嫌いな上司には嫌われる…! 嫌いな人を減らす「嫌いをなくすワーク」
更新日:2021/7/16
ストレスが増えたと感じやすい今。ストレスに100%悩まされないようになることは、とても非現実的な話です。
20万部を超えるベストセラーとなっている、精神科医の樺沢紫苑さんの著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト』(ダイヤモンド社)は、「ストレスゼロを目指すのではなく、ストレスに対する考え方・受け止め方を変えること」を教えてくれる1冊。
さまざまなストレスに対し、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」が示され、心と体を整える行動が明確にわかります。
本稿では本書から一部抜粋して、「嫌いな人と上手に付き合う方法」についてご紹介します。
嫌いな人と上手に付き合う方法
もしあなたの周りから「嫌いな人」がいなくなったとしたら、人間関係がどれだけ楽になるでしょう。
ある調査によると、「嫌いな人がいるか?」という質問に、73%が「いる」と答えました。職場、学校、趣味サークル、PTA、町内会。人がたくさん集まる場に参加したときに、そのメンバーの中に「好きな人」もいれば「嫌いな人」もいるのが普通です。全員を「好き」ということもありえないし、また全員を「嫌い」ということもないでしょう。
ファクト1 なぜ人は「好き嫌い」があるのか
人と初めて会ったとき、「この人、好き」「この人、嫌い」「この人、ちょっと苦手」と、まず相手の好き嫌いを瞬時に感じてしまうことはありませんか。
なぜ、私たちは、「好き嫌い」を判断してしまうのでしょうか。それは「好き嫌い」を、無意識に判断してしまう、脳の仕組みがあるからです。
脳には扁桃体と呼ばれる部分があります。これは、危険を察知して赤信号を出す部分です。何か出来事が起こったときに、マルかバツか、安全なのか危険なのか、ということを瞬時に判断します。危険な場合は脳の中で赤信号を出します。
たとえば、動物が自分の敵と遭遇した場合、瞬時に対応を取れるように信号を出します。脳と体全体に警戒信号を送り、身を守る準備をさせる司令塔が扁桃体です。
扁桃体はさまざまなものについて、瞬時に安全か危険かを判断しています。たとえば、林を歩いて、足下にヘビがいるのに気づきました。「わっ!ヘビだ」と叫ぶ前に、体がヘビを踏まないように避けているはずです。これは、扁桃体が「ヘビ=危険」という警報を出したために、一瞬で体が動いたのです。
扁桃体は、0.02秒という一瞬の速さで「安全or危険」を判断すると言われています。「じっくり考える」のではなく、瞬間的に、ほとんど条件反射的に「安全or危険」「好きor嫌い」を判定しているのです。
ですから、人と会ったときに、自分に対して好ましい人なのか、あるいは嫌な人なのか、これまた瞬間的に扁桃体が判断します。
ようするに、「好き嫌い」のレッテルを脳が勝手に貼るわけです。
その人の過去の経験から苦手な人の見た目や表情など、さまざまな特徴をとらえて、「嫌い」を判断します。
いったん、「嫌い」と判断してしまうと、今度は嫌いという偏見で相手を見てしまうので、余計にその相手の悪いところを探してしまって、さらに嫌いになってしまいます。嫌いな点がたくさん見えてきて、「本当に嫌い」になってしまうのです。
ファクト2 あなたの「嫌い」は見抜かれている
人間のコミュニケーションには、「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」があります。言語と非言語とで、相異なるメッセージが発せられたとき、相手は非言語的メッセージを優先して受け取る傾向があることが、心理学の実験からわかっています。
つまり、あなたの嫌いな上司に「いつも、ご指導ありがとうございます」とヨイショしたところで、あなたの雰囲気や態度から、あなたの「嫌い」はまんまと見抜かれている、ということです。
人間は、好意に対して好意を返します。「自己開示の返報性」についてはP57で説明しました。しかし、その逆も真なり。人間は、悪意に対して悪意を返す傾向があります。
「嫌い」という感情に対しては「嫌い」という感情を返します。つまり、あなたが上司を「嫌い」と思えば思うほど、上司は非言語的なサインを無意識に察知し、あなたに対する態度をより冷たい、あるいは厳しいものにしていくのです。
あなたが上司を嫌うほど、上司はあなたに厳しくなり、あなたへの風当たりも厳しくなってきます。それでは、仕事は楽しくないし、モチベーションも上がりません。あなたは、さらに上司が嫌いになり、上司もあなたを嫌いになり、人間関係は悪化して深刻な状態へと進行します。
「嫌い」の連鎖で、最悪の人間関係ができあがる。それが、うまくいかない人間関係の正体なのです。