コロナ禍で急増! 主婦や大学生を狙ったSNSトラブル。“普通に使っている”だけと思っていても攻撃されるケースも
公開日:2021/6/26
SNS上手になるには近視眼的にならず、客観性を!
――SNS経由のブラック社会、こわいですね。一方でプライベートな領域でのSNSトラブルはどうでしょう。いい大人がSNSで喧嘩しているのを見たりもしますが…。
高橋 SNSのコミュニケーションってそもそもすごく難しくて、読解力と文章力が必要なものです。人によって価値観が異なるので「SNSをどこまで使いたいか/頻度/リアルタイムか、返事が早くほしいか」とかそれぞれ違うのに、なぜかみんな「自分が基本」だと思ってしまいがちです。
それに対面コミュニケーションなら失言も相手の表情を見てフォローできたのに、文章だと失言して怒らせたこともわかりません。「ばかだな~」って言葉を笑顔で親しい人から言われたら愛情をこめて言われたと思いますが、LINEでそれだけ送られてくると親しい人であろうと「バカにしてる?」と思ってしまうかもしれない。ましてや一度もやりとりをしたことがない人から送られたら腹がたちますよね。
送るほうもそれが客観視できずに「自分がこのような意図で送っているのは伝わっているはずだ」と思い込んでしまう。実はSNSに関しては若い子たちはネイティブなので、小さい失敗をするたびに対面であやまろうとか、相手に頻度をあわせようとか、顔出ししすぎないとか、そのへんをしっかり学んでるんですよ。一方で大人は情報リテラシー教育を受けていないままなんとなく使っているので、どうしても齟齬によるトラブルが増えてしまうんですね。
――SNSを通じて「相互監視」というか、そういうモヤモヤも増えました。
高橋 いわゆる誹謗中傷問題に通じますが、誹謗中傷する側というのは「正義感」に基づいているのが大半です。「自分は正しい。相手が間違っている。指摘するのは相手のためにもなる正しいことだ」と考えて情け容赦なく、徹底的に叩き潰していこうとします。特にSNSの匿名性の中では攻撃性が増し、リアルであれば言えないことも全部書いてしまう。またSNSには関係の濃淡があって親しい人ばかりとつながっているわけではないですから、たとえば「外食」を気にしない人もいれば「なんでこの時期に行ったの?」と考える人もいるわけで、「自分がこうなのに、あいつだけずるい」みたいな気持ちも生まれます。何気ない日常を投稿したつもりが、火種になるケースも増えています。
――あるいは最近「ジェンダー」に関する発言が炎上するのもよく見受けます。
高橋 たしかに、少しナーバスすぎるくらいですよね。今は性的な差別やジェンダーの問題に関しては「怒ってもいい」という風潮がありますので、普段は関心のない人も乗じてくる場合もあります。ほかの問題についても同じですが、社会的にホットな話題を取り上げるときは配慮を十分にして、もし不適切な発言をしてしまった場合は理由を丁寧に説明することが必要ですね。日頃からフォロワーと良好な関係を築いていれば、ちょっとしたミスくらいならそこまで問題にはならないでしょう。
ただし、モラルに反する投稿や明らかに「何言ってるの?」と思われるような発言は気をつけたほうがいいですね。いきなり晒されてしまうことはありますから。トラブルに発展させないためには、今はそういう時代なのだと思い、投稿内容を配慮することも必要でしょう。
――それでも発信しつづけたいのは「承認欲求」なんでしょうか。
高橋 リアルコミュニケーションが減っている状況の中、やはり人とつながりたいと思うのは根源的な欲求ですし、「自分がいる」ことを承認してほしいという気持ちも否定はしません。投稿する上では、投稿する喜びと反応してもらう喜びと、非難をあびてしまうストレスを天秤にかけて判断するしかないと思います。リスクが怖い場合は、リアルの友人だけの限定公開にするなど、人間関係がはっきりした場だけで発信するのもひとつの手です。とにかくいろんな人の感情に巻き込まれないためには、今は人によって考え方が大きく異なることを自覚した上で、投稿するかどうかはよく考えるといいのかと。堅苦しいですけどね。
――あらかじめ「批判されそうな話題」を知っておくことも大事でしょうか。
高橋 ニュースに目を通すこと、特に社会面のニュースをしっかり掴んでおくのは大事です。なんとなくTVニュースをつけておいたり新聞を見ておくだけでも、報道の順番や取り上げられる頻度などで「今はこういう問題が多いのか」「これが注目のテーマか」とアンテナがはれます。実はそれがすごく大事なんですよ。SNSでは似た属性の興味関心の近い人だけをフォローしがちなので「これが世界の普通」と思ってしまいます。でも、一歩外に目をむけてみるとそんな世界は極めて局地的で、社会情勢とはまったく関係ありません。ネットだけ使っていると世界は「私の好きな世界」になってしまいますが実際の世界とは異なります。とにかく近視眼的にならずに、広く社会に目をむけておくこと。これもSNSと付き合う上ですごく重要だと思います。