精神科医が「人から嫌われないようにする努力」は99%無駄だと言う理由
公開日:2021/7/17
ストレスが増えたと感じやすい今。ストレスに100%悩まされないようになることは、とても非現実的な話です。
20万部を超えるベストセラーとなっている、精神科医の樺沢紫苑さんの著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト』(ダイヤモンド社)は、「ストレスゼロを目指すのではなく、ストレスに対する考え方・受け止め方を変えること」を教えてくれる1冊。
さまざまなストレスに対し、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」が示され、心と体を整える行動が明確にわかります。
本稿では本書から一部抜粋して、「『人から嫌われたくない』の対処法」についてご紹介します。
「人から嫌われたくない」の対処法
前項では、「嫌いをなくすワーク」を紹介しましたが、逆に、人から嫌われたくない人も多くいることでしょう。
「誰からも嫌われたくないか」と質問したある調査によると、42%が「はい」と答えました。特に20代女子では嫌われたくない傾向が強く、54.6%にも及んでいます。その対処法について説明していきましょう。
ファクト1 好意の1対2対7の法則
次の一節を、初めて読んだとき、私はドキッとしました。
10人の人がいるとしたら、そのうちの1人はどんなことがあってもあなたを批判する。あなたを嫌ってくるし、こちらもその人のことを好きになれない。そして10人のうちの2人は、互いに全てを受け入れ合える親友になれる。残りの7人は、どちらでもない人々だ。
―(ユダヤ教の教え、『嫌われる勇気』より)
私の経験でも、SNSのネガティブなコメント1に対して、好意的なコメントは2倍以上あり、そして7割ほどはコメントせずにただ読むだけの「サイレントマジョリティ」であると感じていました。
「嫌い1、好意2、中立7」。これを「好意の1対2対7の法則」と呼びましょう。この「サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)」は、積極的な意見は出しませんが、自分をフォローしている人たちです。だから、明らかに好意です。「中立」は、「プチ好意派」と考えてよいのです。
すると、あなたを嫌い、批判する人が1人いる場合、あなたを応援している人は9倍もいるわけです。
「好意の1対2対7の法則」は、あなたの周囲にも当てはまると思います。
職場に20人いるとしたら、あなたを嫌う人は2人くらいで、親しい人が4人という数字になるのではないでしょうか。
いろいろな性格や考え方の人がいます。あなたと気の合う人もいれば、気の合わない人もいる。それは、当然です。「全員と気が合う」ということもなければ「全員と気が合わない」ということもありません。
そんな状況の中で、「誰からも嫌われない」とか「全員と仲良くする」というのは不可能です。
あなたを嫌う人の2倍、好意的な人がいるし、まったく嫌っていない人がその7倍もいるのです。
たった1人からの誹謗中傷を受けて、SNSの投稿をやめてしまう人がいます。しかし、その9倍の人たちが、あなたの投稿を楽しみに待っているとすると、とても残念なことです。
あなたは「嫌いな1割」の人に迎合することを優先し、その他の人を犠牲にするのですか。それとも、あなたのことを大好きな2割の人を大切にして生きますか。どちらが幸せに生きられるかは歴然としています。
「1対2対7の法則」をイメージするだけで、「自分には味方がいる!」ということが明確になり、勇気が湧いてくるのです。
ファクト2 相手の感情は、相手の問題
「人から嫌われないようにしよう」という努力は、99%無駄です。
なぜならば、他人は簡単に変えられないからです。Aさんが、あなたを「好き」と思うか「嫌い」と思うのかは、Aさんの感情であり、Aさんの意思が決めることです。あなたのコントロールできる範囲外にあります。
他人と過去は変えられない。
―エリック・バーン(アメリカの心理学者)
それにもかかわらず、実際問題として、「自分が変わる」ことを通して、相手の「好き」や「嫌い」を多少変化させることもできなくはありません。実際、本章の後半ではその方法を紹介しますが、それには「時間」と「労力」が必要です。一朝一夕ではできないと思ったほうがいいでしょう。
ですから、他人の感情は、自分ではコントロールできない、相手が自分を「嫌っている」かどうかを心配しても意味がないということを、しっかりと理解しましょう。
それではどうしたらいいのかというと、「自己変化」「自己成長」です。自分の行動や言葉を変えることで、あなたの印象や感情は変わります。
人間を変えることはできませんが、人間関係は変えられます。
その第一歩が、「自分が変わる」ということです。「人から嫌われたくない」と言う暇があるならば、「自分が変わる」ことを考え、そのための努力に1分でも1秒でも多くの時間を割くべきです。