雨魔/巴奎依の社会不適号㉝
公開日:2021/5/28
雨というだけで、気が滅入る。
出かける気になんてさらさらならないし、2、3歩だけ歩くことさえ、億劫に感じる。
それどころか、水を飲むことにも抵抗がある。
まずベッドから起き上がって、歩いて、グラスを手に取って、ウォーターサーバーのボタンを押す。
あまりにも面倒くさい。
グラスを洗っていなかった日にはもう絶望的だ。
低気圧で、身体が自分のものじゃないみたいに動かない。ただでさえ偏頭痛持ちだというのに、もはや何が原因で頭が痛いのかも分からない。
雨はなぜこんなにも無気力にさせるのだろうか。
とにかく何もしたくない。
毎日のように届く宅配便を開封する作業も、どんなに楽しみにしていた物が届いていようが、それが雨が降る今日である限り、邪魔者でしかない。
そういえば、いついかなるときも私は口癖のように「何もしたくない」と言っていたし、「今日はもうダメです」とあまりにも多すぎる頻度で宣言していた気がする。
雨だけのせいではないような気がしてきた。
雨の日は考え過ぎてしまうのだ。
うまくいかない原因を突き詰めて考えてしまうし、なんなら過去の失態や、過去の自分の言動を思い出しては、羞恥心で消えたくなる。
そんなの自傷行為でしかないのに、昨日までは忘れたくて忘れていた記憶とかも、すべて突然鮮明に蘇ってくる。
雨は悪魔のような強いマイナスの力を持っているのだ。睡魔のような、そういった類の悪魔だと私は思っている。「雨魔」とでも言うのだろうか。
だから雨の日に何か特別なことをしてはいけないし、雨の日に何か大きな選択をしてはいけないような気がする。
カップルが喧嘩をして感情的になって「もう別れる!」と勢いで言ってはいけないように、
感情がフラットではないときに何か選択をしてはならないし、環境がフラットではないときにも大きな決断はしないほうが吉のような気がするのだ。
こんな日に出来ることは、自分を労ることだけだ。
人はもっともっと、毎日がご褒美で良いと思う。誰しもがみんな、ちょっとだけ我慢をして生きているのだ。
その我慢が蓄積されていく前に、少しずつ自分を労って甘やかしていく。
今日の私は、段々と溶けてオイルになっていくアロマキャンドルを眺めることで精一杯だし、そんな時間の過ごし方しか出来ない。
そんなものなんだ。
ともえ・けい
2012年よりA応P(アニメ“勝手に”応援プロジェクト)のメンバーとして活動をスタート。2020年8月2日に、A応Pを卒業。現在、インターFMにて毎週土曜28:30〜「DJサブカルクソ女の音楽解体新書」にてDJ番組を担当、DJCD「A応P BEST DJCD PRODUCED by DJサブカルクソ女」をリリースするなど、「DJサブカルクソ女」としても活動中。社会不適合者(自称)。
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