料理はメタルだ! テイクアウトは……/メタルか?メタルじゃないか?⑭
公開日:2021/6/26
“新しいメタルの誕生”をテーマに“BABYMETAL”というプロジェクトを立ち上げ、斬新なアイディアとブレること無き鋼鉄の魂で世界へと導いてきたプロデューサー・KOBAMETAL。そんな彼が世の中のあらゆる事象を“メタル”の視点で斬りまくる! “メタルか? メタルじゃないか?”。その答えの中に、常識を覆し、閉塞感を感じる日常を変えるヒントが見つけられるかもしれない!!
サッカーはメタルだと断じ切ってみせたついでに、ワタクシがこれはメタルだなぁ〜と感じたものをもうひとつ挙げてみたい。
それは、料理だ。
郷土料理という言葉があるくらいだから、サッカーよりもその土地土地に根差しているという点はわかりやすく受け止められるだろう。フランス料理のコースに見るドラマチックな展開、ブラジルの代表的な郷土料理であるシュラスコの豪快さ、サンドウィッチやハンバーガーという合理性を追求した英米のファストフードなどなど、料理は国民性に紐づいているものだ。
それともうひとつ。
料理は非常に緻密な計算や行程を経て作られるものだ。その点が何よりも生真面目さが要求されるメタルとハモる点である。
それは調理だけでなく、例えばフランス料理のコースだと、料理を出す順番はもとより、お客さんがいつ食べ終わっていつ出すかのタイミングやその時の最適な温度、などなど、もはやシェフだけではなくソムリエやギャルソンといったオールスタッフによる総合力が試されるまさにライブなのである。
以前パティシエの方のお仕事ぶりを近くで見させていただく機会があった。
その仕事は本当に緻密で、驚かされたものだ。
ミリグラム単位の配合の違い、わずか一度の温度の誤差、秒単位のタイミングのずれ、そういったものがひとつでも狂うと目指す味に到達できない。味だけでなく、硬さや食感など、すべてが違ってくると言うのだ。また、季節や気温、湿度などの違いによって素材のクオリティーが異なるため、その日その日で配合が変わってくる。そういう微妙な差異もコントロールしなければならないのだ。そして、そのような正確無比の調理を成立させるためには、パティシエを中心としたアシスタントとのチームワークが何より大事なのである。その姿は、ワタクシにはバンドそのものに感じられ、秤やストップウォッチで調理をしている姿は、超高速のスラッシュメタルを寸分の狂いもなく演奏しているようにも見えた。
何気に店頭に並んだ色とりどりのケーキや料理は、そうした気が遠くなるほどの緻密な作業を経て我々の目に触れている。いかに、「同じ味」を再現しキープするか、その大変さが身にしみるというものだ。
メタルバンドにしても、バンドメンバー個々のコンディションがまちまちだったり、会場によって音の制約があって、なかなか統一するのは難しい。それでもオーディエンスやリスナーは、そのバンドの音を求めて会場に足を運んでくれるわけだから、バンド、PA、メカニックなど、総合力で「同じ音」をクリエイトするわけだ。それをツアーであれば、毎回やる。
最後はワタクシの愚痴になります(笑)
そう言えば、海外でテイクアウトを注文したときのこと。
何を頼んだのかは忘れてしまったが、届いたそれのパッケージを開けたとき、愕然としてしまった。デリバリーのお兄さんは、いったいどんな艱難辛苦に遭って、山を越え谷を飛びやって来たのか……遠い目で彼の遥かなる旅路を想像してしまったほど、ワタクシの手元に届けられたそれは何かわからないくらいすべてがシェイクされていた。
ドレッシングのかかったサラダからおかずから何から何までが渾然一体のぐっちゃぐちゃ状態。
これが日本のお店のテイクアウトであれば、そんなことはまずない。仮にデリバリーのお兄さんが同じ人物だったとしてもだ。
「途中でいい感じのハーフパイプがあったんで、一発エアをキメてきました!」と言われてもだ。
なぜなら、仕切りがきちんとあるから。ご飯はご飯の部屋に、おかずも種類によって細かく分かれた部屋に収まっている。これ、我々日本で暮らす身となれば当たり前なのだが、海外はまったくそんなことないのだ。
もう何もかも大部屋で雑魚寝状態。「だって腹ん中入ったら一緒じゃーん、メーン」的な。なんだろう、音楽的にはミクスチャーというか……。
なんだか最後はワタクシの愚痴みたいになってしまったが。
さて、ウーバーイーツでも頼むとするか。