アイドルを卒業しようと決めた話/飯窪春菜の「かわいげがなくてごめんね!」⑥
公開日:2021/6/12
私の中にくすぶる怒りをぶっちゃけるコラム。
今回は「アイドルを卒業すること」について、お話ししようと思います。
個人として活動するようになった今、あらためて、「アイドルを卒業するってなんだったんだろう」って考えるんです。
アイドルだからできること、アイドルだからできないこと、どちらもたくさんありました。
長いアイドル人生、思い通りにいかなくて悶々とすることは、そりゃあたくさんありました。毎日あったと言っても過言ではない(笑)!
そうはいっても、やっぱり楽しい日々だったのです。
それでも心の奥では、自分の本音に嘘をつけないような出来事もあって。
例えば、成人式に行けなかった瞬間。
例えば、受けたいオーディションを受けられなかった瞬間。
例えば、ブログで文章を書けなくなった瞬間……。
何かを決断するきっかけって、人それぞれで本当にいろいろですよね。ふとした瞬間、ひょんなことから思い立ったり、じっくりしっかり考えて決めたり……。私の場合は、そんなふうに少しずつ、卒業したいなとなんとなく思う瞬間が溜まっていって、まさに“チリツモ”という感じでした。
誰に吐き出せば良いのかわからなくて。
そんな日々がきっと少しずつ、アイドルで居続ける私を蝕んでいったのだろうと思います。
アイドルの時はグループ全体の動きが最優先で、個人のお仕事のスケジュールやお休みの確保はできませんでした。特にモーニング娘。はコンサートが主な活動だったので、その練習と本番で1年間のスケジュールはだいたい決まっているのです。
そうはいっても、やっぱりメンバーみんなとファンの方とで一つになるコンサートは一番楽しかったし、いろいろな壁を一緒に乗り越えてできた絆を感じるたびに「グループ最高‼」って思っていました。
ただそれとは別に、他のアイドルグループの方が個人個人で映画やドラマに出演していたり、幅広く活動している様子を見ると羨ましく思う気持ちも正直あって。
私たちのグループも、なんかうまい具合に個々で調整できないのかなぁ、なんて思っていたのも事実でした。
そう、グループでいることの“縛り”を感じていたんです。
そんな“縛り”をなんとなく感じていた私が、はっきりと卒業を意識した一番のきっかけは、尊敬する演出家さんの舞台に参加できなかったことでした。
グループでは年に一度、舞台がありました。私はその舞台に、何年か参加していない期間があったのです。舞台に出るか、バラエティに出るか、どちらかしかできなかったからです。
私はお芝居が好きだから舞台に出たくて、でもその時期の私はメンバー内でバラエティ担当みたいな見られ方をしていました。
舞台に出たい気持ちを必死に抑え、「バラエティに出て、私が今のモーニング娘。を知ってもらうきっかけになるんだ」と自分に言い聞かせました。
だけどやっぱり、悲しかったんです。
尊敬する演出家さんと一緒にお仕事できなかったこと。他のメンバーが、その人がいかにすごい方なのか知らないまま親しくなっていたこと。その後の舞台を観に来て頂いた時に、私以外の関わったメンバーとお話しされているのを目の当たりにすること……。
こういうことが、とても悲しかったのです。
そして、私は決意しました。
卒業後、お仕事でご一緒できるように頑張ろうと。
それからよりはっきりと現実的に、卒業を考えるようになりました。
そして、卒業して、一人で活動をしている今。ここでもまた、一人だからできること、一人だからできないことを感じています。
きっと私はどうしたって、しばらく無いものねだりでジタバタし続けるんだろうなって思います(笑)。
今回は怒りというテーマからはちょっと外れますが、私の中の大事なこととして書きました。
あの時決意した気持ち、たまに揺らいじゃうこともあるから……ここでまた、自分に喝を入れさせて頂きます!
●マンガ大好きはるなんによる、今回のおすすめマンガ
『凪のお暇』
コナリミサト
なかなか決断できない方へ。気持ち良いくらいズバッと行動した凪ちゃんとその後の出会いに明るい気持ちになれます。