自分の肩書き、居場所について/前島亜美「まごころコトバ」④
公開日:2021/5/21
アイドル活動を経て、声優や舞台を中心に活躍中の前島亜美さん。常にまっすぐ生きる彼女が、何を思い、感じ、触れてきたのか。心にあるコトバを真心(まごころ)こめて紡ぎます。
アイドルとして活動を始めてから沢山の仕事をさせてもらった。
メンバー全員でのグループ活動を重ねる中で、少しずつ個人での仕事もいただけるように。
私にとって初めての個人仕事は13歳。ティーン誌の専属モデルだった。ほとんど始発電車で現場に集合し、1日撮影を行う。当時はマネージャーの同行なしで、毎度変わるスタジオに向かうだけでもドキドキし、初めましてが多いモデルさんとの撮影は刺激ばかりだった。
いわゆるアイドルポーズとは違う見せ方を求められる撮影。洋服を綺麗に見せる、読者の憧れになる、表紙を目指す、ティーン誌とはいえアイドルの現場とは全く違うモデルの世界はとても新鮮だった。
同じ頃、初めてドラマ撮影に参加、ゴールデンの刑事ドラマ。ドラマの事なんて何一つわからない。台本を片手におどおどきょろきょろしていた。
視聴者としてみるドラマはポンポンと場面が展開し、さくさくと物語が進んでいく。しかし、撮影現場に飛び込むと、ドラマを作るのはこんなに大変なのかとものすごく驚いた。
たった一瞬のシーンでもカメラの角度を変えて何度も撮影し、その都度、全く同じ動きをしないといけない。あらゆる技術のプロの方がいて、ドラマ撮影ってすごいなと圧倒された。
「アイドルなら、なんでもできないとね」、よく言われる言葉だった。歌やダンス、演技、トークにバラエティ、SNSにセルフプロデュース。
アイドルってなんだろう? 本職ってなんだろう? アイドルはいろんなことができて当たり前、そうじゃないと必要としてもらえない。そんなふうに思っていた。
「なにか爪痕を残さないと」がいつも頭にあって、ゴールデンのバラエティに出た時は緊張で震える手を精一杯に挙げて、激辛グルメを食べたり罰ゲームを受けたり、とにかく頑張らなくちゃとガムシャラだった。
この世界では肩書きを名乗ることが多い。女優です。モデルです。声優です……など。
それぞれがプロとして、その道を極めるため、一筋で活動していて、とても素敵だなと思う。最近では垣根を越えた活動をされる方も多いが、それでも“基盤”というものがしっかりとあって、だからこそとても素敵なんだと思う。
では、私の肩書きはなんだろう?
スタートがアイドルだったことで、どこにいっても「まあアイドルだもんね」と言われ、辞めた今も“元アイドル”という経歴はずっと変わらない……。
芝居が好きで、演劇や表現が好きだけど、様々な活動をしていることで、女優ですというのも、タレントですというのも、声優ですというのも、どこかしっくりこなくて、自分の肩書きは、居場所はどこなんだろうと悩んだ時もあった。
でも、アイドルをしてきたから、いろんな世界の仕事に挑戦できて、その道のプロに沢山出会い、いろんな種類の感動を体験した。
どの世界にも順応しようと努力してきたことが、全て糧になっている。
だから、私はこの道でこの生き方で良かったと思うし、自分で自分を決めつけることはやめよう、と思った。
誰かにとって元アイドルであっても、誰かにとって女優で、誰かにとって声優であっても、私が携わる表現や作品で、誰かの心に届くものがあるならそれでいいなと。
唯一の存在、何でも屋を目指しし、これまでの経験を糧に自分の可能性を狭めず、大好きな芝居をこれからも学び表現していこうと思う。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。また、俳優座劇場で行われる朗読劇『青空』に出演が決定。6月21日(月)、6月27日(日)の回に出演する。
Twitter:@_maeshima_ami
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