夜中に重曹で煮て磨いたやかんがピカピカになって大満足。さてお次は…/38歳、男性、独身――淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。③
公開日:2021/5/27
『38歳、男性、独身――淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第3回です。
男女問わず共感できる、笑いあり涙ありの独身エッセイ、誕生!「そのうち結婚するっしょ」と思いながら、気づけばアラフォーになっていたすべての人へ。圧倒的共感でお送りする独身論。
夜中にやかんを煮る男
重曹でやかんを煮る。ピカピカのやかんに満足する。そんな僕の目に留まった鍋。
僕が愛用しているやかんは20年近く使っているものです。
何の変哲もない普通のやかんですが、おそらく数百個分のカップラーメンのお湯を沸かし、数千杯分のコーヒーを淹れるお湯を沸かしてくれた一人暮らしの相棒です。
そんな僕のやかんですが、20年使っているとは思えない輝きを放っています。なんせ、定期的に重曹で磨いているので外側も内側もピカピカです。やかんだけではありません。我が家のキッチン用品はいつだってピカピカなのです。
このやかん、去年一度重傷を負いました。冬のキャンプに持って行き、石油ストーブの上に置いていたら中の水が全て蒸発し、長時間空焚きになっていたのです。加えて、飛び散った料理の油はねが付着していました。
やかんはすっかり全体が茶色に変色し、所々にシミのような焦げが付着しています。重曹で磨いてもほとんど取れません。やかんとしては問題なく使用できるのですが、使うたびに(汚いな……でも、どうしようもないしな……)と、もやもやとした気持ちになっていました。
そんな時に見つけてしまったのが、ボンスターという商品。
スチールウールと言われている素材で、ステンレスの焼けに効果があるとうたっています。さらにネットで検索すると「ボンスターで磨く前に重曹を溶かしたお湯でやかんを煮るとよい」という情報が。
早速、家で一番大きな鍋を引っ張り出し、たっぷりの水、重曹、やかんを入れてコンロの火にかけます。「やかんを鍋で煮る」という行為、非日常感があります。
しばらくグツグツと煮たら火を止めて温度が下がるのを待ち、ボンスターで力いっぱい磨きます。おそらく目には見えないくらい細かい傷がつくと思いますが、かまいません。
すると、やかんは磨いたところから銀色に輝いてくるではありませんか。
その輝きは、ただ重曹で磨いていた頃よりも美しい気がします。試しにやかんを煮ていた鍋をボンスターで磨いてみると、明らかに美しくなったことが分かります。
これは大変なことです。
これまで定期的に磨いていたステンレス製品たちは、現在ベストな状態ではない。伸びしろがあることを知ってしまったのです。包丁、スプーン、ナイフ、ヘラ、お玉、五徳。目に入るステンレス製品を全て鍋に入れ、重曹で煮沸しボンスターで磨いていきます。
家中のステンレス製品がピカピカになり、大満足です。時刻はすっかり真夜中でした。なぜかこういった作業を夜中にやってしまいます。
心地いい達成感の中、年に1回はこの作業をしよう、年末の恒例行事にしてもいい、そう考えていると目に入ったのは、これまで様々なものを煮た鍋です。鍋の内側はやかんの次に磨いたし、その後も様々なものを重曹で煮たので、現状おそらくどの製品よりもピカピカです。
しかし、外側は手付かずなのです。少し考え、まあいいかとはならず。一番の功労者となった鍋を放っておくわけにはいきません。
鍋の大きさを正確に計測し、その鍋がすっぽり入るサイズの鍋をAmazonで注文しました。炊き出しとかで数十人分の豚汁を作る用であろうサイズの両手鍋です。一人暮らしのキッチンにはあまりにも不釣り合いな大きな両手鍋で鍋を煮ながら、さて、この両手鍋が汚れたらどうするかなと考えながら、夜は更けていきます。