人気アニメ『転生したらスライムだった件』は、単に強いスライムが無双する物語じゃない!その魅力と面白さを考察
公開日:2021/6/14
『転生したらスライムだった件』の勢いが止まらない。2021年7月に2期・第2部の放送を控えるいわゆる“異世界転生”ジャンルのアニメ作品だが、元々は2013年に「小説家になろう」に投稿されたweb小説から始まり、2014年に書籍化され、2015年にコミカライズ版が発売、2018年10月にアニメ第1期が放送され、2018年10月にはスマホ用ゲームアプリ『転生したらスライムだった件 〜魔国連邦創世記(ロードオブテンペスト)〜』がローンチ。そして2021年1月にアニメ第2期 第1部が放送され、2021年4月にスピンオフコミック『転生したらスライムだった件 転スラ日記』もアニメ化し、その高い人気ぶりがうかがえる。そんなアニメファンならずとも見逃せない『転スラ』の魅力を考察していきたい。
他の異世界モノとはちょっと違う!『転スラ』の設定とストーリー展開
ざっくりとストーリーをおさらいする。ごく普通のサラリーマン・三上悟(37歳)が通り魔に襲われて死亡する。死んだはずの彼が目を覚ますと異世界でスライムに転生していた。そして彼は転生して最初に出会った天災級(カタストロフ)のドラゴン、暴風竜ヴェルドラと出会い、友達となってリムルの名を授かり、この異世界で楽しく生きていくために旅に出る。ユニークスキル「大賢者」と「捕食者」、そして前世の知識も持ち合わせるリムルの力は強大で、やがてこの世界に大きな影響力を持つ存在になっていく――。
次々と新たなスキルを習得し成長する姿、大鬼族やリザードマン、オークといった魔物たちとの激しい戦い、そして戦いの末に仲間となる、まるで少年漫画的なエピソードの数々……。異世界転生モノならではの爽快感を伴った展開は“強い転生者のバトルもの”っぽいが、実は『転スラ』には“町・国造り”が組み込まれているところも大きな魅力となっている。
リムルは前世でゼネコンに勤めていたこともあり、町造り・国造りにおいてもそこで培った知識を存分に発揮していく。家の建設や街並みの整備のほか、上水道と下水道を整えてトイレを水洗にする様子や、蛇口のハンドルに魔法を施してお湯を出すといった技術も劇中で描かれているところが印象的だ。そしてその町造りをするのは、リムルを慕う多くの仲間たち。各々の得意な分野を生かしながら協力して自分たちの住む場所を造り上げていく。
このようにゼロから町を造り、そして国へと発展させていく様子はさながら都市開発シミュレーションゲームのようで、物語の本筋と同じくらい楽しみになってしまう。群れから町、都市へと、リムルの作った共同体は〈ジュラ・テンペスト連邦国〉として、魔物も人間も平和に住まう国が出来上がる。さらに、国ができた、良かったね、で終わることなく、現実世界と同様に友好・敵対に関わらず他国との関係もきちんと描かれていることを忘れてはならない。互いの国益のため貿易はもちろん、この世界では魔物は人間の敵でもあるため、その存在を認めない一部の人間との争い、つまり戦争が起きてしまう。元人間であるため分かり合おうと努力するリムルと、聞く耳を持たない人間たち。ここでは人間vs.魔物というファンタジーのテンプレート展開を、視点を逆転させて見せているのは見事としか言いようがないだろう。アニメ第2期 第1部後半には、理不尽に争いを仕掛けてくる人間たちに、リムルは容赦なくその強大な力を行使する。そのシーンは痛快ながら、ここで人間の私がこの場にいたらどちらの肩を持つだろうかと、ふと考えさせられた。
国造りに話を戻す。2021年4月から放送されているスピンオフ作品『転生したらスライムだった件 転スラ日記』では、そんな町造りのほかに、田畑を開墾して農業を始める様子や、夏祭りの様子などがコミカルに描かれているので、リムルが目指す国の形というものを深く知ることができるだろう。もちろんそんな難しいことを考えず、おなじみのキャラクターたちが本編ではあまり見せない普段の姿を面白おかしく堪能できる快作なので必見だ。
魔王となったリムルたちの進む道は? アニメ第2期 第2部を前におさらいしておこう
さて、アニメ第2期 第1部では、魔王となったリムルに、世界に七柱しかいない原初の悪魔である原初の黒(後にリムルがディアブロと命名)が仲間になり、暴風竜ヴェルドラが復活。これによりリムルの勢力はさらに強大なものとなった。今後のリムルたちの戦いはもちろん、その力をもって他国との関わり方がどう変わっていくのかも見逃せないポイントとなっていく。
異世界モノの中でも独特の展開を繰り広げる『転スラ』。上述した国や種族間の争いをどう考えるかとったメッセージが含まれているかどうかは正直定かではないが、他者との関わり方、そして力を持つ者が仲間たちとどのような選択をして生きていくか、そんな奥深さを自分なりに解釈しながら楽しめるのが『転スラ』の魅力のひとつだと考える。
この機会に、以上で述べた視点で第1期から改めて観直してみてはいかがだろう。