【次にくるマンガ大賞 2021特別企画】過去の受賞作を振り返り!これは耐えがたい…!ほのぼの拷問マンガ『姫様“拷問”の時間です』
更新日:2021/6/21
ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める”ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年のノミネート作品が出そろい、6月18日(金)から投票がスタートする。ぜひ参加して推しの作品を応援しよう! ドキドキの結果発表を待つ間に、過去の受賞作品を振り返ってみてはいかがだろう。本記事では2020年にWebマンガ部門で第2位を獲得した『姫様“拷問”の時間です』(ひらけい:漫画、春原ロビンソン:原作/集英社)を紹介!
WEB発の新作や少年ジャンプの人気作が読める漫画アプリ『少年ジャンプ+』で人気の本作、何やら恐ろしげなタイトルですが、「こんな拷問見たことない」「拷問が斜め上すぎる」と話題です。
熱々トーストで、胃袋を釣る拷問
国王軍と魔王軍が衝突をはじめ幾年月。魔王軍の手に落ちて、監禁されてしまった姫と、王国に伝わる意思を持つ剣“エクス”。牢獄に監禁される姫のもとへ、魔王軍の最高位拷問官、トーチャー・トルチュールがやってくるところから物語ははじまります。
トーチャーは最年少で最高位拷問官の地位にのぼりつめた“拷問”の天才であり、牢獄の責任者です。王国の秘密を話すか、拷問にかけられるか。2つに1つの選択を迫られる姫。絶体絶命です。
しかし、姫はただの姫ではありません。国王の長女にして、国王軍第三騎士団“騎士団長”としての顔も持ち、1対1の戦闘では第一騎士団の上位陣でも勝てないと言われるほどの実力者。可憐な見た目とは裏腹に、数々の戦場を生き抜き、多くの戦果を挙げてきたのです。
「王国の秘密を話すつもりはない。どんな拷問にも決して屈しない」と、姫は固い決意を見せます。そしてトーチャーは、恐ろしげな拷問器具に手をかけます。遂に始まる、“拷問”の時間…!
すると、トーチャーが取り出したのは、なんと熱々のトースト。姫を食べ物で釣ろうというのです。「そんなもので一体どうしようというのだ!」と笑い飛ばすエクス。ところが、予想に反し、トーストに釣られまくる姫。それも仕方のないことで、こんがり焼いたトーストを、目の前に出されたら誰だってお腹が空きます。そのうえ、トーストを裂くパリパリとした音まで聞かせるのです。たまったものじゃありません。
残酷な拷問に抗い続けた姫でしたが、最終的にビーフシチューに浸したトーストに我慢できず陥落。王国の秘密を話してしまうのでした。
卑劣な拷問に、姫が抗っては屈し、また、ときに勝ったりすることもある、新感覚拷問ファンタジーです。
繰り出される、極悪非道な拷問の数々!
トーチャーが仕掛けるのは、食べ物の拷問だけではありません。姫のメンタルをえぐるような拷問も繰り出します。
中級拷問官の陽鬼と陰鬼が行ったのは、姫の前でTVゲームを楽しむ、というもの。幼い頃より、強くなるため厳しく育てられた姫は、TVゲームはおろか友達すらいませんでした。そんな姫の前で楽しげにTVゲームに興じるなんて、鬼畜の所業。ゲスの極みです。
しかし、姫は誇り高き騎士団長。屈するわけにはいきません。楽しそうな陽鬼と陰鬼に背を向け、一人ぼっちになろうとした…そのとき、「一緒にやります?」と声をかけた陰鬼。そんなこと言われたら、遊ばないわけにはいきません。結局その日は、みんなでTVゲーム三昧したのち、姫は王国の秘密を話してしまうのでした。
魔王軍の拷問官は、本当に頭が切れます。姫のウィークポイントを容赦なく突いてくるのです。
ある日の拷問は、猛獣使いクロルが相手でした。しかし姫は過去に大型で凶暴な獣の群れに囲まれたときも、怯むことなく切り払った実績がありました。並みの猛獣にはそうそう屈しません。
そんな姫の前に現れたのは、白熊の赤ちゃん・キュイ。もふもふの見た目、ボールと遊ぶ愛くるしい姿…誰が見ても可愛いとしか言いようがないその姿に、冷静でいられるはずがありません。が、姫は耐えます。そんな姫を見てクロルはさらに追い打ちをかけようと、今度はキュイのボールを取り上げて、キュイが悲しむ姿を見せつけるのです。悪魔のやり口です。
ところが、さすがのクロルもキュイの可哀想な姿を見ていられず、自らボールを返します。可愛い動物の前には、拷問官もただの人となるのです。こうして、姫とクロルとキュイは、楽しい時間を過ごすのでした。
聖剣エクスも、魔王軍の手に墜ちる…!
さて、作中、姫を見守り、しばしば鋭いツッコミを入れる聖剣エクス。彼もまた、拷問の標的にされてしまいます。しかし、エクスは長年王家に仕え、歴代の名騎士と共に幾千もの戦場を戦い抜いてきた、名剣です。拷問なんかに負けません。
そんなエクスの前にやってきたのは魔王軍の武器職人ギルガちゃん。ギルガちゃんの手により、細かいサビを取り除かれ、回転式クローザーで表面を優しく削られ、メンテナンスされていくエクス。あまりの心地よさに思わず取り乱してしまいます。
ところが、完全に仕上げる前に、ギルガちゃんは手を止めてしまうのです。
「もし秘密を話してくれるなら、仕上げ作業してあげるけど?」
そんな交換条件を突きつけられたエクスは、結局、ギルガちゃんの手に落ち、秘密を話してしまうのでした。
個性豊かなキャラクターたちによる残酷な拷問。現状、姫様とエクスはほとんどの拷問に屈していますが、巻き返すことはできるのでしょうか?
斜め上を行くほのぼの拷問に癒されてみては。
文=中村未来(清談社)