきません。正確には「書かない」のではなく「書けない」のです。
僕も新人のころは、上司に「100案は考えてくるように」と言われても、まったくできませんでした。100案どころか、3〜4案出たところで頭が固まってしまうのです。
手持ちぶさたなのでスマホをいじったり、YouTubeを見たりしているうちに、時間だけがどんどん過ぎていく。結局タイムオーバーで、つまらない3〜4案をそのまま企画会議に持っていくハメになる。そんなくり返しでした。
こうなってしまう理由は簡単。そもそもアイデアとは何かを理解していないからです。あなたも「アイデアとは何か説明しなさい」と言われて、明確には答えられないのではないでしょうか。理解していないだけならともかく、間違った思い込みをしている人が大半のように思います。
アイデアとは何かを理解していないのに、アイデアを出せるわけはありません。
そこで本章では、アイデアの話をする前に、そこにまつわる誤解を解いていきたいと思います。アイデアほど身近なのに誤解されているものはありません。ほとんどの人が必要以上に難しく考え、自分にムダに高いハードルを課しているのです。
この章を読んだあとは「なんだ! アイデアって、こんなことだったのか」と、気が楽になると思いますよ。
企画会議で「スイマセン。全然おもしろくないんですけど……」と前置きをしてから自分の考えてきたものを出す人を、しばしば目にします。ここからわかるのは、いいアイデアだけがアイデアだと思い込んでいる人が実に多い、ということです。
この本でも「いいアイデアを100案考えよう」なんてことは、ひと言も書いていません。にもかかわらず、ほとんどの人は「100案考えて」と言われると、「いいアイデアを100案考えねば」と勝手に解釈してしまい、身動きが取れなくなってしまうのです。
僕は若いころ、先輩コピーライターに「つまらないコピーも書けないやつに、いいコピーが書けるわけない」と言われたことがあります。このアドバイスはまさに「目からウロコ」でした。それまでの僕は、実力もないのに最高のコピーを書いてやる! と張り切って、空回りしていたのです。
「そうだ。これは社内会議なんだ。世の中に出すわけじゃない。つまらなくてもいいんだ」
そう思った瞬間、心がふっと軽くなって、コピーをどんどん書けるようになったのを今でも覚えています。
あなたもまず「いいアイデアだけが、アイデアである」という誤解を捨ててください。ありがちだったり退屈だったりしても、アイデアはアイデアです。企画会議では「おもしろくないんですけど……」なんて前置きはせずに、堂々と提案しましょう。
上司にとっては「最高の案が思いつかなくて、1案しか出せませんでした」というより、つまらなくても大量の提案を出してくれる部下のほうが、はるかにありがたいものです。「この方向はないな」という確認ができるし、今はつまらなくても工夫しだいでおもしろいものに発展していく可能性があります。