【次にくるマンガ大賞 2021特別企画】 過去の受賞作を振り返り!売れ残り猫とおじさまの家族愛が染みる『おじさまと猫』
更新日:2021/6/21
ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める”ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年のノミネート作品が出そろい、6月18日(金)から投票がスタートする。ぜひ参加して推しの作品を応援しよう! ドキドキの結果発表を待つ間に、過去の受賞作品を振り返ってみてはいかがだろう。本記事では2018年にWebマンガ部門で第2位を獲得した『おじさまと猫』(桜井海/スクウェア・エニックス)を紹介!
人間同士だけでなく、動物と人間も心から愛し合える家族になれる。そう感じさせてくれる本作は、優しさに満ちた猫漫画だ。
もともと、主に猫好きの方から熱い支持を得ていたTwitter発の猫漫画であったが、その優しい世界観が幅広い読者の心を掴み、人気作品となった。
1巻には、ペットショップの売れ残り猫・ふくまるとおじさまとの出会いが丁寧に描かれており、ふたりの愛情溢れる日々を楽しむことができ、2巻以降では、おじさまの猫愛がさらに加速している。猫型のスマートフォンケースを購入しようとしたり、ふくまるに似た雑貨に目がいくようになったりしてしまったおじさまの姿は、読者の笑顔を誘う。
さらに、おじさまの辛い過去が少しずつ明かされ始め、ふたりの関係にも変化が見られるようになった。これまではおじさまに守られることの多かったふくまるが、おじさまを守ろうとし始めるなど、ペットショップの狭いショーケースの中が全てだったふくまるは無条件の愛を与えてくれる人と出会えたことにより、強くなれたのだ。
対して、おじさまのほうは心から信頼できる家族を得たからこそ、弱さを表わせるようになり、心の中に封じ込めていた過去と向き合えるようになった。ふたりにとってお互いは、よきパートナーであり、家族であり、手放したくない宝物なのだ。
私たちは大切な人が悲しんでいたり、泣きながら笑っていたりすると、どんな言葉をかけていいのか悩みすぎて、結局なにもできないことがある。しかし、そんなとき本当に大切なのは、気の利いた言葉や上手い慰めではなく、ただひたすら傍に寄り添うことなのかもしれない。
本作の中でふくまるはおじさまが悲しんでいると、必ず傍に寄り添う。すると、おじさまはふくまるの温もりで心が温かくなり、元気になる。
私たちは言葉が通じ合うため、時として言葉に頼りすぎてしまうことがある。そのため、ふくまるが行っている“大切な人の守り方”は私たちに、忘れかけている何かを思い出させてくれるような気がしてならない。
幸せとは、家族とは何なのかを考えさせてくれる本作は大切な人と一緒に読みたい作品でもある。信頼関係を強めていったふたりがどんな笑顔を咲かせ続けていくのか、これからも見守っていきたい。
文=古川諭香