新型コロナの流行で再認識された「肺」の重要性。肺の強化で健康維持を!/最高の体調を引き出す超肺活①

健康・美容

公開日:2021/5/26

呼吸器研究×循環器研究×自律神経学から生まれた「肺活トレーニング」

 肺は胸郭の中に収まっています。

 胸郭とは、肋骨や胸骨、背中の胸椎に囲まれたかご状の骨格のことを指します。

 

 呼吸の際、肺そのものが膨張や収縮をしているような気がしますが、じつは肺にその機能はありません。胸郭にくっついているさまざまな筋肉が柔軟に動くことで、胸郭が広がったり縮んだりし、胸郭に連動して肺も膨張や収縮をしているのです。

 呼吸のために使われる筋肉には、肋間筋、斜角筋、前鋸筋、脊柱起立筋、横隔膜などがあり、これらは「呼吸筋」と総称されています(詳しくは153ページ)。

 呼吸筋はゆっくり深い呼吸をするときに使われる筋肉です。それゆえ、肺の機能が衰えて浅い呼吸になっている人は、間違いなく呼吸筋がガチガチに硬くなるなど劣化しています。

 肺胞そのものは鍛えることができなくても、呼吸筋ならアプローチが可能です。

「肺活トレーニング」は、さまざまな呼吸筋の柔軟性を高めることで、胸郭がスムーズに拡張するようにしていき、ゆっくりと深い呼吸をできるようにします。

 呼吸器研究、循環器研究、運動生理学、機能解剖学、自律神経学をベースに、長年の臨床経験やトップアスリートへの指導経験から生まれた、まったく新しい肺機能改善法です。それぞれのトレーニングに確固たる「肺機能を高めるエビデンス」があるため、血液に酸素を取り込む量を増やし、血中の酸素濃度をアップさせます。

 実践方法は、第4章をご覧いただければと思います。

 

肺活力を伸ばせば、血中の酸素濃度が上がる!

 なぜ肺活トレーニングをすると血中の酸素濃度を高めることができるのか?

 その理由は、呼吸1回の換気量が増えるからです。

 

 換気量とは、呼吸によって出入りする空気の量のこと。安静時の1回の呼吸で、平均500ミリリットルの空気が呼吸器の中を出入りします。

 このとき注目すべきは、500ミリリットルのうち、およそ150ミリリットルはガス交換に関与しない空気で、この量は「死腔量」と呼ばれ、つねに150ミリリットルで一定しています。

 解剖学的に死腔とは、呼吸器系の中で肺胞が存在しない部分(鼻から気管支までのスペース)のことを指します。ガス交換に直接関与していない呼吸器です。

 つまり通常、呼吸1回で500ミリリットルの空気が出入りしても、肺胞に到達するまでに150ミリリットルが失われ、残った平均350ミリリットルの空気が肺胞でガス交換されているわけです。

 一方、1回の換気量は、胸郭の可動域を広げ、呼吸を深くすることによって増やすことができます。

 たとえば、1回の換気量が1000ミリリットルに増えれば、死腔量の150ミリリットルを引いて、850ミリリットルの空気がガス交換に使われることになります。

 

 このことが何を意味するかというと、肺胞の機能が変わらなくても、1回の換気量さえ増やせば、ガス交換に使われる酸素が増え、その結果、血中の酸素濃度も高めることができるということです。

 

 たとえるなら、換気量を増やすこととは、パソコンのCPUを増やすことに似ています。CPUを増やせばスムーズにパソコンを動かせるように、換気量を増やすことでスムーズに酸素を取り込めるようになるイメージです。多少パソコンが古いものでも、CPUが最新なら、問題なく使うことができます。

 それと同じで、肺が加齢によって多少衰えていても、換気量を増やせば、いつまでもたっぷりの酸素を体内に取り込むことができるのです。

 脳細胞の衰えを防ぐために「脳トレ」が有効なのと同じで、肺の衰えを防ぎ換気量を増やすためには「肺トレ」が必要だといえます。しかし、意識的に肺を鍛えている人は少ないのが実状です。

 そこで活用していただきたいのが「肺活トレーニング」です。

「肺活トレーニング」は、1回の換気量を増加させるのに絶大な力を発揮します。その効果のすごさは、第4章で紹介するモニターさんたちの肺年齢の変化をご確認いただければ明らかでしょう。

 

肺の強化で自律神経が整い健康のスパイラルに!

 肺を鍛えることは、自律神経の視点からも大きなメリットがあります。

 じつは、呼吸こそ、自律神経を直接コントロールできる数少ない手段なのです。

 詳しくは本文で解説していきますが、ゆったりした深い呼吸は、自律神経のうち、心身をリラックスさせる「副交感神経」の働きを高めることがわかっています。

 しかし、ストレスや生活習慣の乱れによって、現代人は副交感神経と逆の働きをする「交感神経」が過剰に働いて、自律神経のバランスが崩れてしまっている人が非常に多いです。

 自律神経は、血液循環や体温調整、免疫機能、内臓機能などを、脳の指令とは関係なくコントロールしている生命維持装置です。

 そのバランスが崩れているということは、さまざまな生活習慣病や感染症を引き起こす引き金となります。

 肺活力を高め、ゆっくりと深い呼吸で自律神経を整えれば、呼吸器系のみならず、体調に間違いなく好影響を与えることができるでしょう。

 

 これまで、ご自身の「肺」の状態に無頓着だった方も多いかと思います。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって、肺を守ることの大切さは誰もが知るところになりました。

 ウイルスや細菌に負けない力強い肺を手に入れ、最高の体調を引き出すために、ぜひ本書を活用してください。

 

 肺活力を上げれば、あなたの人生が変わります。

小林弘幸

 

そのまま放置したら危険です!
「肺の機能低下」を知るためのチェックリスト

□喫煙者(過去に喫煙歴がある人も含む)
□ぜんそくなどの呼吸器疾患がある
□風邪が3週間以上治らないことがある
□1日に咳が何度も出る
□黄色や粘り気のある痰が出る
□呼吸すると、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする
□長い坂や階段を上るときに息切れする
□歩いていると、同年代の人についていけない
□ささいなことにイライラする
□集中力が続かない
□不安やパニックになりやすい
□慢性疲労を抱えている
□肩こりや腰痛がひどい
□便秘に悩んでいる
□ぐっすり眠れない
□冷え性や肌荒れに悩んでいる

3つ以上該当する人は、肺の機能が衰えている可能性があります。肺活力を高めて改善していきましょう!

<第2回に続く>